第二話 新生! 前今世合体カメリアオン! 合体は爆――以下略。
さて、時はカメリアが小さなうめき声をあげた所まで遡る。
そして、今回は高熱により生死の境を彷徨う彼女、カメリア内側へと場面は移る。
――体が焼ける様に、というよりは蒸し焼きにされて様な暑さを感じ思わず声が漏れる。
が、何となくだが声を出たような、出なかったような曖昧な感覚を感じ、眉間に皺を寄せそうになるが、これもまたさっきと同じく曖昧に感じる。
なんだこれ?
目を開け状況を確認しようとするがこれまた曖昧な感覚。
いや? ほんとなにこれ?
よくよく体の感覚を探ろうとするがあやふやに感じてよくわかからん……?
ただ、はっきりわかるのはくそ暑いという事だけだ。
『そうよね? 暑いわよね。 体に汗いっぱい掻いて気持ち悪いわ!』
突如響く幼い声。
え? 声? しかも幼女?
すると再び幼女? の声が響く。
『あ! やっと起きたのね!? 意外とお寝坊なのね。私って』
は? え? は? 何言ってんの?
と幼女? いやもう幼女でいいや。言ってることがわからず聞き返すが、幼女からは更に頭を捻るお言葉を頂いてしまう。
『あら? わからない? 私はあなた。あなたは私よ?』
……哲学? それとも一休和尚的なあれ?
『私こそ、何言ってるかわからないわ! なによその……イッキュウテキ? て』
いやまぁ大昔に一休って名前の偉い和尚さんが居たんだよ。和尚ってわかる?
『オショ?』
なんだろ、初めて日本語を話す海外の人みたいだな……まぁいい。和尚ってのは……なんだろ? 神父?いやまぁ合ってるか? とにかく、聖職者って意味だよ……たぶん。
説明してる内に段々と自信のなくなる俺。
そして、何となく、幼女からうーーーん、と頭を捻っているような気配が伝わってくる。
いやまぁ姿見えないんでね。
『何となく聖職者って言われたらわかるような……さすが異世界の記憶ね。そのままだと、ぜーんぜんわからないわ!』
と嬉し気なお声が響……ておい? いまなんと?
『何となく――』
いや、そういうお約束はいいから。今異世界って言ったか?
『もう! 人が話してる時は遮っちゃいけないのよ!?』
とぷりぷりおこですよといった気配が伝わる。
なので、ついぽろっと。
可愛いじゃねーか。
『あら、ありがと! でもこれって私が自分で自分を可愛いって言ってる思うと、ちょっぴり嫌ね』
あの幼女ちゃん?
『なーに?』
話し戻すけどさ、異世界って言ったよね? 確実に。
『ん? 言ったわね。異世界って』
言ったかぁ。言っちゃったかぁ。
『ああ! やっとわかったわ! あなた、まだ自分が私だってわかってないのね』
いやわかるも――と伝えようとした瞬間。俺の中に俺じゃない記憶が流し込まれる。それも無理矢理、否応なしに……これがアレされる気分なのかと強く感じるぐらい強引に。それから何もかも混ざり合う衝撃はまさに、合体は爆発だ! と言わんばかりであった。
なんとなく、食ったことないけどフォアグラは消して口にしないと心に誓った瞬間でもあった。
そんな風にガチョウに対して愛護心が芽生え、ついでに合体したからには叫ぼうとした俺に幼女ちゃん――カメリアが話しかけてきた。
き! き! 気持ち――。
『やっとわかったのね! そう! 私はカメリア。そして、あなたもカメリアよ! そうだとわかった時ってとっても気持ちいいわよね!!』
……うん。そだね。なんつーか今俺は私である事に気付いた。みたいな?
俺はこの幼女ちゃんをカメリアだと認識したと同時に、俺もまたカメリアであると認識したのである。
簡単にいえば、前世が俺で、今がカメリアといった感じである。
そして、そうとわかると不思議なもので段々と幼女ちゃん、といった別存在だという感覚も薄れてくる。
それともう一つ重大な事実。
今回は転移、ではなく転生である事。
なんとも設定盛り過ぎで大丈夫か? と心配になってくる。
心配といえば今、この場にいるカメリアちゃんだ。
なんとなくわかってはいるんだが……。
『そうね。私たちが私たちであるって思えるのは今だけって思うの』
だな……でもまぁカメリアが消えるわけでもないしな。
『うん! そうなの! 目が覚めるのがとっても楽しみだわ!』
ああ! 楽しみだ! それに早く目を覚まさないとパパンとママンが心配だしな!
『お母様が特に心配だわ……じゃ起きましょうか! カメリア』
おう! 行こうか! カメリア!
どういう事かというと。
別にカメリアちゃんって人格は消えないし、俺って人格も消えない、て事。
なにせ始まりは一つだ。それだけ。
こうなる以前のカメリアの性格がとか、少し変わるかもしれんが些細な事だ。
カメリアちゃんが言ってた通り、【私はあなた、あなたは私】
そういう事である。
さて、一切合切何もかも、前世も今世も一つになった俺あるいは私、新生カメリアちゃん6歳はゆっくり目を開け、映りこんだ天井を見て、とりあえずお決まりのセリフを口にしておく。
「知らない天井だ」