【幻想入り】
「……霧?」
蓮子とメリーの背後にあった森に俺は凝視する。
その森は確かに霧がかかっていて、そして秋の涼しさではなく、まさに冬のような『冷気』を、離れた位置にいたはずの俺にも感じれるほど漏れていた。
「…なんか、ありそうね!」
蓮子が目を輝かせていたが、その時の俺にはその言葉は耳に届かなかった。
俺の目には、『いるはずのない少女』の影が見えたからだ。
「……なんで、いるんだよ」
「え?」
「あ、ネツさん!!」
二人の声など聞こえず、俺は森の奥、遥か遠くで特徴的な『氷の羽』を生やした少女のもとに走る。
すると、その少女は俺に気づいたのか、どこかへ走り去っていく。
「ちょっと、待ってってば!」
不意に肩を掴まれ俺は止まり振り返ると、息を切らした二人がいた。
「ねえ今のあなた、すごくらしくないわよ!」
「ネツさん、今日はもう引き返しましょう。目的はもう果たしているんですから。」
「……なんだよお前ら」
そんな二人に、俺は自分でも驚くほどの怒気をはらんだ言葉を向ける。
「…お前らがどう思おうが、俺を止める資格あるのかよ?」
「ある! あなたは私のクラブの部員だから」
「それはお前らが勝手に決めたんだろが! ……いいから離せ。」
俺は思いっきり腕を振ってほどき、その霧の奥に走る。
らしくないな、本当に。本当はあの部活が、あの二人が嫌いではなかったはずなのに。
「……どこだ! いるんだよな!!」
霧が濃くなる森で俺は叫んだ。
どうしても、いるんじゃないかって気持ちが拭えず、俺はただただ走り続けて、そして––––
『あの少女』の背を、俺は見つけることができた。
俺はただひたすら走り、そしてその肩に触れようとして、
俺の手が凍っていく感覚とともに、その少女は振り返る。
「来ないで––––」
涙流す少女と俺の間に、大きな【捻れた空間】が飲み込んだ。
少女の背後で黒フードは、ニヤついていた。
「ネツさん!」「ネツ!!」
秘封倶楽部は、【幻想入り】した。




