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東方氷精異聞  作者: ゆっくりキラセス
壱章 紅霧異聞 紅き忠誠編
9/19

異端の氷精 1

 最初に感じたのは、空気の味だった。


 科学の進歩は生活を快適にする反面、自然等を減らしていくため昨今の空気はかなり澱んでいたりする。対策案として森林中心のメガフロートも建造されているが、それでも『ここ』の空気ほど上手くなるのにはどのぐらいの年月がかかるか、あるいはその前に……。



 そう、ここは明らかに『次元』が違う。ただ、俺はすでに心当たりが一つだけあった。


 ここは異世界でも、別次元でもない。ここは間違いなく『地球上に』存在する場所だ。ただ、それを『認知』できるか出来ないかの話だ。



 ここは『幻想郷』。失われ『幻想になったもの』が集まる場所。


 そして本来認知できないのは、幻想郷を守る者によってかけられた『博麗大結界』によるものなのだが……。



 まさにその大結界を抜けて、俺は今幻想郷の森に立っていた。



 だが俺はその結論が出ていた上で、それでも認められなかったのだ。だから俺は分かっていても口にする。


「……あいつらどこ行ったんだ? まああいつらだって馬鹿じゃない、村がある方にいっただろうし、俺も探してみるか。」


 静寂の森で俺は一人そう呟き歩き出す。


「何より遭難なら警察に頼る方がいい。餅は餅屋、ってな。」


 ……もし幻想郷なら、そんな組織ないのに。


 全くもって現実を受け止められない自分に、男らしくない思考に、口にするたびにふつふつと怒りをわかす。


 元を正せば俺が突っ込んだのが原因だ。あの時、幻であっても現実であっても近づくべきじゃ無かった。無かったはずなんだ。だけど……『昔の光景』が自ずと背中を押していた。


 だがやはり早計だろう。まだ決定的な証拠がない今、ここがどちらかなんて––––



「ブオオオオオオ!!」



 ……前言撤回。俺は背後からのその雄叫びに駆け出した。


 それは聞いただけでわかる。明らかに『この世のもの』ではない雄叫びだった。言うなればそれはもう『化け物』だ。


 チラッと背後を見ると、それは異形の二足歩行の『妖怪』だった。なんの妖怪か判断はつかなかったが、かなり高い奴だってことは理解できた。


「…馬鹿野郎ッ! 何現実逃避してんだよ俺!!」


 武器になるものはない。ワンチャンで投擲物としてスマホがある程度だったが、そもそも物理法則が通じるかわからない。


「…ッ! クソッタレ!!」


 そして最悪なことに、進行方向は森を抜け、『湖』だった。


 もう逃げ場はなかった。


 運がいいのは、それほど早くはなかった妖怪と距離がある程度あったことだが、それもほぼ誤差程度だ。


 さて、どうする? 馬鹿野郎な俺は死ぬべきか?


 そんな中、脳裏で二人の部活メンバーの顔がよぎる。


「……俺は恥だらけの人生だがよ、」


 俺は拳を構え、覚悟を決める。


「…ダチの安否がわからないうちは死なねーし、ゼッテー死なせねーんだよ!!」




「相変わらず、人の身で無茶するんだねネツ。」




 パチン、と指のなる音と共に、異形の妖怪は足元からじわじわと『氷ついて』いった。


「ウ、アア……マ、マサ、カ……オマエ、ハ」


 どうやら意思疎通ができた妖怪は、俺の前に立った『氷の羽を生やした空色髪の少女』を見て怯え、涙を溜めていた。


「オ、マエ…『レイカ、ノ、アクマ』!!」


「『あたい』の大切な友達なんだ。消えて。」


 次の瞬間、その妖怪は氷塊となり、彼女が手を握ると砕け、崩れた。

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