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第五十二話 絶望

『まだ終わっていないぞ!』


 メイデンを覆う影が揺らめく。

 その声に反応してメイデンが再び魔法陣が描かれていた空中へと目を向けると。


「なん・だ……あれは!?」


 消え去った魔法陣。

 しかし、そこからは既に、魔法が放たれていた。

 空中に浮かぶ、黒い巨大な球体。

 それは、まるで光を全てのみこむ黒い太陽のように見えた。


 それは、空間を歪ませるほどの魔力もっているようで、その周辺の空間を湾曲させながら、ゆっくりと地面へと向かってきていた。


「っち、既に魔法が発動できる状態だったか。

 しかし、完全な状態ではないはず。行くぞ、魔王。私たちで、あれを止める!」


『無論。先程も言ったが、この世はこの余が護る! 全ての力を其方に委ねる、派手にかませ!』


 魔王が言うと、周囲に展開していた千の刃が、巨大な魔力を帯びた。

 そして、その千の刃が一つに集まる。


 メイデンが持つ聖剣【シャキリ・ポン】へとそれは集まり、吸い込まれていったのだ。

 これまでにない力が聖剣をさらなる高次元へと押し上げたのを直感したその時。


「余はここまでだ」


 メイデンの魔法少女かが解かれた。メイデンは皮鎧の姿へ。

 魔王は人間体の可愛らしい少女の姿へと、戻っていた。


 メイデンは、辛そうに表情を歪める魔王へと、声を掛けた。


「なるほど。この力ならば、不完全なあの魔法を切り裂けるかもしれない。……後は、任せてくれ」


「ふん、かもしれないではこまるな。……切り裂いてこい。其方は、勇者なのだろう?」


「もちろんだ。だから、もう少しだけここで待っていろ、魔王」

 

 メイデンは駆けだす。

 そして、跳んだ。


 振りかぶった剣は。

 この世のすべての生命の生死をかけた一撃。

 千刃を込めた一閃。

 

 負けるはずがない。

 折れるはずがない。

 勝利を確信し、疑わないメイデンがその聖剣を振り下ろした――


 ☆


「……無念」


 希望が挫ける音がした。

 聖剣【シャッキリ・ポン】が、圧倒的な破壊の前に砕けちっていた。



 その折れた剣が皮鎧を貫通し、深くメイデンの腹に突き刺さっていた。

 

 希望はない。

 立ち向かうものは、誰もいない。


 世界崩壊まで、残り間もない。

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