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第十三話 カメリアのパーフェクト質問教――以下略。


「あなたはだぁぁれ?」


そう質問した後、私は殺気を引っ込めた。

だって、不審者ちゃん。すんごい怯えた目をしてるんですもの……ちょっと涙目になってるし。


「――っあ、あたしは! このお屋敷に仕える使用人ですっ!」

「……使用人、ねぇ」


自慢じゃないが、私はこの家にいる使用人全員の名前と顔、それに声も記憶している。

私の灰色、いえ最早銀色と称してもいい脳みそちゃんは見たもの、聞いたものを瞬時に記憶できる――いわいる瞬間記憶って能力が備わっている。

まぁ? それを十全に使いこなしているかと聞かれれば……黙秘するしかないのだけども。


そんなわけで、カメリアちゃんの六年書庫を覗いて見てもこの不審者ちゃんの声は記憶されていない。似た声はならあるようだけど、そんなのいくらでもあるし、論外よね。

よって現状での判断は――


「ダウト」

「え? だう、と?」

「う、そ。て意味よ」

「いやっ! ホントですって! 裏方なんですよっ! あたし!」

「はい、それもダウト! ……私、病気が治ってから自由に動けるようになってすぐに、みんなのところに行ってご挨拶をしたの。心配かけてごめんない。それから心配してくれてありがとう、て。その時この家にいるみんなとお話ししたわ。で、私はあなたの声を聞いたことがないの。その意味がおわかり?」


ここまで言えば少しは素直になるかと思ったのだけど、不審者ちゃんは尚も食い下がる。


「そ、それはですね? さっきも言いましたが、あたしは裏方なので、お嬢さまに姿を見せた事もお話したことがないの――」

「シャラーープ。裏方ってお料理とかお庭とか普段見かけない所で、お仕事してる人達でしょう? 残念ながらちゃんとお話ししましたっ! 私はね。私のお世話をしてくれるみんなを家族だ、て思ってるの。だから顔も声も全部、余すことなく記憶したわ」


と私は不審者ちゃんの顔を見上げながら、人差し指を立てて論破する。


「あのそっちの裏方じゃ――」

「もういい……だんだん面倒になってきた」


私はそう言って不審者ちゃんの言葉を遮る。

しぶといわね。この子。

面倒くさくになってきたのはほんとだし、ここはもうスパッと顔見て終わらせましょう。

てか、最初から顔見ればよかったわ、と思いながら立てた指を動かして、宙に浮かせていた不審者ちゃんを手の届く距離まで近づけて、地面に膝をつかせる。

それから、不審者ちゃんの顔に巻いてある布を取っ払う。

そして、私は不審者ちゃんの素顔見て、目を見開く事となった。



驚きのあまりに不審者ちゃんの顔をガン見している私。


エルフ特有の笹の葉ような尖った耳。

艶やか黒髪は腰に届くほどに長く、綺麗に切り揃えている。

前髪ぱっつんとか姫カットとか、『俺』だった頃、言われてたような気がする髪型だ。


ここまではいいわ。

この世界では珍しくもないから。黒髪ってのは珍しいけどいない訳ではないし。

私が驚いてるのは不審者ちゃんの顔立ち。

これの顔って――


「…………ティティ?」

「あはは……ティティ姉さんがいつもお世話になってます……いや? お世話してます、かな? はは……」


そう若干テレながら言うティティに瓜二つな不審者ちゃん……。

この子――いえ、もうこいつでいいわ。


……こいつは今この瞬間、私を怒らせた。


「ど、どうかしましたか?」

「――黙れ。ティティと同じ顔で、似た声で囀るな」


そう一喝し、最初に放った殺気が可愛く思えるぐらいの殺気を放って黙らせる。


私の大切な家族を愚弄するとは本当に……いい度胸だ。


こいつも! こいつの飼い主も!!


「ティティの顔なら油断すると――そうね。まさにその通りだわ。でも同時にお前らは私の逆鱗に無遠慮に触れる事になったわ」

「そ、そ――」


体を震わせ、汗を掻きながらも喋ろうとする不審者。

へぇ? なかなかいい根性してるわ。


「無理に喋らなくていいわ。お前の体に直接聞くから」


そう宣言した後、私は不審者の胸を鷲掴みする。

あら、意外といい感触。

はり良し、弾力良し……あと感度もいいみたいね、と感想を思い浮かべながら不審者を見れば……。

さっきまで青ざめてガタガタ震えていた彼女は現在、顔を赤らめ僅かに腰をモジモジと。


「なんというか……余裕ね、あなた?」


と言いつつグッと強めに握る。

するとどうでしょうぉ。私の可愛いおててがズブリ、と指どころか手首まで、めり込むじゃあーりませんか。

自分の体を見下ろした不審者の顔が一瞬にして変わる。


ふふふふふ……いいわぁその顔、と完全覚醒した私の中のサディスティック幼女が舌嘗めずる。


「青ざめたり、赤らめたり、忙しいわね? ふふふふ――」


愉し過ぎて思わず、ふふふて笑っちゃたわ。

そりゃ、驚くわよねぇ。胸に手がめり込んでるけど、血も出ないし、きっと痛みも感じてないはずだし……違うモノは感じてるでしょうけど、今は現状を理解するのに忙しくて、そんな余裕はないみたいね。

彼女は顔を真っ青から白く変え、うわごとの様に小さく零す。


「え? なに? これは――?」

「なんでしょうねぇ」


と適当に返しながら胸の中央に手を動かす。

すーっと何の抵抗も感じず動く私の手。この見た目と感覚に近いモノを上げるなら、水に手を差し入れてる感じ、かしら?

私が手を動かす度に不審者も小刻みに身体を震わせる。

理解したのか、それとも理解する前に別の感覚に飲まれたのか知らないけれども。


その顔は、何かを我慢するように、漏れそうになる声を食いしばって必死に耐えてるようで――。


それを見た私は……非っ常ぉぉにゾクゾクしております!! 

サディスティックカメリアちゃん爆誕のお知らせです!! 

頬とか熱くてなっております!!

若干息が荒くなってハァハァしております! 幼女及び、令嬢にあるまじき状態だと言えるでしょう!!


「ふふふふふふっ。いいのよぉぉ? 我慢しなくともぉ。力いっぱいに鳴いてごらんなさい? きっと自我が吹っ飛ぶぐらい気持ちいいわよぉ――ふふ……あははは!」


――と怒りと不審者が見せる反応で、サディズムハートがガンガン加熱されて真っ赤に燃えて高笑いする私は、当初の目的を忘れて悦に浸るのでした。



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