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東方氷精異聞  作者: ゆっくりキラセス
序章
8/19

『闇と漆黒』

「……遅かったか。」


 あたりには先ほどまで戦闘があったのだろう、溶け始めた氷の破片が所々に刺さっている。


 冬がまだ来ない今、このような能力を発揮できる存在は一人しか思い当たらない。


 分かっていたこととはいえ、こうして未然に防ぐことができない『運命』に俺は舌打ちをする。


 そんな折、背後からの気配に気付き振り返る。



 その瞬間、その『ちっこい闇』が俺の横をすり抜け、同時に右腕に激痛が襲う。


「……流石に声をかけてくれてもいいんじゃないか、『ルーミア』?」


 俺は再び正面を向くと、そこには金髪赤眼の、黒を基調とした服の幼女が俺の右腕を食べ終えたところだった。


「いいじゃないかー? 最近食べてなくてお腹すいてたのだー。……でもあんまり美味しくないのだー。」


「失礼な。食べ物にはちゃんと感謝して食べないとバチが当たるぞ?」


「『妖怪』にバチが当たる? …ハハハ! おかしなこと言うのだー、『如月』!」


 相変わらず可愛げのない人喰い妖怪『ルーミア』は笑い平らげた。


「……なあ如月、『氷精』はどこだ?」


「…今来たばかりだ。」


「なんだよ、どうせ知ってるよな? ……まあ、いいけどなー。」


 と、ルーミアは何かを感じて俺とは反対の方向を向くと、ニヤリと笑い出した。


「…この札の制約じゃ、『人里の人間』以外は対象じゃないもんな?」


 その言葉の意味を理解し、俺は苦笑して意気揚々な妖怪に告げた。


「…お前には無理だよ、少なくとも今『幻想入り』した人間は、な。」


「ほら知ってる。まーいいのだ。」


 そしてルーミアの周りを『闇』が覆う。


「自分で見て決めるのだ。邪魔するなよ如月。」


 そして闇が晴れた時、ルーミアは忽然と姿を消した。


「……お前じゃ無理だろうよ。」


 そんな彼女に俺は、小さくそう呟くのだった。

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