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10話 出動



 錚々(そうそう)たる顔ぶれだった。



「……これで全員集まったな」



 世界最強と謳われる冒険者ギルド『蒼穹の聖刻団』。

 そのギルド長ドノヴァンは本部である豪邸内に設けた円卓の間にて、朝一番より招集した全メンバーの顔を確認し発していった。



「では時間通り今から会議を始める。全員ちゃんと食事は摂っただろうな?」



「「「「勿論だ。ギルド長」」」」

「「抜かりはありません」」



 ドノヴァンの開始宣言に対しメンバー全員は軽く頷き、中には返事を返す者もいた。


 なお円卓に座るメンバーの席順はというと、ギルド長ドノヴァンが腰を下ろす上座から順に、副ギルド長にして【超級闘士(ゴッドハンド)】と呼ばれる前衛特化の職を預かる女性 エルーナ。


上級戦士(バトルマスター)】の男性 マック。

聖騎士(パラディン)】の大柄な男性 ガイール。


【魔法使い】の職に就く細身の男性 グラント。

【戦士】の職に就くたくましい女性 ジェシカ。


【盗賊】の職に就く小柄な男性 ハンズ。

【僧侶】職にして回復役の男性 ラックレー。

【武闘家】であり最年少の女性 クレア。



 そして……扉付近の末席には――



「ディーン。昨日はちゃんと眠れたか? 睡眠不足と空腹は死に直結するからな。もしも朝飯が食い足りないようだったら補給しとけよ?」



「大丈夫です! 体調面に抜かりはありません! なので安心してください。それに僕はこの日をずっと待ちわびてたんですから!」



 つい先日ドノヴァンの勧めで『蒼穹の聖刻団』に加入した青年。期待の新人ディーンが自分を推薦したギルド長へと元気よく返答。


 なお職業の枠としては()()()という理由で追放したグリフ・オズウェルドと入れ替わる形で空席となった【賢者枠】のポジションとして、今こうして会議の場に出席していたのだった。



「よし。それじゃあ話に移ろう。全員、俺が作った手元の資料を参考にしながら聞いてくれ」



 すると新人ディーンの元気な返事を皮切りに、ドノヴァンは今回の本題。資料に目を落とすよう指示を促すと、自身も同じように資料を手繰り寄せ話していった。



「ふむ……ついに俺らも()()()()()()()に挑む時が来たんだな。正直、俺としてはいつになったら挑戦できるのかワクワクしていたぜ」



 上級戦士(バトルマスター)のマックが告げる。



「そうだ。いよいよ俺達も挑む時が来た。以前から何度も話題には挙げていた例の超難関ダンジョン《望みの魔宮》の攻略を目指してな――」



 ドノヴァンはいつになく真剣な眼差しを全員に向けると、これから挑むダンジョン名と目的を発し続けて知りえた情報や解説を始めた。




≪望みの魔宮≫



 それは最近になって地表に出現した新ダンジョンであり、発見当初から今日まで数多のギルドや冒険者達が挑んだが誰も歯が立たず。未だに攻略報告が挙がっていないとされる強固にして難攻不落なダンジョンの名称。


 特徴としては階層数こそ()()()5()()()と少なめながら、深層に潜れば潜る程に格の違う強力な魔物が蔓延(はびこ)り始め、やがては猛者達であっても厳しい洗礼を浴びせて再起不能まで追いやる点。



「仕入れた情報によると、まず1階層~3階層に関しては俺達が今まで挑んできたダンジョンと変わらないらしい。要するに簡単って事だな」



 しかし。

 ここまで物騒な噂が立ち込めていても挑戦者の数が一向に減らない理由として、最深部を攻略した者には()()()()()()()()()()()()()という噂が巷で出回っているためだった。



「なんだよ。随分と拍子抜けだな」

「てっきり最初から厳しいのかと思ってたぞ」



 ちなみに一方で一部の冒険者ギルド達からは迷信だの、質の悪い嘘だの否定的な意見もいくつか挙がっているのだがそれはまた別の話として、



「まあまあ……黙って聞けって。とは言っても出現するのは《ブラックスケルトン》や《デッドリードラゴン》とかの強力なアンデッド系だ。別に攻略に支障は無いとはいえ、気を抜けばアイテムを消費する羽目になるから油断はするなよ」



 ドノヴァンは知り合いを通じ集め回った情報を記した紙を時折眺めながら、自分達が挑むダンジョンの概要をメンバー全員へと伝えていく。



「だが解析が済んでない四階層以降は完全に未知の領域だ。なんでも目撃情報によれば危険度★10の『スカルデーモン』を見たって話もある。だから苦戦を強いられるならここからだ。上層が簡単だったからって気は抜くんじゃないぞ」



 主に内装。出現モンスター。

 他にもこれまでどれだけの冒険者や強豪ギルドが返り討ちに遭って壊滅して来たかなど、メンバーに緊張感を与える意味も兼ねて犠牲情報も事細かに説明を重ね、会議の結論としては、



「それから上層はかなり入り組んでいてまだまだ探索の余地が充分にあるらしいが、既に下の階層へ行くルートが幾つか発見されてる。だから俺達はそのルートを辿り攻略を進めるつもりだ。俺達にとって最重要課題は【攻略】だからな!」



 ドノヴァンは手に持っていた資料を卓に置き、目標も兼ねた言論をメンバー全員へ発した。



「……つまり上層部の宝は完全スルーでひたすら攻略に専念ってことか。ドノヴァン?」



 最寄りの副ギルド長エルーナが確認する。



「ああ、その通りだエルーナ。今俺達に必要なのは金ではなく更なる名誉だ。階層自体が少ないのに誰も達した事の無いこの《望みの魔宮》を攻略すれば俺達『蒼穹の聖刻団』の名はさらに広まる事になる。だから荷物については回復アイテムと食料を詰め込んでくれよ! いいな皆!」



 ドノヴァンはハッキリと伝えた。


 潜る目的は探索でも金稼ぎでも無くあくまで攻略。目標を絞る事で集中力を上げる意味も含んでいたのだろうが、彼はとにかく自分達が超難関ダンジョンを初めて攻略したという偉業を為すのが最優先事項だと改めてパーティーの全員へ認識させた。



「宝は全部スルーか。まあ、しょうがないな」


「ドノヴァン。盗賊の名に傷が付くってハンズが泣きそうな顔を俺に向けるんだけど――」


「まあ別に攻略後でも探索はできるしね。ここはドノヴァンギルド長の言った通り、回復アイテムと食料をメインに持ちこむか――」



 と……表面上こそ宝物を全てスルーする事に対して、所々から小言のような文句が漏れ出てはいたものの結局はギルド長が掲げる目標を承諾しているのか、



「よし! じゃあ会議は以上だ! 出発は2時間後! 集合場所はまたこの円卓の間だから荷物をちゃんと纏めて集まってくれ。では解散!」



「「「「了解。ギルド長!」」」」

「「「「目指すは魔宮攻略!」」」」



 ギルド長ドノヴァンの宣言の元。

 メンバー全員は意気込みと目標を一つにし解散。


 攻略報告が挙がっていない難攻不落の超難関ダンジョン≪望みの魔宮≫攻略に向けて準備をすべく、各々は自室へと戻っていくのだった――



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