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第九話 芽生える友情

「よっ。二人の勝負を見届けなくていいのか?」

「大丈夫だ。ゆあが代わりに見届けてくれてるから」


 ゲームセンターでの戦いはまだ続いている。ダンスは、三曲ほど勝負をして、ミリアが勝利を勝ち取った。

 すると、エステルの意外な一面が出てくる。

 このままじゃ終わりません! と、次はエアホッケーで勝負をすることに。


 負けず嫌い。ちょっと子供っぽく、自分から台へと走り、ミリアに挑んだ。

 ミリアも、ノリノリで勝負を受け、ゆあが見届け人となって二回戦が開始した。


 俺はと言うと、ここではジョンと同じく【威那頭魔】の元メンバーがアルバイトとして働いているらしいので、挨拶にと。

 ジョンのところに行くと、その人物が手を挙げ、俺を歓迎する。


「久し振りですね。大地さん」

「おいおい。敬語はやめろって。こそばゆいぞヘッド

「そっちこそ、頭はやめてくれ。もう牙が抜けて、すっかり平凡な学生になってるんだから」


 ジョンと同じぐらいの身長の大男。

 角刈りで、筋肉質。

 ゲームセンターで働くよりも、工事現場のほうが似合いそうな、体育系男子。

 

 名前を、大林大地。

 今年で、二十一歳になる大学生だ。俺よりも早く不良を辞めた。

 さすがに、大学受験もあるので、という理由で。俺も、その辺りは理解していたから、止めることはしなかった。まあ、不良をやっておいてどうなんだって思うけど。


 で、無事大地は志望大学に合格し、今ではここでバイトをしながら、日々勉強に明け暮れているようだ。

 今でも、威那頭魔のメンバーとは交流はあるし、連絡もとってる。けど、前ほど会えてはいない。

 引っ越した奴等も居るからな。


「にしても、懐かしいな。こうして、三人で集まるのは」


 丁度バイトが終わった大地と共に俺とジョンは、缶ジュースを片手に、笑みを浮かべる。

 

「だな。よく三人で馬鹿な連中をボコってやったっけな」


 俺は威那頭魔の中で、最年少。

 ジョンは、唯一の外国人。

 大地は、最年長ということもあり、色々と三人でやっていた。


「特に、ほら? ゆあちゃんの友達が虐められてた時の竜牙は、震えたね」

「そうだったな。竜牙の容赦の無さといったら……電光石火の早業! 相手グループは、訳のわからないままやられてたよな」

「そ、そうだったか? あの時は、ゆあの頼みでもあったから、まあちょい本気出してたからな……」


 と、視線を逸らしながら俺はぐいっとジュースを飲む。

 対して、二人はなに言ってんだ? という表情で見詰めてくる。


「あれ以来、竜牙は雷神とか言われるようになったんだよな」

「でも、今の竜牙にはその面影もなしっと。今じゃ、昔ふった女の子にたじたじなんだぜ?」

「マジか? おい、それってあの銀髪の子じゃないだろうな?」


 なんて鋭い……当たり前といえば当たり前か。ジョンのせいで、あのことは威那頭魔のメンバー全員に伝わったからな。


「健気なんだぜ? 玉砕したっていうのに、竜牙のために諦めずに自分を磨き続けていたんだ」

「泣けるなぁ……そりゃあ」


 こ、こいつら。すっかり丸くなったからって、容赦なく言葉攻めしてきやがって。

 そのにやにやした顔も相まって、ムカつくわマジで。


「とまあ、俺としては昔も面白かったが、今の青春ストーリーも面白いってことで」

「頑張れよ、頭!」

「あー! もう! お前らなぁ!?」


 結局弄られるだけ弄られた俺は、頭を抱えながら、ゆあ達のところへ戻ってきた。

 そこでは、何故か拍手喝采。

 人だかりの中心には、熱い握手を交わしていたエステルとミリアがいた。ゆあも、感動しているのか涙を流してる。

 いったい何があったんだ?


「あっ! 兄貴!」


 そして、俺を見つけた三人は一目散に駆け寄ってくる。

 

「いい汗を掻きました」

「いやぁ、あの戦いを見れなかったなんてお兄ちゃんと残念だったねぇ」


 そんなに凄い勝負だったのか。ダンスからして、凄かったからな。エアホッケーも、周りの反応から察するに、相当なものだったんだろう。

 だって、明らかに最初のギスギスした感じが消えてるし。

 完全に友情が芽生えちゃってるし。


「エステルんは、マジぱねぇっすよ! うちとあそこまでやりあえた人なんて兄貴とゆあぐらいでしたから!」


 今の俺じゃ、どれだけ抗えるか。


「いえそんな。ミリア先輩もさすがです。正直何度も負けそうになりましたから……」

「結局、今回は一勝一敗! 決着つかずだったね。どうする?」


 三人でうーんっと真剣に考えた結果。

 クレーンゲームに目がいく。

 しかも、可愛らしいぬいぐるみの。


「よし! 決着はどっちが先にあのぬいぐるみを取るかにしよう!」

「異議なーし!」

「今までとはちょっと違った勝負だね。望むところ!」


 おいおい。まだ勝負をするのか?

 まあ、ゲームセンターはそういうところだから、仕方ないけど。

 それからは、何度も何度も挑戦したが、全然ぬいぐるみは取れず。

 なかなか難易度が高いようで、三人とも眉を顰める。


 そんなに難しいのか? と、見ていただけの俺が三人に頼んで、一度だけ挑戦してみたところ……取れてしまった。

 どうしよう……と、ぬいぐるみを手にとって様子を伺うと。


「さすが竜牙さん!」

「マジぱねぇっす! 一回で取るなんて!」

「ゲームの腕は、落ちていないみたいだね! お兄ちゃん!」


 なんだか誉めらてしまった。

 二人が頑張ったからで。俺は、取りやすい位置にあったのを取っただけなんだが。

 結局、クレーンゲーム勝負は俺が取ってしまったので、無効。

 そろそろいい時間なので帰ることにした。


「そうだ。ジョン先輩、ミリア先輩」

「ん? どうしたんだ?」


 二人と、分かれようとした時だった。

 エステルが、二人を呼び止め、スマホを取り出した。


「宜しければ、連絡先を交換しませんか?」

「もち! 喜んで交換しちゃうっすよ! ほら、兄さんも!」

「はいはい」


 そして、連絡先を交換し終えたエステルは、満足した様子でスマホを仕舞う。


「それと、今度の日曜日は何かご予定など入っていますか?」

「俺は特になにも」

「当然うちも!」


 それを聞いたエステルは、一度俺達を見た。なるほど、あの時の約束か。そういうことなら、なんの問題もない。


「では、宜しければ僕の家に遊びに来ませんか? もちろん、竜牙さんとゆあはすでに誘っています」

「そういうことなら、迷うことなし!」

「エステルちゃんの家か……うん。俺もお邪魔しようかな」

「ありがとうごさいます。では、時間などは改めてご連絡しますので」


 改めて考えると、エステルの家って……どんな感じなんだろう。まさか、とある貴族の家とかだったりしないよな? 

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