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東方氷精異聞  作者: ゆっくりキラセス
壱章 紅霧異聞 紅き忠誠編
18/19

トラウマ 1

「本当にあったのだー。」

「すごいですね、こんな場所を見つけるなんて。」

 しばらく歩くと崖があり、うまく隠された洞窟を見つけることができた。その洞窟は自然にではなく、明らかに人工的なもので、おそらく脱出口だったと思われる。

「ま、ああ言う館ならあり得そうだろ。屋敷の使用人や子供、あるいは自分自身を守るために用意したんだろう。」

 親切なことに舗装された一本道。凸凹してたりぬかるみを歩くより体力は使わなくて済むから、少し離れたとはいえ地上よりはかなり歩きやすい。

 まあ俺以外飛んでるから関係なさそうだが……。だが奇襲ものって、相手の手段を逆手に取って有利に運ぶ常套手段だしいいだろ。な?

「…とはいえ、流石に罠か警備の何かはあるだろうし油断はするなよ。」

「はー、誰に言ってるのだー? 名無し以外はないのだ。」

「ルーちゃんには言われたくないなー。」

 なんだろうかこの二人、笑顔なんだがバチバチしてるぞ。

 そこでチルノはコソッと俺に耳打ちする。

「…実は二人、前に敵対してたんだよ。多分今も引きずってるのかも。」

「おいおい、このパーティー大丈夫か?」

「実力は本物だから大丈夫だとは思うけど、同士討ちだけは避けたいな。」

「いやあってはならない懸念点なんだが……。」

 ……本当に大丈夫なのか?……よし、ダメだった場合チルノに責任持ってもらおう。

「ほらお前ら、いい加減進むぞ?」

「ま、待ってくださいネツさん!」

 そこで大妖精が俺を止めた。

「自分でも言ってたじゃないですか、罠がある可能性を。私たちはなんとかできますが、ネツさんはリスクがあります。それでも本当にこの道を、いえあの館を目指すんですか?」

「確かに、お前はここにいた方がいいんじゃないのかー? 霧も薄いし名無しと留守して私とチルノだけでいくのがいいのだー。」

 二人はようやく意見が一致したのだが、俺は首を振る。俺には進む理由があったからだ。

「……確かに危険は重々承知、だがな、」

 俺は出入り口を指差す。

「あの霧が発生して数十分は経ったじゃん?」

「はい。」「なのだー。」

「流石にもう博麗の巫女動いてるじゃん?」

「ですね。」「あるのだー。」


「霊夢に殴られるじゃん。」


「「……………………………はあ?」」


 素っ頓狂な声をあげる二人に、納得とばかりにチルノは憂鬱そうな声をあげる。

「…確かにネツ、霊夢に『二度と来るな』って言われてたね。」

「そうなんだよなー、あいつ女とお前ねー腕力してっからなー、ガキの頃から。こえーんだよなー。」

「……そういやあたいも故意ではないが『外の世界』に行っちゃったんだよなー。あたいもぶん殴られるかも。」

「いくら怪力バカでも女の子にグーパンはねーよ。それより俺は半殺しですんでくれるかどうかだなー。」

「「…………。」」

 せめて会うまでに何かしら手柄を立てて免除してもらえるように交渉するのが得策なんだが、果たして………。


 俺とチルノは深く深く息を吸い、


「「死にたくねー……」」


 憂鬱さを加速させる。普通加速しないだろうが、俺たちが言えるのはそれだけだった。

「てっきり人里の心配かと思いましたが、霊夢さん二人に何したんでしょう……」

「…知らないし、碌でもないことなのだー。」


 まだ戦闘も始まっていないのに気が滅入ってくる今この頃、俺とチルノはガックリと肩を落としつつ、その洞窟をしばらくトボトボと進むのだった。

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