憂鬱なチュートリアル
説明回。
追記:魔族関係の設定を変更しています。
―――ぁぁぁあああ
「うぁああああああああああああぁぁああぁあああ!!!」
し、死んだのか?俺?
「って、生きてる・・?」
「いや、死んでると思うよ」
呆然として呟いた独り言は、どうやら独り言ではなかったらしい。俺は情けない体勢で床に突っ伏していた。
恥ずかしさに少々身悶えしながら立ち上がる。
声のした方に顔を向けると、何か暗い表情をした初老の男性が岩に腰かけていた。
「・・・でもこうして喋ってますが」
「ああ、言い方が悪かったか。正確には、現世では死んだってことだ。全く、憂鬱なこった」
お目覚め早々ショッキングなニュースが舞い込んだようだ。と言っても唯に宣告されていたのでそこまで驚きはない。受け入れたくはないが。
「現世?じゃあここは所謂・・・。異世界?」
「まあ、概ねそうかな。ただ、ここに来て喜ぶような奴は居ないんじゃないか」
「・・・・というと?」
「ここは現世で言う、死後の世界・・・。あの世だよ」
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冷静になって辺りを見渡すと、どこかの草原らしい。
太陽の昇り加減からして、お昼にさしかかる頃だろうか。
とにかく情報が欲しい。今のところの唯一の情報源であるおじさんに話し掛けた。
「あの、貴方は・・・、ここで何をされてるんですか?」
その佇まいはまるでリストラされたサラリーマンの様だった。昼間から公園に居る彼らの哀愁が漂っている。
「おじさんかい?おじさんは・・・・、世界を憂いているのさ・・・」
「・・・・、ひょっとして、おじさん・・」
「ああ、この間リストラにあったのさ・・・。全く、憂鬱なこった」
ああ・・。地雷だった。おじさんは続けて語りだす。
「おじさん、この間まで『八つの大罪』の一人だったのさ。すごいだろ?」
・・・・。八つ・・?七つなら聞いたことがあるが。
「君の故郷で言うところの“一番大きいブラック企業”の役員ってとこかな」
「というと?」
「簡単に言うと魔王の集まりさ」
俺は思わず後ずさった。聞いてないよ。何で初めに出会う人物が元魔王なんだよ。とんだ欠陥RPGだ。
「いや、警戒しなくていいさ。おじさんはもうほとんど能力を持っていないし。此処でこの時間、訪れる者にこの世界の知識を授ける。これがおじさんの業らしくてね」
業・・・。・・・宿命、的な感じで捉えていいのか?
どうやらおじさんは俺のガイドキャラらしい。そういうのって、妖精的な何かだったり、少女だったりが普通な気がするんだが。神の計らいか、幾分渋すぎるチョイスだ。
何でも聞いてくれと、おじさんが質問を促す。
「じゃままず・・・。この世界についてもう少し詳しく教えてくれますか?」
「ああ、説明が途中だったね。此処は魂の還る場所。あの世っていう認識で問題ないよ。
ただ、普通死んだ人間は突然こんな草原の真ん中に現れたりはしないね。それにこの世界に来ればここの摂理は思い出せるようになってる。代わりに生前の記憶は保持できないけどね。その記憶は神が管理する保管庫に移されるんだ。
此処で課される業の難度にもよるけど、達成すればその記憶を引き継いで再び現世に転生、まあ強くてニューゲームってのも可能な訳だ」
なるほど、輪廻転生はあったってことか。異常に大人びた子役に心当たりがあり、なんだか腑に落ちた。
「その業というのは?」
「業は宿命の様な物さ。行うべき事、というか。まず転生するにあたって、希望を聞かれるんだ。例えば財閥の息子でイケメンに生まれたい、なんて希望するとするだろ?これって現世ではどうだった?」
「ぐうの音も出ない勝ち組ですね。選ばれた一握りの人間です」
「そう。こんな好待遇の人間が何人も存在できる筈はない。そんな希望を言えばとんでもない業を課せられるだろうね。達成不可能なレベルの業なんて課せられたらもうお手上げだ。
達成できずに歳を取り過ぎれば『怠惰』の罪で魔族の仲間入りさ」
まあ現世での寿命位は大丈夫さと笑うおじさん。
魔族・・・。あの世でもあくまで異世界。その辺の類は存在するようだ。
「おじさんは元魔王・・なんですよね?ということは魔族、なんでしょうか?」
「ああ、まだ名乗っていなかったね。おじさんは元『八つの大罪』が一人、『憂鬱』のハルク・メランコリウスだ。宜しくね」
『憂鬱』って大罪だったのか。
「あ、こちらこそ、すいません。僕は古市 譲です。宜しくお願いします、メランコさん」
「うん、ファミリーネームを選んだんだね。いい歳したおじさんをそんなラブリーに呼ぶとは全く、憂鬱なこった。
まあいいや。それで、単刀直入に言うと、魔族にあたるね。その中でも魔人に分類されるよ」
「魔族とはどう違うんですか?」
「そもそも魔族は現世で悪い事した奴なんかが転生するんだ。魔人はこの世界で悪い事した人達。さっき言った『怠惰』の例もそうだし、盗みを繰り返せば『強欲』の罪で堕ちたりね。
で、魔人になると同時に大罪の支配領域に飛ばされる。魔人は魔族の大好物が故に強くないと生き残れず、その数は多くないよ」
この人、覇気のない感じだが、もしかしたら相当強い人だったのかもしれない。
「メランコさんも何か悪いことをしたんでしょうか?」
「ふふっ、おじさんは知り過ぎたってとこさ。ところで君は見たところ前世の記憶を保持しているね。非常に珍しい例だが・・・、恐らく君は異世界転移で此処に来たのかもしれない」
「異世界転移・・・?」
「誰かによって召喚されたんじゃないかな。もしかしたら、君の器はまだ現世に残っている可能性がある」
「え・・・。ってことは元に戻ることが出来るんでしょうか?」
そうだ。俺はまだ唯に、伝えたかった事がある。
「業がどうなるのかは分からないけど、可能かもしれないね」
「だったら俺は、元の世界に還りたいです!」
<認識しました。希望転生先は『古市 譲』。あなたの業は『救世』です>
突然機械音の様な音声が響いた。一体何事かと、メランコさんの方を窺うと
「・・・・あっちゃー。選りに選って、『救世の業』とは・・・。
全く、憂鬱なこった」
見てくれてる人が居るのって、すごくやる気になりますね。
勢いで書いてる部分もあるので
後で多少設定が変わる可能性があります。ご了承下さい。




