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救世のカルマ  作者: 小御門 遊
序章
1/14

プロローグ

初めての小説執筆です。書きためていないので更新は不定期です。

遅筆で稚筆ですが楽しんでいただければ幸いです。

よろしくお願いします。

 

「訳あって(ゆずる)君には死んでもらわなくてはなりません」



 ――――――ここは、どこだ。

 ―――暖かい・・・、眩しい・・・・。

 光・・・、光に包まれている・・?


「大丈夫さ。誰しも罪もあれば徳もあるものさ。この僕が何よりの証明だろう?」


 ――――何だ、この光景は・・・。―――記憶の・・・欠片?


「私は信じてる。貴方も彼も」

「・・・私は反対だわ。あなたの事は信じているけれど、こいつは危険すぎる。

 何よりあなたの存在を賭けてまでやることじゃ・・」


 ――男が一人と、女が二人・・・・?


「ふっ。僕の徳を否定する気かい?それにどの道僕はもう永くない。

 僕がいなくなることで世界の均衡は崩壊するだろう。崩壊した世界を救えるのは彼しかいないよ。

 何より彼は・・・・・恩人だしね。じゃあ、頼めるかい?ユーキュリア?」


「ええ・・・。・・・・・あなたに背負わせる業・・・許してね・・・」



 ――――――・・・だ・・・・・・け・・・が・・・―――――



 _________________________________



「次、古市(ふるいち)!」


 今日は先週やった中間テストの返却日。返事をしつつ教卓へ取りに行く。

 実はほぼ満点を取れる内容であった。しかしあえて中の上、上の下になる様に調整している。

 配点次第だが九十点未満八十点以上には収まっているだろう。自分の席に戻りつつ、点数を確認していると


「八十四点!!」

「流石だな(ゆずる)!」


 どうやら横から覗き込んでいた友人達が騒ぎ出す。


「いや、偶々勉強したところが出ただけだからさ。それにほら、(ゆい)なんてまた満点だったみたいだ」


 そう言って教室の廊下側に視線を送ると、彼女の席を中心に人だかりが出来ていた。


「すっごいね唯!これで何連続なの!?」

「私中学から一緒だけど、百点以外取ってるとこ見たことないわ!」


 それはもうこの聖徳(せいとく)高校のテスト後には見慣れた光景だった。というより小中高と同じ学校だった俺からすると、朝になれば太陽が昇っている様なものだ。彼女が満点以外を取ったところを見たことがないのだから。

 口々に周りが騒いでいる中、結城 唯(ゆうき ゆい)は勝ち誇るでもなく、その偉業を隠そうという態度でもない。

 そう、彼女にとって満点は日常なのだ。


 彼女は近所に住んでいる幼馴染である。儚げな瞳に色素の薄い肌と髪といった日本人離れした容姿に、説明不要の頭脳。さらに運動神経抜群で良家のお嬢様。それでいて誰とでも公平に接し、少し世間ズレした天然という愛嬌も兼ね備えている。


 男子たち曰く、天に最も近い女子ランキング堂々の一位らしい。どうやら高嶺の花を超えた存在という意味の様だが、その題目だとまるで今にも死にそうに聞こえるぞ。だったら御歳百歳を迎えるウチのひいおばあちゃんの方が上・・と、不謹慎だな。


 昔から彼女には数々のトラウ・・もとい教訓を教えられた。


 あれは忘れもしない小一の春。他の子より早くひらがなを覚えた俺が自慢していると、唯はその横で既に漢検二級レベルの漢字を会得していた。


 あれは忘れもしない小二の冬。二重跳びを体得した俺が縄跳びが苦手な友達を馬鹿にしていると六重跳びに交差跳びを織り交ぜてにじり寄ってきた唯。


 あれは忘れもしない小三の冬。冬休み前の終業式。市民マラソン三年生の部で優勝した俺は全校生徒の前で表彰された。同時に登壇していた唯はホノルルマラソンで完走し、同年代のニューレコードを叩き出したらしい。俺は全校生徒の前で公開処刑された。


 挙げだせばキリがない。とにかく、俺が何か自慢すれば必ずその上を行く奴が居たのだ。幼くして俺は悟った。この世界には自分より凄い奴がいるのだと。


 そして、中二の春。唯の上靴が隠されたり、教科書が破られたりといった嫌がらせが起きたのだ。余りに出来すぎる彼女に嫉妬する者が少なからずいたのだろう。と言っても彼女の人柄もあり、いじめにまで発展することはなかった。だがこの一件で出来すぎる人間は人の嫉妬を買う事も解った。


 そんな彼女と幼少から過ごしていた俺の座右の銘が『有れども無きが若し』になるのも無理はない。

 世の中を上手く渡っていくには、何かで人を上回ってもそれをひけらかしてはいけない。人の恨みを買うほど目立ってはいけない。出る杭は打たれる。能ある鷹は爪を隠す。それが俺の人生観。


 まあ、圧倒的才能を目の当たりにすれば自然と謙虚にもなるもんだ。

 そして常に比較される事に疲れた俺は、やがて唯とは張り合わないようになっていった。今回のテストの点もそれ故である。


「結城さんは相変わらず次元が違うな」

「天は二物を与えずって言うけどよ、間違いだな」

「結城さん、可愛いから。神もおねだりされて何でも与えちゃったんだぜきっと」

「いやそんな孫に対するおじいちゃん感覚はダメだろ神様」

「違うな、あれは女を見る目だった」

「見てきたのかお前は。そんでキャバ嬢に入れ込むおっさんか神は」


 こいつらは放っておくとすぐにボケ倒す。自然に俺はツッコミ役に徹することになる。

 しつこい時もあるが、こいつらとするバカな会話は好きだった。


 授業が終わり、休み時間。トイレに行こうと教室を出たところで、唯が話しかけてきた。


「譲君、今日の放課後、空いてますか?」

「ああ、空いてるよ。帰宅部はいつ休んでもいいからな」

「では屋上に来てくれますか?あと、その・・絶対一人で来てくださいね?それと、他の人にはナイショです」

「おっけー。じゃあ、また放課後な」


 そう言うと、もう一度念を押して去って行った。何だろうか。いつもと雰囲気が違った。何かこの世の終わりの様な顔をしていたが。

 しかし、一人で来て、内緒でって・・・・。しかも放課後屋上・・。これはもしかしてアレだろうか?もしかしなくても告白(アレ)だろうか?


 実を言うと俺は唯が好きだった。超高スペックな彼女だ。誰しも憧れるのは無理はない。俺もその例外ではなかった。しかし唯は高嶺の花を超越した存在だ。そもそも彼女に告白しようとする猛者はいなかった。

 いつしか唯は聖徳の鋼鉄処女(アイアンメイデン)と呼ばれていた。というのは友人談だ。


 だが俺は幼馴染ということで、最も唯に身近な男ではあるのだ。それに唯も俺の事は憎からず思ってはいるはずだ。いつだったか、譲君の謙虚な所が好き。そう言われたこともあった。(べっ、別にそれが俺が謙虚でいることを誓った理由ではないからね!)


 それから授業を淡々(悶々)とこなし、放課後がやってきた。

 帰り支度をしていると友人達が声を掛けてきた。


「譲ー、帰ろうぜ」

「いや、今日はちょっと用事あってさ。先帰ってくれ」

「何だよ!今日はおれと魔王を倒しに行く約束だろ!」

「そんな約束はしてないし俺は勇者の一行でもない」

「誰も勇者の一行なんて言ってないよ。譲は村人Aだよ」

「いや村人誘う案件じゃねぇわ!そんな誘いに乗る村人はもう勇者だわ!」

「ふはは!よくぞ見抜いた!私が魔王だ!」

「何!?お前が魔王だったのか!村人B!」

「突然魔王にエンカウントする村があってたまるか。誰も見抜いてないのに勝手に自白すんな」

「相変わらずキレてんな、譲のツッコミ!」

「お前らはボケすぎだ」

「じゃあまた明日なー」


 今日の所は見逃してやる!覚えてやがれ!と笑顔で捨て台詞を吐きながら去っていく友人達。

 ったく。小物の悪党か。

 友人達と別れ、屋上に向かう。



 屋上に着くと唯が柵から景色を見ていた。いつも以上に儚げな表情(かお)で、事情を知らない人が見れば今にも身投げしそうに見えるだろう。


「来てくれたんですね」


 此方に気づいた唯が口を開いた。


「他ならぬ唯の頼みだ。来ない訳ないだろ?」


 軽口を叩く俺とは対照的に、唯は真剣そのものだった。何だか口ごもって、非常に言いづらそうにしている。


「譲君、最初に謝っておきます。ごめんなさい」


 え?何だ?いきなり俺は振られたのか?俺が困惑していると


「次に目が覚めたとき、多分私の事を恨むことになると思います。許して下さい」

「どうしたんだ唯?何を言ってるのか解んねぇよ」

「恐らく今話しても何も信じられないと思います。なので説明は省かせて下さい。とにかく、訳あって譲君には死んでもらわなくてはなりません。」


 は?何の冗談だ?


「唯、これツッコむところか?」

「いいえ、大真面目です」


 二人の間に沈黙が流れた。俺は唯が冗談を言っているのではないことを理解した。だが勿論、納得はできない。最後に、と唯は再びその重い口を開いた。


「お願いがあります。願わくば・・・・世界を――」


 言い終える間に唯は俺を突き飛ばした。柵が受け止める、という事は無く、俺と共に力なく倒れた。

 柵のバカ野郎!等と言っている場合ではなく、景色は目まぐるしく変わり、その視界から自身が落ちていることを悟った。


 聞こえるのは風の音。見えるのは地面。俺は、死ぬのか。

 色んな事が脳内を駆け巡る。景色もゆっくりに感じ、校舎で勉強している生徒や運動場で部活に勤しむ生徒達が鮮明に見えた。ああ、これが走馬灯って奴か・・。


 激突の寸前、地上に魔法陣の様な物が浮かび上がった。


 不思議と、恐怖は無い。俺はもう唯を信じることにした。だって、聞こえたから。

 猛スピードで落下している中、確かに、耳に、心に届いた。



「――――私を・・・・・・、助けて下さい」

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