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10話 到着



【グランディア―ナ王国 飛空艇乗り場上空】



 グランディア―ナ王国。


 それは豊富な資源に恵まれた大国。

 南には蒼き海が広がり、北側には広大な平原や鉱山広がる土地。高所から一度周囲を眺めたならまさしく自然の神に愛されていると言わんばかりの絶景。そんな毎日が陸海の資源に恵まれる地に建てられた国こそがこのグランディア―ナであった。




《乗客の皆様、三日間に渡る空の旅にお付き合い頂きまして誠にありがとうございました。前方に見えますのが目的地のグランディア―ナ王国でございます。また間もなくこの本艇は着陸致しますので、お忘れ物の無いようにご注意願います》




 とはいえ、どんな生物でも初めは赤ん坊であるようにこの国も同様に建国当初はただのちっぽけな小国。


 建国者である初代女王フォリア・ディア―ナは己のカリスマに惹かれ集まった同胞達と共に、奇跡的に手付かずだったこの豊かな土地を確保。

 余りある資源をかき集め、それらを可能な限り国家を反映させるための資金に変換。さらにはその集めた資金を元手にした農地の新規開拓。


 さらに国家存続にとって重要課題である国民を増やすべく、交易以外に他の土地からの移民の受け入れも含めて海側では港の整備を。陸側では土地の整備を急いでいった。




《なお着陸後につきましては大変混雑致しますので案内に従い、他のお客様のご迷惑にならぬよう順番に降りて頂きますようお願い致します》




 けれども。

 結果的に彼女達の夢は実らず。


 問題は金。

 血の滲むような努力の末に周辺地域からようやく人々が訪れ順調に住民が増え始めた頃、充分に蓄えていたはずの資金の底が見え始めた。それからのフォリア達は頭を抱える日々。このままでは全てが破綻。だが、かといって移住してきて間もない国民達に重税を課すなどもってのほか。話にならない。



 どうすれば良いのか。

 何か良いアイデアは無いのか。


 日増しに蓄えが削られてもそれを止める手立てが浮かばない。浮かんだとしても理想論。今すぐに実行できるような現実的な解決策など浮かばない。そんな無駄で堂々巡りを繰り返す日々。見方によっては国民以上に毎日疲弊していく女王フォリアだったのだが……。




《はい、それでは皆様、大変長らくお待たせ致しました。いよいよ飛空艇乗り場に到着です》




 しかし。

 天は彼女を見逃さなかった。


 運命の赤い糸とでも例えようか。

 その頃ある一人の青年が偶然国を訪れていた。


 名はアントリア・グラン。当時、世界を代表する程の名家にして大富豪『グラン一族』の次期当主であり、後に女王フォリアの夫となる人物。


 彼は自身と近い年齢の美しい女王が治める新国家があるという噂を聞きつけお忍びで来訪。そこからの経緯は至極単純。たまたま国内の様子を見て回っていたフォリアを見つけ一目惚れ。


 また自分と同年代だというのに日々賑わいが絶えない、人々が生き生き出来る理想国家を作りたいという大志を抱いている点。さらにその実現の為に自ら率先して行動している部分も相まり、アントリアはさらに彼女に惚れ込んでいった。




《ではただいまより本機は着陸態勢に入ります。今しばらくこのままで。またこの間にお部屋に忘れものが無いかの確認もお願い致します》




 そして。

 それこそ両者にとっての出会い。


 アントリアは彼女が資金繰りに困っているという内情をどこかから聞きつけるや否や即行動。彼は莫大な財力とこれまでに築き上げた各国の王やその政府の重鎮達との人脈(パイプ)を余すことなく次々に提供し、彼女の抱く理想(グランディア―ナ王国)を見事に成就させたのであった。



 またそれからアントリア自身も同じく成就。

 同じ理想を実現する為に奮闘した両者の間にはもはや時間など無用。事態の収拾後に程なくして二人は幸せに結ばれ、その経緯はまるまる国の歴史として語り継がれるようになったのであった――




《はい! 皆様お疲れ様でした! 着陸完了致しましたので、ここからは係の者の案内に従い移動をお願い致します! それでは本飛空艇をご利用頂きありがとうございました! 良き観光を!》




 こうして。

 遡ること実に数百年。

 運命的な男女の出会いがきっかけとなり大国に成長。今も絶えず繁栄を続けており初代女王の理想通り賑わいを続けるグランディア―ナ王国に、




「う~~んんんっ! ようやく着いたか! まったく長いものだな! 三日というのは。飯も空からの眺めも決して悪くなかったが、余としてはやはり身体がなまってしょうがなかったぞ!?」


「それはお前だけ。俺はのんびり満喫してたよ」


「ふふ。フィオナ様ってば暇があれば体を動かして暴れたい! 余は早く強敵と戦いたいのだ! って、グリフ様にせがんでいましたもんね」


「そうそう。戦闘狂もいいとこだぜ……」




 グリフ達はついに到着。


 三日に渡る飛空艇の優雅でのんびりとした空の旅を満喫。船尾より一斉に大勢の乗客が降りていく様子を見ながら、ようやく一行は【最強ギルド決定戦】開催の地へ訪れたのだった。




「さて、そうこう言ってる間に俺達の降りる番がやって来そうだけど……これからどうするよ? エルーナ。決定戦開催まではまた日はあるぜ」



「うんん? ああ、その事か」



 流れるように乗客が甲板から降りていく中。

 グリフは周辺の景色に目を向けていたエルーナへ質問。これからの予定はどうするのかと軽く聞いてみると、



「まずはエントリーから済ませに行こう。前回の時は副ギルド長()ギルド長(ドノヴァン)だけ申請に行ってたからグリフ達は知らないだろうけど、実はこの決定戦って参加できるギルド数に制限がある。だから早くエントリーしとかないと、途中から抽選に回されてそのまま“参加枠”に入り損ねるかもって話だ」



「なるほどな。だからアンタは日数的に余裕のある内にって慌てて俺達の所に来たってワケか」



「ご明察。流石はグリフだ。そうさ、開催ギリギリだと確実に抽選に回る。だからそれを見越しての飛空艇だ。これなら確実に早くたどり着ける。まあチケットはプレミアが付いていたから高かったけど……背に腹は代えられなかった」



「あはは……本当に何から何までありがとうな。アンタの分だけでも容易するのに苦労したろうに、わざわざ俺達三人の分まで確保してくれて」




 ひとまずは申請(エントリー)




「なに水臭いこと言ってんだよ。私とアンタの仲じゃないか。かつては背中だけでなく命を預け合った仲だろ。それに……昔のこと言うなら豪雨に降られて洞窟で雨宿りしてた時なんか、互いに布一枚で寄り添って“朝まで”温めあった――」



「いや言い方!? 誤解招く言い方やめ――」



「……グリフ様? その話をもう少し詳しく」

「ほお……面白そうな話だな。よもや貴殿と小僧が“そういった間柄”だったとは。なるほど」



「ほら見ろ! アンタが歪曲した表現かますから、一気に不穏な空気になったじゃないか! あと“なるほど”って何!? 魔女帝様はなに納得しちゃったの!? どこに合点いったの!?」



「でも、決して嘘の話じゃ――」

「グリフ様……早く詳細を教えてください」

「小僧よ。見苦しいぞ。吐いて楽になるが良い」



「いや、だから布一枚だったのはびしょ濡れの服を着たままだと風邪引くから! それで俺達を温めたのは焚火っ! お互い焚火の前で雨が降りやむの待ってたって普通の雨宿りの話なんですが!? だからそんな目を向けないでっ!?」




 思わぬ爆弾発言も混じりながら。

 エルーナはまだ日はあるから大丈夫だと、それぞれが観光に(うつつ)を抜かす前に自分達の本来の目的である決定戦への参加を優先するように返答した。




「うふふ。冗談です。グリフ様に限って“そんな事”はあり得ないですもんね。申し訳ありません」


「ふむ……余も悪かった。なにせ余もセリカも小僧の過去を全て知っているワケでは無いからな。ましてや難しい男女の間柄ともなれば尚更な」



「…………誤解が解けて良かったよ。それじゃあ気を取り直してエントリーに行こうぜ! 乗客も俺達以外は降りたみたいだし、こうしてる間にも参加枠が埋まっちまうかもしれないからな!」



「うむ! そうだな!」

「早速行きましょう!」



 代わってグリフ側もどうにか和解。

 フィオナはともかく、セリカに関しては闇を含んだ瞳でグリフを問い詰めていったが彼の返答。また人徳や性格の甲斐あって窮地を脱し、改めて新たな土地での行動をようやく開始。


 まずはフィオナ達二人を先行させた後、



「さあ、エルーナも行こうぜ。確かエントリー場所は北西の闘技場コロシアムだったけか。悪いけどその辺は忘れたから含めて案内頼むぜ」



「あ、あはは……悪かったよ。ちょっとだけからかってやろうと思ってさ。だって久し振りに会ったかと思えば、また()()()()()()()()()()んだから……そんなの“妬いちゃう”だろ?」



「えっ? あっ、ごめん。声が小さくてよく聞き取れなかった。だって久しぶりの後は何て?」



 グリフは残ったエルーナを連れて下船。


 飛空艇の船尾から空いた甲板へ。

 甲板から地面に降りる階段へと、




「……内緒だ。ったく、肝心な時に限って聞こえないんだから。ほんと都合良い耳してるよな。あれか。いわゆる難聴系ってやつか?」



「なんかボロクソに言われた気がしたんですが」




 そうして普通の観光ならばこのまま待ち時間を利用しての国内巡り。特産物でこしらえられた料理を食すも良し。何も考えずに国内を回るも良し。あるいは冒険者ならば案内所で珍しいクエストを探すのも良し。楽しみ方は人によりけりだったが、




「あっ……そうだグリフ。さっきの話の続きなんだけど、実はお前に一つ()()()があってさ。せっかくだから、この際に打ち明けておこうと思う」



「うん? さっきの話って?」




 グリフ達一行はエルーナの進言通りにまずは参加者として申請する為にも受付場所。北西部の商業区に設けられた大型の闘技場(コロシアム)へ意気揚々と足を運んでいった…………ただし?




「いや、だから。洞窟で雨宿りした時の話だよ。それ、実は続きがあってさ。その、実は私さ……()()()()()()()()にその……なんだ。少し言いにくいんだけど。実は……その……あれ――」



「…………へっ? なに? なになに?」



 ただし。

 ただ一名。



「いや、なんでもない! やっぱり忘れてくれ! この話は私の胸の中にしまっておくよ。ただの自己満足でしただけだからさ! ほらフィオナさん達も先に待ってるし。早くこのまま申請に――」



「いや、ちょっと待って!? 勝手に胸の内にしまわないで! 教えて!? 何したの!? 俺の寝込みに貴方はいったい何したんですか!?」




「…………()()()()()()()()()()()()




「マジで何したのおぉぉぉぉぉっっっ!?」




 昔でも滅多に見せなかった恥じらう表情。

 赤く頬を染め、落ち着かない様子のエルーナが発した意味深な発言のせいで、当人のグリフだけはそれどころではなかったが……。



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