表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

91/161

26話 理由




 ()()()()()()()

 これほど的確に“この男”を表した表現は恐らく他に無いだろう。



「おやおや……まさかアナタ方が決勝戦へ進出するなんて。一体誰が予想出来たでしょうか?」



 最強ギルド決定戦、予選終了後。

 離島バトルモーティアから用意された帰還用の魔方陣を通じ、グランディア―ナ城へと戻ってきた彼ら【煌々たる銀翼】を出迎えたのは――



「……あ、貴方は――」

「……ちっ。わざわざ嫌味を言いに来たのか」

「……悪いけど文句言われる筋合いはないけど」



「いえいえ。嫌味や文句だなんてとんでもない。ただ私は“正論”を言いに来たですよ? 貴方達の行動を鑑みての正当な評価をね?」



 ギルド協会監査官。ドルリアム・ロンク。

 今回の決定戦開催に際して呼ばれた来賓。


 後ろに結んだ白髪に、軍服を模した黒い服装という対照的な外見の男性。整った顔立ちも相まり一見すると女性にモテそうなクールな男性に見えなくもなかった……………………のだが?



「まったく、自粛という言葉をご存知ですか? 正直困るんですよね……アナタ方のようなルールもろくに守れないカスどもが脚光を浴びるのは。同じギルドの方々からクレームが入るじゃありませんか。あんな連中が真面目に活動している自分達より日の目を見るのはおかしいってね」



 性格が最悪。

 自分より劣る者をいたぶるのが大好き。


 普段は笑みを絶やさない温厚な人物として振舞ってはいるが、いざ見下せる相手を前にするとその笑みがただの嘲笑だったことを誰もが悟る。



「ウヒッヒッヒッヒ……他にもコロシアムはかなり温度が高かったですよ。まあそもそも賭け事如きで目くじら立てるのもどうかと思いますが、とにかくアナタ方が勝ちあがってしまったのはギルド協会(私達)としても面白くない」



 また笑い声一つ取っても不気味。

 当人(シリウス)達とは目も合わせず壁にもたれかかったまま、ドルリアムはニタニタと嫌らしく薄気味悪い表情を浮かべさらに言葉を続ける。



「要するに、とっとと失せろってお話です。それともまさかとは思いますが……優勝する気ではありませんよね? 世間的に見て犯罪者ギルドであるアナタ方にそんな権利があるとでも?」



「「……ぐっ」」


「……強制解散の日はまだ先です。ですから誰がなんと言おうとギルドが存在する以上は――」



「うん? 誰が口を開けって言いました? 今()()()()()()()()()よね? それとも尋ねているように聞こえましたか? 残念。アナタ方に発言権は一切ありません。アナタ方が口を開いて良いのは私が許可した時だけ。犯罪者が監査官である私に物言いなんて決して許されないんですよ?」



 話し方は例えるなら蛇。

 声を荒げてひたすら罵詈雑言を浴びせるような攻撃的な接し方ではなく、あくまでもじわりじわりと這うように相手の感情を逆撫でする。



「そもそも私は忙しいんです。ですのでこうやってわざわざ忠告しに来てあげているだけ感謝してほしいものです。そう思いませんか? といっても返事は聞きませんが……ウヒッヒッヒッヒ」



(まさかこの人が来賓だったとは――)


(よく言うぜ……どうせストレス解消の為だろうが。あの時(逮捕時)もそうだったじゃねぇか)


(忙しい? 寝言も大概にしてほしいわ。弱者をいじめるのが生き甲斐みたいな性格している分際で……外見と性格って一致しないものなのね)



「そうそう。そうやって黙って聞いていれば良いんです。権力者に逆らえる弱者なんていないんですから。いたらそれはバカ。極めつきの愚か者なんですよ。まあアナタ方も充分近いですけど」



 いちいち癪に触る余計な罵倒を付加。

 急所をじわじわと突くような発言。

 どう言えば相手を苛立たせられるか。

 どうすれば相手に不快感を与えられるか。



「話を戻しましょう。とにかく優勝はダメです。ダメ。絶対ダメ。ダメダメダメダメダメ。アナタ達みたいなカス連中が最強を名乗るなんて、監査官の私が許しません! ギルド協会の面目丸潰れです! 他ギルドの気持ちを考えてくださいよ」



 ついには身振り手振りも追加。

 素なのか。わざとやっているのか。


 腕を何度も罰点状にしたり、首をブルブルと横にふったりと、とりあえず何かにつけておちょくってやりたい。ただ忠告だけではつまらない。それなら目いっぱい馬鹿にして煽りまくりたい。



「それに……優勝賞品の【願いの力】に対する願い事だって大したこと無いんでしょ? どうせ金とか名誉の為とか。クズ共が抱く願いなんて大体そんなワンパターンなものなんですよね」



(……………………)

(こんの野郎……好き放題に言わせておけば)

(協会の関係者じゃなきゃ今頃とっくに――)



 巡回の兵士などが時折近くを通りかかるも、ドルリアムはお構いなしにそう挑発を続行。手出し出来ないのを良い事に吐き散らかしていくと、



「んんん? 何やら不服そうな面ですね? 特にそこの獣臭い……えっと確かランドルさんでしたっけ? 表情隠すのが下手くそでちゅね? 敵意剥き出しなのが丸分かりでちゅよ? いいんでちゅか? この(監査官)にそんな顔して?」



(ぐぎぃ! 誰のせいだと思ってんだ!?)


(ランドル……ぶん殴りたい気持ちはすんごい分かるけど抑えて。じゃないとこれまでのシリウスの覚悟が台無しになってしまうわ)



「そうだ! ならこうしましょう! 特別に聞いてあげます。本来ならアナタ方みたいなカス共の言葉なんて聞く気にもなれませんが、今回は発言権をくれてやります。だから教えてください。その内に秘める大層で下らない願い事とやらを」




 誰も望まぬタイミングでの発言の認可。

 一応口を開くチャンスこそ巡ってきたが、




「「「………………………………」」」



 当然シリウス達はこぞって沈黙。

 なにしろ沈黙の理由は至ってシンプル。



「ほらほらほら。ほらほらほらほら。遠慮せずにどうぞ言ってみてください。寛容なこのドルリアムさんが真摯に聞いてあげますから。ほら?」



 今もこうして舌を出し、侮蔑する態度を見せる時点で(はな)から人の意見に耳を傾ける気ゼロ。むしろ不治の病に侵された仲間の少女(メアリー)を救う為と正直に答えた方が悪手。直後に腹立たしい罵倒が飛んでくるのは明白。


 それも今度は自分達だけでなくメアリーも。

 ゴルゴン病に体を侵され満足に体を動かせない彼女まで誹謗されようものなら、ドルリアムに手を出しかねない。それがタブーと承知しつつも、



「おやおやおんやぁ? どうしたんですか? ちゃんと答えてくださいよ? 今私が発言権与えたでしょ。それとも答えられない? それってつまり私の命令に従えないという事ですか? それは頂けませんねぇ。なんでしたら協会本部へ連絡して今すぐ強制解散を執行しましょうか? うんんん? どうなんですか? 答えるんですか?」



「う……うぐぐ」

「くそ……ねちっこい野郎だ」

「どこまで腐ってるの」



 よってそんな言うも地獄。言わずも地獄。

 いかなシリウスといえど、こんな奴に病床の仲間(メアリー)を嗤われたらマジで殴りかねない。だが言わないなら言わないで状況は悪化する。




「こ~た~え~て~く~れ~ま~す~か」




 もう逃げ場無し。

 いよいよ応答に困った…………その時!?




「人が夢を追うのに理由がいるのか?」




「うん?」


「き、君は――」



 たまたま通りかかったのか。

 それとも煌々たる銀翼に用事があったのか。

 はたまたドルリアムの態度に苛立ったのか。

 ともかく会話の流れを強引に断ち切ったのは、




「ぐ……グリフ・オズウェルド」


「よぉ、久し振りだな。ドルリアム」




 同じく決勝戦へ進出したグリフだった。

 彼相棒のフィオナ含め誰も連れず一人の状態で、ニタニタと気色悪い笑みを浮かべるドルリアムにフランクな挨拶を向けると、



「いやぁ、お前まだ監査官やってんの? 本当に変わらない奴だな。まあ、しょうがないか。()()()()じゃあな。お前みたいな陰険な奴はどこ行ったって持て余されるもんな」



「んな!? なななな……何を言って――」



 矢継ぎ早に続けた。

 かつて世界最強ギルドに所属していたおかげか用事等々などで他のメンバーとギルド協会に赴く機会も多く、グリフはその中で出会ったドルリアムの性格も把握したうえで発する。



「別に嘘は言ってないと思うが? なにしろ自分より弱い人間とか、弱みを掴んだ奴らには容赦なく悪口や卑怯な行動に打って出る。昔から悪評が絶えなかったもんな。例えば、ほらあの――」



 両者知っている仲だからこその発言。

 卑劣漢を黙らせるには正論が一番だと。グリフは流れるようにこれまでのドルリアムの悪事を暴露しようとした…………………………すると?



「ふ、ふん! あまり調子に乗らない事ですね! どれだけ強いメンバーを引き入れても、所詮はド底辺のゴミ賢者が纏めるギルド! どうせ長続きなんてしない! せいぜい日陰者らしくひっそりと生きるんですねっっ! それではっっ!」



「おいおい。話はまだ終わって――」



「ああ、それから私には近々()()()()()()予定なので! 独自調査によると()()()()()()とか! ほらね! アナタみたいなヘボ賢者とは違うんですよ! 私は選ばれたエリートですからぁぁ!」



 その間わずか数秒。



「アイツ……相変わらず逃げ足だけは早いな」



 ばつが悪いと踏んだのかドルリアムは逃亡。

 嫌味か、または負け惜しみのつもりだったのか。ともかくそんな台詞をグリフへ吐き捨てると、瞬く間にその場から走り去っていった。




「……って、偉そうに言ったもののいつまでも変わらないのは俺も同じか。いつもアイツ(フィオナ)らの足を引っ張ってばっかだったもんな」



「……グリフ、ありがとう」



「ああ、気にすんなって。俺は人の夢や覚悟を嗤う奴が許せないだけだ。特にああいう一方的にまくしたてるような輩はな」



 厄介払いしてくれた事に礼を言うシリウス。



「そうか……君一人かい? どうしてここに?」



「ああ、全然力不足だがこれでもギルド長だからな。これから戦う相手(煌々たる銀翼)と顔合わせぐらいはしとこうと思ってさ。それで魔法陣から戻った直後にこっちに来てみれば――」



(ドルリアム)に問い詰められてたと」



「そういうこと」



 対してグリフも自分がここに来た理由。

 勝負前の挨拶をするためと打ち明けると、



「事情は聞かない。でもアンタは誠実なギルド長だ。禁足地に入ったのにも、この決定戦に参加したのにもきっとそれなりの理由があるはず。だから俺はアンタを見下したり、軽蔑もしない」



 ドルリアムのゲス発言とは真逆な激励。

 下手に聞くと情に流されかねないと危惧し敢えて聞かなかったが、グリフは何度か面識があり良い噂も耳にしていたシリウスを評価。そして。



「だから()れるだけ()ろう。どうせ明日の戦場は俺達の貸し切りだ。説得力ないけど俺も全力で戦うから。どうせうるさいのは外野だけだ。気兼ねなく俺達の本気を見せてやろうぜ」



「こちらこそ。悔いの無いように全力で戦わせてもらうよ。だからそちらも本気で来てくれ」



「勿論だ。期待してるぜ」



 フィオナの受け売りなのか。

 グリフは正々堂々と宣戦布告し、シリウスもそれに承諾。互いに大きな願いを秘める者同士。


 周囲の評価なんて気にせず、それどころか逆に会場を魅了し返すぐらいのマジな戦いぶりを繰り広げてやろうと人知れずに誓い合うのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ