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とりあえずちょっとかけてみるか…今の気まずいままよりも仲良くなっておいた方がやりやすいしな。本当は酒とか飲んでいる方がかけやすいんだが…


「フラン、何か困っていることはないか?」

風に言葉をのせて耳まで届ける。脳まで心地よく響く声に聞こえているはずだ。こうすれば誰しもが自分の思いを口にする。

「いえ、特にございません」

「そうか、悩みなどあれば言ってくれ」

「?今は十分な暮らしをさせていただいております。」

おかしい。普通のやつならば唐突に悩みを聞いてもおかしいと思うことなくすんなり答えるのに…本当にないのか?いや、そんなことはないだろう。精神が強いのかもしれない。段階的にする必要があるな。


それから時間をかけて何回も試みたが、弱みを握るどころか怪しがられる始末。おかしいな、これだけ何度もすればもっと心を開いてなんでも話すようになるのに…


「やっぱりフィリップ様何かありました?」

「い、いや別に」

「あの、私に不満がありましたらなんでもおっしゃって下さい。」

「そんなことはない!」

何やら変な誤解を受けているようなので思わず否定すると分かりました、と言いながらくすくす笑うので恥ずかしくなって顔を逸らした。

「じゃあ、またお話してくれますか?」

「ではお茶の準備をお願いしても?」

「もちろんです!」


その日から毎日お茶を楽しむ間、フランと色々な話をするようになった。フランが今までいた屋敷の話とか、イレドの街のこととか…フランには魔法を使わなくてもーー実際のところ使えないのだがーー毎日心地よく過ごせて幸せだった。怜のところへ行こうとする気持ちを忘れるほどに…

怜のことは愛しいと思っている…はずだが、今はこのままでもいいと思った。


そんなある日、いつもフランが誘ってくれるから、今日は自分から誘いに行こう、そう思ってフランの部屋を訪ねた。

コンコン

「フラン?今大丈夫か?」

おかしいな、今の時間、フランは部屋にいるはずなのに。ドアノブに手をかけるとガチャっと開いた。前に知ったが、フランは部屋にいない時は部屋に鍵をかけている。鍵が開いているということは部屋にいること、だと思うのだが…部屋を見回しても誰もいない。


部屋はベッドに机、本棚と簡素なつくりになっていて、とてもシンプルな部屋だった。フランは何処に行ったのだろう…部屋を出ようとした時、本棚に違和感を感じた。そういえばここは結構古い造りだから秘密の通路とかあってもおかしくないよな。なんて、本の読みすぎか…そんなことを思いながらある本を引き抜くとガガガと音がして本棚と壁の間に隙間が出来た。

「うそだろ?」

本当にあるのか?本棚を動かしてみると下に向かって階段がのびていた。


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