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最終話 魔力チートで無双したけど、何か問題でも?

「いやー! 先生がまた私のおパンツを食べてるー」


 一人の少女が、鳴き声を上げながら学び舎の廊下に蹲る。

 そして、また違う少女が鳴き声を上げながら、駆ける。

 その後を、一人のかつて勇者だった女性が追う。


 ここは、学校だ。

 5年前のあの日から世界は変わり。今ではこうして平和な学校生活が送られていた。


「ぐはははー! のんちゃんよ! 先生はあなたのパンツを所望だ。大人しく差し出すがよいー」


「やぁよ!

 先生はさっきカルナちゃんにしたのと同じように、私のパンツのテイスティングするんでしょ?

 そんなのやぁやぁ、はずかちぃよぅ……」


 ……平和かどうかはわからなかった。

 かつての時代と同じくらいかそれ以上に混沌としていたかもしれない。


「あなたたちのパンツは、私のものだ。そして、私のパンツはあなたたちのものだ。

 だから、泣くのはおよし。私のパンツのテイスティングをしても、いいのだから」


「うわーん。また先生が変なことを言ってるよ! ……あ、ノイせんせぇ! 助けて、ノイ先生ェー!」


 そう言って、獲物カルナは前方にいた体の大きな老人へと駆け寄ったのだった。


「どうしたというのだ、カルナよ。吾輩、急に声を掛けられてびっくりしたではないか」


 ノイ先生と呼ばれた老人は、優しくカルナを抱き留めてから、後ろにいる元勇者へんたいを見て、全てを悟った。


「いい加減、自らの衝動を抑える術を覚えよ。お主のことを、みんな怖がっているではないか」


 よしよし、とノイ先生はカルナの頭を優しく撫でる。カルナは気持ちがよさそうに目を細めた。

 そしてメイデンは嫉妬のあまり血の涙を出していた。


「……本当にお主がこの世界を救うのに一役を買った、勇者なのか?

 吾輩にはもう何が何だかわからないぞ」


「分かってもらう必要はない! 私は可愛い生徒のパンツのためならば……私は修羅にだってなる!」


 ノイ先生の前にいたのは、元勇者の女性ではなく。

 本能の獣と成り果てた一人の変態だった。


 まぁ、悪の女神が見込んで力を分け与えただけはあるなぁ、という感じだった。


「……はぁ。そんな様子では。あの魔法少女がこちらの世界に帰ってきたとき。幻滅されてしまうぞ」


 ノイ先生は深く溜息を吐いてから、メイデンに諭すように言った。

 すると、うっと言葉に詰まるメイデン。


「むむむ……その言い方は、卑怯だ」


 彼女にとって、魔法少女の話をするのは、効果覿面なのだ。

 同僚の弱点を把握し、幼女の安全な生活を保証し健やかな成長を見守る。


 ノイ先生ってのは、そういうやつなんだ。


「だが、本当に彼女たちは、今どこにいるんだろうなぁ?」


 校舎の窓から空を見上げる、ノイ先生。

 つられて、カルナも澄んだ青空へと目を向けていた。


「さぁ。……だけどきっと。今日もどこかで元気に。たくさんの肉ミンチを造っていることだろうさ」



 僕の目の前に血飛沫が舞った。


 僕が転移した世界の悪い女神をやっつけるために5年という時間をアルファールと一緒に旅をしてきたのだけれど。


「肉ミンチ千人前、出来上がりや! ようやったで、この●●●●!!!」


 放送コードに引っかかる下品な言葉を叫ぶアルファール。

 よっぽど嬉しかったのだろう。5年目にもなると、この感じも慣れてきた。


「しゃっ! この肉ミンチ糞アバズレのために5年という歳月をかけたんや。

 容赦はせんぞ、殺すだけじゃ足りんわい! 手始めに●●を●●●●してから●●●●で●●●……」


 はい、嘘です。なれません。

 慣れないどころか日に日に酷くなっていくアルファール語録。

 多分あと半年もしたら、アルファールさんてば放送ワードしか喋らなくなるんじゃないかな?


「まさかここまで強いとはねー、あーしも、めっちゃビビったんですけどー?

 体中ボロボロで痛いし、もう勝てないっしょ? 降参、こうさーん。だから、助けて、的な?」


 目の前の肉ミンチが人型に戻り、元の美しい女性の姿に戻った。

 神々しく美しい女神の外見からは想像もできないギャルっぽい口調に、僕は激しく違和感を覚えた。

 

「それじゃ。もう勝手にあの世界の人達の運命を操って、

 自己満足な闘争を起こしたり、混沌とした世界を創ったりするのは、やめてよね?」


「おっすー、約束しまっすー」


 ちぃーす、と手刀を作って応えるその様は、何とも信用できないけど、まぁいっか。

 もし約束守らなければ。

 また肉ミンチにすればいいだけだし。


「ま、反省しとんならええか。

 ……いやまて、ちょいまて。そういやワイは調子乗ってるやつに言わせたい言葉があったんや。

 おう女神コラ。おのれ、いっぺん『ぎゃふん』言えや」


「……ぎゃふん?」


 高圧的なアルファールの言葉に従い、女神はぎゃふんといった。

 言ったけど、全然僕のイメージするぎゃふんとは違った。


「うーん、ま。これでえっか」


「いいんだ、それで……」


 僕が呆れながら言うと、アルファールは満足げに頷いた。


「ほんじゃ、これからどうするかのう?」


 アルファールの問い掛けに、僕はすぐさま答える。


「帰ろうよ。みんながいるあの場所に」


 アルファールは、少しだけ意地悪に笑ってから、


「せやな。それもええかもな」


 そう言って、応じたのだった。

 

 最初からこれまで。

 訳が分からないことばかりだった。

 30歳で童貞という理由で殺されて、。異世界に転生して。

 魔王を倒して、そしてさらに上位の存在の女神も倒して。

 気が付いたら、5年が経過していた。


 でも、この5年は。

 僕がなんとなく過ごしてきたこれまでの30年間よりもずっと刺激的で、ずっと素敵だった。


 だから、僕はアルファールに告げる。


「ありがとね。アルファール」


「……なんやねん。気持ち悪っ」

 

 そう言ってアルファールは僕に軽蔑の眼差しを向けてきた。

 ……あれー、この5年で僕たちの間には一切絆とか芽生えていなかったんだっけ?

 僕は自問しそうになったが。


「礼なんていいねん。ただ、ワイからは言わせてもらうで。……これまで、ようやったな。褒めたる」


 普段ならば絶対に言わない、僕に対する賛辞。

 アルファールがそんなことを言ったので、何だかどうでも良くなってしまったのだった。

 そっぽを向くアルファールの後姿を見ながら、僕は本当に。


 転生して魔法少女になって。

 沢山の人と出会い、戦い、そして別れを経験して。

 これまであった多くの出来事に対して。


 良かったな、と思ったのでした。

最終話です。

が、もうちょっとだけ続くんじゃよ。

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