春休み塾さぼり日記
塾までは電車で15分、ちょっと前に高校受験したってのにもう大学受験のことでがみがみ言われている。毎日毎日塾に通わされこれじゃ何のために部活に入らなかったのかわからない。いい大学に入らないと将来苦労するとみんないうが、有名な大学に入って大きな会社に入ってもこき使われて、自殺している人もいるじゃないか。そういう人は小さいころから苦労して苦労したまま死んでいくんだからそれなら若いうちくらい棒に振ったっていいじゃないかと思う。
そんなことをぼーっと考えていると1つ手前の駅で降りてしまった。
「うーわ、やっちまった。この駅と次の駅似てんだよなー」
人がいなかったので盛大に独り言を言った。時刻表を確認すると次の電車は10分後だ。僕は逃げるように駅を飛び出した。
駅の外はビルだらけ人だらけの次の駅からは想像できないほど自然豊かな場所だった。木々の中から耳慣れない鳥の声が聞こえ、下のほうになぜか海が見えた。ここは山の中なのだろうか。なんとなく坂を下りていくと小さな紫色のテントがあった。歩きながら見ていると、中から赤いジャージをきた同い年くらいの女子が出てきた。彼女は立ちつくし僕を怪訝そうに見た。僕はなんとなくきまずかったので目をそらし立ち去ろうとすると彼女が声をかけてきた。
「こんにちは、こんなところで人に会うなんてめずらしいわ」
「駅から徒歩5分だけどね」ぼくがそういうと彼女はいたずらっぽく笑い、手を引っ張ってテントの中に引っ張り込んだ。
「今から楽しくなるよ」彼女は僕の耳のそばでそう小さくつぶやいた