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東方氷精異聞  作者: ゆっくりキラセス
壱章 紅霧異聞 紅き忠誠編
16/19

ーその瞳、深い闇にて 1

「…あやや、珍しくやる気ですね霊夢さん。」

 岩山のてっぺんに立つ私の背後に、霊夢と魔理沙が、それぞれ人間を一人ずつ連れて降り立った。

「こりゃスクープの予感ですね!」

「御託はいいわ。それより異変元、分かってるなら教えてもらえない?」

「さすが霊夢さん。もちろん椛がすでに捉えてましたよ。あちらです。」

 と私はポツンと建つ洋館を指さす。

「あれです、実は少し前からあったんですが、その表情から察するに『文々。新聞』を読んでませんね……」

「ああ、私は鍋敷きで使ってたぜ?」

「私はそうね、かまどの燃料かしら。」

「ひどいですよ! 私の新聞をなんだと思ってるんですか!」

「勝手に持ってくる無料資源。」

「もういいです……。」

 ここまで読んでいないとは流石に泣きそうになるんですが。

「……んで、そいつどうしたんだ?」

 と気が落ちそうになる私の心配はなく、魔理沙は椛を指さした。

「…ああ、それについてはどうも要領を得ないんですよ。」

 私は頭をかきつつ椛に視線を向ける。

 彼女は現在、荒い呼吸を落ち着かせようとするのに精一杯で全く会話に入れずにいた。

「…この霧が立ち込めた時、洋館を見たまでは良かったんですが、その後結界を越えた何者かの侵入を察知して椛は動向を探ってたんです。すると、」

「……文さん、ここからは私が話します。」

 と、ようやく呼吸が整った椛が、しかし顔色は青ざめたまま語る。

「…『千里先まで見通す程度の能力』、なんですが……チルノ、緑髪の妖精、そしてルーミアが集まっているとこを見つけたんです。」

「……ルーミアは面倒ね。」

 霊夢は少し考えるけど、椛は首を横に振る。

「…いえ、ルーミアでも、チルノでもありません。その中にもう一人、人間が混ざっていたんですが、」

 少し言い淀んだ椛は、ポツリポツリと話を続けた。

「……その人間を見た時、彼も私を見てました。気のせいでもなんでもありません、彼は確かに私を見てたんです。2里(約八キロメートル)離れた森からしっかりと。何よりその目は見ているうちに私を呑み込もうとしてくる。まるで、あれは『蛇』のようだった。目を離したらやられる、そう思った……」

「…椛を本当に捉えたのだとしたらその人間はかなり危険かもしれないです。場合によっては妖怪の山から、いえ、私自ら対処をすることも視野に入れています。」

「ほー、ブン屋が動くならかなり危険そうだな……って霊夢、どうしたそんな鳩が豆鉄砲を食ったような顔して。」

 魔理沙の言葉に霊夢の顔を見ると、ポカンとした彼女はやがて椛に質問した。

「……その人間ってさ、もしかして胸元に青と黒のこれみたいな絵がなかった?」

 と、博麗の巫女だけが代々継がれた『陰陽玉』を出して椛に見せると、彼女はぎこちなく頷く。

「それと、『K』って文字が帽子?になかった?」

 それにも頷いた椛に、それまで静かだった彼女達の後方の人間二人はパアッと明るい表情となって互いを見て、

「「ネツだ!!」」

 とハモらせた。

「…あのバカ、相変わらず変なのに好かれるんだから。」

「あ、ちょっと霊夢さん!?」

 彼女達が向かおうとしたのを制し、

「その人間って知り合いなんですよね! 危険じゃないんでしょうか?」

 その問いに、彼女はフッ、と鼻で笑い、

「ただのお人好しよ!」

 そう言って黒帽子の少女を背負って飛び立った。

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