表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/161

15話 ディアス・ギルディア



 いつになく騒がしい夕暮れ時だった。



「A隊、戻ってこい。クロード陛下の命令だ」

「城内に待機している兵士達の準備はまだか?」


「城下町西エリアの警備兵の一部をクロード様の警備に当てろ。本命こそバルグ砦だが、念のため別の場所も視野に入れて同時に捜索出来るよう人員を集めろとのベルート様からのお達しだ」



 夕日が山間の隙間を縫うように沈んでいき、橙色だった空が暗い夜空へ変化せんと動くこの絶妙な時間帯にて、



「くそぅ……せっかくの待機中だったのに」


「まあまあ、そうぼやくなって。俺だってさっきまでポーカーで大勝ちしてたのに突然の出動要請でパアになっちまったんだからさ。諦めようぜ」


「おいおい……こっちなんか城外で彼女とこっそりデートしてる時だぜ? かなり“良い雰囲気”まで言って()()()()ってとこだったのに」


「「……ご愁傷さま」」



 国王である青年クロード直々の救出命令。


 流石に国内の警備等があるため全軍とまではいかなかったが、それでも待機中の兵士達などで捜索隊が結成され、悪漢達に攫われた子供達を救い出すよう命が下った影響で城内は騒然。



「おい。ベルート様を見なかったか?」


「ああ、ベルート様なら玉座の間へ向かわれましたよ。クロード陛下に状況を報告するとかで」


「そうか。分かった」



 そんな城内外問わず、既にあちこちからドタドタと走り回る兵士達の足音や突然の招集命令に対する愚痴も含んだ会話など、わざわざ様子を見ずとも慌ただしいと分かる中にて――――




「さあ小僧。そろそろ話してもらおうか? 話す許可が下りたのは知っているぞ」




「………………」



 城内の客室にて彼女。

 召喚者フィオナは窓の外でざわついている兵士達の様子を眺め終えると、グリフへと尋ねた。



「先程のあの青年(クロード)の口から出た人物について。そして貴様が顔色を変えた理由もな」



 少し前の対談にて挙がったその人物。

 他でもない現国王であるクロードの兄にして、過去に()()()()()()()()()()()()という不明な点が多過ぎる男性『ディアス・ギルディア』の情報をフィオナは欲していくのだった。



 しかし……対するグリフの返答は――



「……今、彼女は?」



「彼女? ああ、セリカの事だな? あやつなら貴様の言う通りに仮眠を取るように伝えておいた。ついさっき様子を見てきたが、心労がたたっているのかぐっすりと眠っていたようだったぞ」



「そっか……悪かったな、急に変なこと頼んで。どうしても彼女の前では()()()()()()があってさ。それで別室で休ませるよう頼んだんだ」



「ふふ、気にするな。だがこうして貴様との約束を守った以上は余には知る権利がある。諸々含めてきちんと話してもらうぞ……それに――」



 彼なりに何か深い理由があったのか。


 グリフはすぐに事情を語らず、フィオナが開いていた窓へ向かい周囲を軽く見回した後に閉じ、万が一にもセリカが部屋を訪ねてくる事が無いかを再確認すると、



「それに?」



「実はな、一つ悪い報せがあるのだ」



「――どうした」



「ああ、実は仮眠前にあやつの身体を洗ってやっていたのだが……その時。あの情報屋(ボロド)が言った通り、禁術の呪いとやらが進行しているのか背中の黒い紋章が僅かに大きくなっていた」



「……って事はつまり」



「そうだ、セリカの死期(寿命)が迫っている。我々が助けるべき子供達の身の安全ももちろん大事だが、まずは彼女を救う為にも一刻も早くあの()()()()()とやらを解かねばならん。だからこそ聞かせよ。貴様達が今回の黒幕と疑っているそのディアス・ギルディアの情報を――」



「うっ。ぐっ……わ、分かった」



 グリフは一瞬だけ口を開くのを躊躇う様相を見せつつも、フィオナの卓越した観察眼相手には敵わないと踏んでか情報の開示を決断し――





「ディアス・ギルディア。一言で言えば()()だ」





 告げた。



「ほぉ……クズか。よもや貴様の口からそこまでハッキリとした評価が下されるとは。そのディアス・ギルディアとは相当憎まれるような人物だったらしいな。それで? そいつは何者なのだ?」



 ()()()()


 フィオナはまだ見た事の無いディアス・ギルディアの評判について、そんな余りにもド直球なグリフの一言から、ある程度の人物像をイメージしつつも質問を重ねていき……さらに、



「それに、さっきあの若き王クロードは兄上と呼んでいたな。であるならば通常の血筋で考えるなら、今の王座に就いているべき人物は弟である彼では無く、その長男であるディアスとやらになるのではないのか?」



 そう疑問点をあげていく。

 現国王(クロード)本人から聞いた内容も交え、どうして()()()()()()()()()としては長男に劣ってしまう次男が現在王座に座しているのか。



「それにさっきの対話の時に()()()()()()とも言っていたな? それも充分おかしい話ではないか。いったい過去にこの国では何が起こったのだ? 常識的に考えても統治者である王がそうコロコロと変わるものではあるまい?」



 当時の光景を知らぬ彼女からすれば、話のみでまだまだ不明瞭な点が多すぎるがゆえにグリフの返事を待つ前に連続して質問を投げかけていくと、



「……ああ、お前の言った通りだ」



 グリフは答えていった。



「先代。つまり()()()()()()()()()()()はクロードの兄であるその()()()()()()()()()()だったんだ。二人の父親であり先々代の王だったバトロス・ギルディアが亡くなった後に奴が王に即位した」



「……やはりか。だが、ならばなおのこと――」



「でもな……奴はいわゆる【暴君】ってやつだったんだ。先々代(父親)の前ではどう振舞っていたか知らないが、王座に着いた途端に野郎は自分を世界の中心か何かと勘違いして、己の私利私欲のままに振舞い高みの見物を決め込んでいた。それこそ国民には幾つもの重税を課し、逆らう奴らは片っ端から見せしめに国のど真ん中で処刑までしてな。おかげで当時のここ(ギルディア王国)は恐怖と絶望に満ちていて、とても自然に笑えるような環境じゃなかった」



「…………………………」



 納得した。



「……なるほど、それでセリカの言っていた反乱。国中を巻き込んでの大規模な政権変革(クーデター)が起こり、結果的に貴様の言う暴君(ディアス)とやらは永久追放。そして次代にはあの好青年であり、同時に王族の血を引いている弟のクロードが王座に座ることになったと」



「まあ、そんなところだ」



 いや、納得せざるを得なかった。


 全容を語るにしてはかなり短すぎたが、それでもかつて一国を治めていたフィオナから言わせれば民から望まれない王が辿る末路など知れている。



政権変革(クーデター)……か」


「……ああ、そうさ」


 民が集まっての村。

 民が集まって集まっての町。

 さらに集まって集まって多くの民が生活してこその国。


 よってそんな国の繁栄を支える土台となっている民を(ないがし)ろにした時点で国の崩壊。もしくは王に対する不満や責任の追及からは免れられずに、最終的には国全体を揺るがすような大反乱に発展していったのだとフィオナは解していき、



「今こうして民草が笑って日々を過ごしているのは、そんな一人一人が血が滲むような苦境を覆さんと立ち上がった結果だったのか。なるほど」



(……………………ほっ)



 グリフ側からすれば、ようやく質問攻めから解放されると思った………………その矢先!?



「……うむ? 少し待て」


「えっ?」



 出てしまう。



「このギルディアの事情は大方分かった。だが少し妙ではないか? 今の貴様の語った内容と、余にセリカを別室に移すように頼んできた繫がりが見えてこない。別に今の歴史の勉強程度であれば彼女がいても問題なかったろうに。それとも今回の放火事件に関わることでもあったのか――」


「………………」



 一番答え難い質問が…………けれども。




「――加担していたんだ」




「…………なに?」



 グリフは付け加えるように続けた。



「あくまで極秘裏だがその時の政権変革(クーデター)には俺……いや俺達『蒼穹の聖刻団』はあのクロード王から直々に要請があったんだ――」



 まだフィオナに明かしていない過去を。


 それもわざわざセリカを別室に移すに至った理由。このギルディア王国にて公には明かされていない“その歴史の裏”を語っていくのだった――



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ