『ねじれ』
嫌な胸騒ぎに『あたい』は、普段は来ない森の中を飛翔していた。
「…気のせい、だよな?」
『博麗の巫女』じゃあるまいし、あたいの勘にどれほどの価値があるかなんて分からない。わからないけど、それでもいてもたってもいられなく、あたいは真夜中の森を飛び回り続ける。
「……ねえ、あれって」
「ま、まずいよ! 『レイカ』だよ!」
時々『妖精』と目が合うけど、みんながすぐに目を逸らして、あるいは恐怖を持ってあたいを見る。
慣れている。慣れているけど……辛い。
「もう、消えちゃえばいいのにね?」
そんな言葉に慣れて、もう涙は出ない。
あたいはそのまま飛び回り、そして、
「ギャイイイイイ!」
唐突に、異形の妖怪が妖精を襲おうとしていたのを目撃した。
「だ、誰か助け––––」
そんな助けを求める声を、他の妖精は聞こえないとばかりに逃げ回る。
「……ふざけるな」
そう呟き、あたいはその妖怪の前に立って、手を翳し、
「『アイスショット』」
瞬時に鋭い氷を生成し、それを妖怪の頭に向けて放つ。
そいつは頭を吹き飛ばし、そのまま崩れるように倒れた。
あたいは背後に向いて、妖精に手を差し出したけど、その手を弾かれ、
「さ、触らないで化け物! ……悪魔!!」
そしてただの妖精はそそくさと飛んでいってしまった。
「……あたいが、何したんだよ」
差し出した手を強く握り、再び飛翔する。
あたいは誰からも望まれていない。
妖精も人間も、あたいを恐れる。
妖怪も、あたいを恐れる。
ついたあだ名は『零下の悪魔』。
段々と心が壊れそうになる。もう、限界だよ……。
「…ねえネツ、もう無理だよ……助けてよ……。」
弱音が溢れてしまった。本当は呼んだらいけない彼の名前を。
彼はもう、来てはいけない人間なのに、あたいはダメと分かっていても願ってしまう。
彼なら笑って隣にいてくれると、もっといい方法を考えてみんなと一緒にいられる未来を作ってくれると。
『だったら叶えてやろうか?』
……深呼吸をして、あたいは『黒色のローブ』のそいつを見た。
「…幻想郷の住人じゃないね。それに、いい奴じゃない。」
氷の弾を数十展開する。
胸騒ぎの元凶はこいつだ。そして、こいつは強い。
「手をあげて降参しろ。霊夢のところについて来てもらうから。」
しかしそいつは何も喋らず、おもむろにスケッチブックを取り出して何か書き、それを見せる。
「……『力が欲しいか?』、いらないよ。」
明らかな危険人物に、先制の一弾をそいつの頬を掠めるように放つ。
「警告だよ。後一回だけ返事を待つけど、それ以上は『凍りつけ』てからだから。」
すると、そいつはニヤッと笑いスケッチブックを投げた。
予期してなかった行動に、あたいはそのスケッチブックに視線が向いてしまい、そいつから目を離した時には、手遅れだった。
「な!?」
そいつとあたいの間には、青白くねじれたような空間が出現した。
それはあたいを吸い込もうとし、なんとか踏ん張ろうとしたものの、耐えられるものじゃなかった。
それに飲み込まれる直前、落ちてくるスケッチブックに勝手に書き込まれた言葉に、あたいは咆哮した。
『お前は【エサ】だ。』と。
「う、ああああああああああああ!!」
目が覚めると、雪が積もった森に倒れていた。
ここがどこかわからないまま、朦朧としながら歩いていると、声が聞こえた気がして振り返った––––。




