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14話 挑む者達 ➁



 望みの魔宮。



「ここまでありがとうな、じいさん」

「余も感謝する。助かったぞ、ご老体」


「うむ、君達も気をつけてのう」



 賢者グリフ達の家がある町メザーネから北に15マイル(約24㎞)程進んだ先に位置する森。通称【エルガルムの森】の中に、その多くの冒険者やギルド一行に挑まれては弾き返して来たダンジョンがそびえ立っていた。



「では二人共、くれぐれも命を軽々しく捨てるような行動だけは避けるんじゃぞ。無理だと思ったら退くのも戦略の内じゃからのう。愚者と勇者の違いはそれをどう見分けるかじゃよ」



「ははははは……こりゃ参ったな。流石は元冒険者のじいさんだ。忠告の重みが全然違うぜ……」


「あっはっはっは! だがご老体の発言は確かに的を射ている。小僧も余も勢いばかりに任せて死体にならぬよう注意して挑まねばなるまい」


「そうだな。じいさんの言う通りだ」



 そして外見はまさに一つの【塔】。


 城塞の一角に備えられる馬鹿でかい円柱状の建造物が周囲の木々を見下すように建っており、その規模は遠方からでもダンジョンの形状を確認できるほど。挑む冒険者達側からしてもなおさら発見しやすい外見。



「よし……そろそろワシは行こうかの。あんまり引退した老いぼれが口出ししてもしょうがないし、目の前にあるダンジョンを前にして細々と水を差すのも野暮じゃからのう」


「わざわざこんな目の前まで運んでくれてありがとな。おかげさんで体力もアイテムも消耗せずに済んだぜ」


「ふむ、我が主に続いて余も改めて礼を言おう。ご老体よ。其方の行商人としての繁栄を祈っているぞ!」



「おやおや、これまた随分とかしこまって。どこまでも礼儀正しいお客さんだ。じゃあワシもお返しに改めて武運を祈らせてもらおう。またどこかで会える事を祈るよ。さらばじゃ」



 と、塔という外見から一見は上層へと上がっていき最上階を目指せば攻略達成と思いがちだが、残念ながら仕組みはその()()


 実際に足を踏み入れるとダンジョンの本体だと予測した塔内部はほぼ空洞。2階3階と上層に向かう為の階段などは一切無く、あるのは下層へ降りるための入口が開けているだけ。


 よって見た目とは裏腹に挑戦者は地下の階層を吸い込まれるように進み、太陽とは無縁の地下に張り巡らされた広大な魔宮を攻略せねばならず、また地下という構造上その規模も計り知れない。



「「……あれ? アンタら確か集会所の――」」


「「うん?」」



 そして……これこそが最近になって地表に姿を現し、今なお冒険者達を退け続けている難攻不落にして超難関ダンジョン《望みの魔宮》の特徴だった。



「おおっ、やっぱグリフさんとあん時のべっぴんの姉ちゃんだ! 受付の嬢ちゃんから聞いたぜ! なんでも火炎魔竜サラマンダーをのしちまったって。それも討伐までしたそうじゃねぇか!」


「報酬金をがっぽり貰ったって聞いたぜ!」



 そうしてそんな風変わりな外見の特徴を持った魔宮ダンジョンを目前に控え、既に数名の冒険者が入口傍をうろつき挑まんと待機する最中、



「……なんだ昨日のトレジャーハンターか」


「おお、どこかであった顔だと思えばまさかの貴殿達であったか。先日は酒と馳走になったな!」



 賢者グリフと召喚者フィオナは入口前まで運んでくれた商人の老男(およしお)と別れた直後、先日のクエスト受注の際に知り合ったトレジャーハンターの一団(ギルド)と再会した。



「そういやアンタ達も挑戦するって言ってたけ。なんでも残ってるお宝を探すとかで」


「そうさ。だが俺達は前にも言った通り上層フロアで適当に宝探しをして帰る算段だよ。どんな願いでも叶うってのは魅力的だが、あんまり欲張って死んじまうのだけはゴメンだからな」


「そんでもって今は残りのメンバーの到着を待ってるってワケだ。だからまあ俺達に気にする事なく先に進んでくれよな。お二人さん」



 発言通りお宝を大量に持ち返る為か。

 とにかくその気になれば人一人は詰め込めそうなリュックを背負った大柄の厳つい男性二人は、グリフ達へそう挑戦を促すのだった。



 しかし……そう先へ進むよう促す一方で、



「――とここまでは何気なく言ってみたが……グリフさん。アンタ達ここに来たって事はまさかこの魔宮を攻略する気なのかい? 先に釘刺しとくけど、ここは強豪ギルドのメンバーですら泣いて帰ってくるような修羅の世界だぜ?」


「そうさ。なんやかんやで1階から《ブラックスケルトン》や《デッドリードラゴン》とかの上位アンデッド系が出没するダンジョンだ。だから俺達だって用意できる最高の装備で挑みに来た。だから……そのぉ、なんというか――」



 男性二人は賢者グリフの()()を鑑みてなのか、やんわりとした表現でそれとなく離脱を勧める旨を伝えんと言葉を選んでいく。


 アンタが会得しているような初級魔法なんかでは歯が立たない。そのため最下層どころか浅層の突破も怪しい。それこそモンスターと鉢合わせすれば終わりだといった直接的な表現を避け、



「なんだよ。ギルドを追放されるような無能は挑戦したらダメってルールでも追加されたのか?」


「いや、そういうワケじゃないが……なあ?」

「うーん……なんて言えば良いんだろうな」



 よって無理せずにこのまま帰るか。

 もしくは潜るにしても自分達と同じでモンスターと出くわさないように。決して危険度の高い深層などには進まず帰還するのが賢明と、大柄の男達は回りくどい表現で伝えていく。



 対し……グリフはさっきの老人との会話といい、続けて向けられた男性達の忠告に対して不機嫌そうな声と表情を浮かべつつもその返答として、



「なんてな。心配してくれるのは嬉しいけど、俺もリスクを理解したうえで来たんだ。もちろん自分の弱さも十分承知してな。だから戦闘は()()()()に任せて、俺は知識面で攻略するからよ」


「おいおい! 余をこれ呼ばわりするな!」


「そっか……それならしょうがねぇか!」

「くれぐれも下手打って死ぬんじゃねぇぞ?」



 老人商人と会話した際と同様。

 一切迷うような素振りなく、実に前向きな明るい返答で納得させた。



「よし気に入った! それじゃあそんな勇気あるグリフさん達にとっておきの情報を売ってやる。ついさっきヘロヘロになって帰ってきた冒険者から仕入れた新鮮な情報だ。1000Gで買うかい?」



「おいおい……ちゃっかり代金は取るのかよ。この流れ的には無料(タダ)だと思うんだけどな。ほらよ、1000Gだ」


「まいど!」



 すると男達はグリフの堂々とした姿勢を高く買ったのか。ちゃっかりと受け取った金を懐に仕舞うと手にした耳寄り情報を口にし始める。



「お前さん達も既に知っていると思うが、現在この魔宮にはアンタを追放した世界最強ギルド『蒼穹の聖刻団』が潜っている」



「ああ、道中で聞いたよ。まさか俺達とタイミングが被るなんて思ってもみなかったけどな」



「ガッハッハ、まったくだぜ! しかし潜っていったのはいいが気になる連中の動きがさっぱり分からねぇ……そこで俺達はというと――」



「さっき帰還してきた冒険者に詳しい話を聞いて、一行の【攻略状況】についての情報を仕入れたってワケだ。まあ参考になるかどうか分からないが攻略目指す対抗馬としては気になる所だろ?」



「……まあな。確かに詳しく知りたい情報だ」

「うむ! では余からも是非頼もう。目的を同じくする競合者の把握はとても重要だからな!」



「オッケー。じゃあ早速――」



 内容としてはまさに内外問わず挑戦した冒険者の誰もが気にかける情報。


 完全攻略に最も近く、世界最強ギルドとして名高い『蒼穹の聖刻団』。

 そんな彼らの踏破状況や、帰還した冒険者が目にした範囲でのメンバーの活躍具合など、



「それから、次に欠かせない情報が――」


「なるほどな……続けてくれ」



 挑戦前よりグリフは元メンバー達についての新たな進捗情報も予め仕入れておく事にするのだった――



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