第四話 Re:六歳児から始める公爵令嬢せ――以下略。
さて現在、俺事私、カメリアちゃん六歳は、生まれたままのすっぽんぽんの姿で、四方八方から伸びてくるメイドハンズによって懇切丁寧に全身くまなく洗われて、というか磨かれております。
無です……羞恥心? 知らない子ですね。
という訳で今の内に私のキャラ設定と現状そして、今後についての確認をしておこう。
まずは、私の設定盛り過ぎな件について再度確認しておこう。
簡単に言ってしまえば、前回というか前世は転移、今世は転生。
前世についてだが、私はVRゲームから異世界に転移しその世界でわりと長く生きていた……と思う。
いや、はっきりと死んだ記憶がないので何とも言えないが、その世界でゲームから引き継いだステータスを駆使して過酷な弱肉強食の世界を生き抜いてた事は確かだ。
……などは覚えてるのだが、所々虫食いのよう、霞みがかってるように曖昧で、よく思い出せない部分もある。が、力の使い方や戦闘方法などはちゃんと覚えている。
能力や力に関してだが、今世――カメリアとして転生した身ではあるが、前世の力は余すことなく引き継いでる。
この事に関しては大いに安堵したものだ。
この時点でだいぶ設定盛り過ぎで心配になってくるが、まぁ――前世はこんな感じ。
その内、ピンチになったら、思い――出した!! てな感じで、前世の記憶を何個も持っている某主人公のように思い出すでしょう。
お次は今世、新生カメリアちゃんの取り巻く環境の確認だ。
なんとカメリアちゃんは公爵令嬢なのだ。
『侯爵』ではなくもう一個上の『公爵』だ。
貴族の中でも断トツのカースト上位ってか一位だね。
ではどういった国なのか、おさらいしよう。
国の名前は『ケルジュエッツ』
王を頂点とした王政国家で、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、騎士爵といった貴族位がある。
ただ、ちょっと私が知ってる貴族とは異なる点がいくつかある。それは家督についてだ。
これは必ずしも長子に相続権があるわけではないようで、勿論性別による差別もない。
例えば子供が三人いたとしよう。順番は長男、長女、次女といった感じなら、普通、というか私主観ではあるが長男が家督に、と思うがこの国は次女がこの三人中で最も優秀だった場合は、家督は次女にといった形になる。
継ぐに値する人物であれば、女だろうが男だろうが、関係ない。完全なる実力主義なのである。
ちなみにこれは王家にも適用される。
というか、王家がこういった王位継承をするのでそれに習って家臣である貴族たちも、と言った感じだろうか。
この特徴は古い歴史を持つ家に多く見られるようで勿論、私の家も最古参と言われる家なのでこれに習っている。
私には妹がいるので家督はもし、私が選ばれたらその子に譲る気でいる。
なんとなくだが、この家を継ぐのは私より妹だろうと思う。
深い意味はないんだけども……。
さて、妹の話が出たので家族の確認をしよう。
私の家族構成はパパン、ママン、妹ちゃんに私。
パパンの名前はジーク。ママンはテレジア。妹ちゃんはカナリア。
先ずはパパンジークについてかな。
ざっくり説明するなら、平民から英雄になった主人公系イケメンお父様だ。
なんでも七英雄のお一人だとか。
この七英雄なのだが、詳しくは聞いていないのだが聞いた限りじゃ、ん? 七人の何某系? と思ったね。
これもざっくり説明するが、遠征任務中に魔物氾濫と呼ばれる現象が起きた際に開拓村を七人で守り切ったという話だ。
ほんとは村人の避難が完了するまでその村で二個小隊で殿を務め、ある程度時間を稼いだら撤退するはずだったのだが、七人だけその場に残って押し寄せる魔物をほとんど屠ったらしい。
ちなみにこの七人の中にママンとセバスティアンも含まれる。
セバスティアンは当時ママンのお付きで同行してたらしい。
なんともアグレッシブな両親である。あと戦う老紳士セバスティアンが渋すぎる。
次はママンテレジア。
ママンについては先ほど言ったように七英雄の一人。
フリード家、現当主。見た目は十代中頃から後半。
年齢について言及するのは七人の天使がラッパを吹くのと同義……または最後に希望が出てこないパンドラの箱を開けるようなモノ。と言った感じの事をセバスが言ってた。
だが、カメリアちゃんの決死調査の結果……パパンより年上とわかった。
しかし、これ以上の調査は実の娘とは言え、命にかかわると判断し中断した。
どの世界に行っても女性の年齢は弩級の地雷なのだな、と強く感じた……マル。
容姿はほんとふわふわとした愛らしい人形のような女性だ。身長も低いしね。
ただ……一つ気になるのは、常に鉄扇を持ち歩いている事だろうか。
本人曰く、
「母となった身で帯剣するのはおかしいでしょ? だけど……剣がないとそわそわしちゃうから鉄扇で妥協してるの!」
と常人では些か理解できない返答を愛らしいウィンク付きで頂いた……。
見た目に反して中身はかなり……カメリアちゃんのママンだなって強く思った。
妹ちゃんは……四歳の可愛い盛りで、容姿はほぼ、ママン。
ママンがそのまま縮んで、幼女にした感じだ。
今のところはそんな感じ。特にどうこう考察するには情報が少ない。
その、可愛いは正義! という事にしておく。
家族に関してこのぐらいでいいだろう。
次は我が家の立ち位置だ。
フリード公爵家。
始まりは建国王の兄が興したとの事。
なんでもご先祖様は、王になるには弟が相応しいと継承権を捨て、自身の戦闘力を駆使してこの国と王を守ったと語り続けられ、騎士を目指す者にとって神のように存在だとか。
かなりぶっ飛んだ逸話が数多くあるようだ。
そして、その剣神だの剣聖だの言われてるお方の子孫が継いでいるのが、フリード家。
王の剣であり盾でもある。そして民の鎧。
敵に一切容赦しないその姿は、王の兇器と言われ、敬られ、尊ばれ、恐れている。
でも民、この国に住む貴族外の人たちからはかなり好感触なお家。
うん……敵多そうだよね。特に他貴族とか。
その辺をセバスに聞いたところ、「疎んでいる輩は多いでしょうが、報復が怖くて何もできない腰抜けばかりですよ」と大らかな笑みで言っていた。
少し突っ込んでその話を聞いたところ、なんと我が家の使用人たち――特にメイドとか執事とか、身の回りのお世話する人は皆、それなりの戦闘力を有してるとの事。
いやね、メイドさんにしろ執事さんにしろ、こう常時戦場に立ってます、みたいな雰囲気を感じて気のせいかなって思ってたんです。
立ち振る舞いとか目線の動かし方とかね。あと気配だね。これが普通の使用人と若干違うようだったのでセバスに思い切って聞いたら何でもない風に答えてくれた。
あと「流石。お嬢様です」と頭をいい子いい子と撫でられてしまった。
気持ちよかったです。あとセバスがダンディ過ぎてキュンとなりました。
そんなわけで、我が家には敵もそれなりにいるが、セバスを中心とした鉄壁と殲滅のハウスキーパー部隊があり、それなりに根性のある敵から送られてくる刺客とかそんなをお掃除してるようだ。
で、その敵と大本をお母様こと、テレジアママンも一緒になって、一切合切容赦なく鏖殺してるようだ。
ママン曰く、「家を守るのが妻の務め」そういう事です。
うちのママンは物理的にも精神的にも家を、家族を守ってくれているのです。
ん? ジークパパン何やってるかって? そりゃ近衛のお仕事を頑張ってますよ。
パパンいらなくね? とかおもちゃダメですよ?