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第四十九話 終わりの始まり

 剣戟の嵐が、ロリペディアを襲った。

 余波だけで木々をなぎ倒すその隙間なく絶え間なく撃ち込まれる数々の必殺の一撃を、ロリペディアは平然と受け、躱す。


 ロリペディアは隙を見つけてはモーニングスターの大地すら割りかねない重い一撃を叩き込もうとするが……、


「……助かるぞ、魔王」


『お安い御用だ。其方は攻撃にだけ集中しておれ』


 黒い羽根の効果を受けないように、絶妙な防御を魔王が行う。


 決して、阿吽の呼吸と言えるようなコンビネーションではないが、それでも厄介この上ない連携に、ロリペディアは攻めあぐねる。


 近接戦闘においては、ロリペディアの膂力もスピードも、驚異的なのは間違いない。

 しかし、システマチックに動くロリペディアよりも、自らの経験によって裏打ちされた実力を持つメイデンのほうに、やや分があった。


 だが、それでも。


「くぅっ! とまらない!?」


 攻撃の手は止めない。それでも、ロリペディアの動きをわずかにも止めることはできない。


 不死であり、そして意思がないままにただ戦うだけの存在となったロリペディアには、痛みも恐怖も、躊躇いすらもない。

 メイデンが振り下ろす聖剣の直撃を受け、腕が切り落とされても、自らの放った魔法の余波を受けても。

 ロリペディアはお構いなしに攻撃を繰りだしてくる。


「くそ、ロリペディアを傷つけたくはないのに……怯んですらくれないのか!?」


『一度回復に専念させるほどのダメージを与える。それが最も速くこやつの動きを止められる方法だ!』


 モーニングスターの振り下ろしから、足技の連携を放つロリペディア。

 それを防御しながら、メイデンと魔王は戦略を相談する。


「……結局それが、最も速くロリペディアを解放できる、か」


 連撃をかいくぐったのち、一歩後退するメイデン。

 一拍の間を置き、自らのマジカルスティックを周囲へ展開する。


「これより私の【千刃】が、あなたへと向けられる。

 ……お願いだから、きつくなったら、直ぐにギブアップをしてくれ」


 そして、交錯する聖剣とモーニングスター。そこからさらに、展開されていた【千刃】の一振りが、ロリペディアへと射出される。


 メイデンと交える刃を弾き、後退しその一振りを躱すも、次々と降り注ぐ刃。

 魔法を用いて防ぐことは、勿論できない。


 対処をできずにいるうちに、一振りの刃がロリペディアの右足に突き刺さり、その矮躯を地面に縫い付けられる。


 迷いなく右足を引きちぎりその拘束から脱出するものの、その一瞬の動作が致命的な隙となった。


 千の刃が降り注ぎ、ロリペディアそれらの直撃を受ける。

 腕が、足が、胴が、首が全身が切り刻まれ地面へと縫い付けられる。

 そして、聖剣を振りかざしつつ迫るメイデン。


『首を刎ねろ。……こやつが死ぬことは無い。が、これでしばし回復に専念することになるだろう』


「それが最善の策で、結果的にロリペディアを助けることになるというのならば……私は今この瞬間、修羅にもなろう!」


 千の刃が降り注いだ後の、聖剣の一閃が振り下ろされる。

 

 ドゴオォぉぉぉぉ!!!


 しかし、その剣は寸前で届かなかった。

 メイデンは目前・・で起こった大爆発の余波から身を護るため、後方へと大きく跳び退った。


『ちぃ、逃したか』


 魔王が悔しげに呟く。

 聖剣が振り下ろされる直前、ロリペディアは内なる魔力を強制的に放出……つまりは、自爆をしたのだった。

 辺り一面を焦土へと変えるその威力。メイデンが無事だったのは、魔王が防御に専念していたからだ。

 それがなければ、今頃消し炭に変わっていたことだろう。


「私の逡巡の躊躇いさえなければ……」


『後悔は今すべきではない』

 

 砂埃が晴れる。

 そこから現れたのは、半身が焼けた爛れた姿のロリペディア。


 しかし、その傷も瞬く間に回復し、既にいつもの愛らしいロリペディアの姿を取り戻していた。


「どうやら、戦いはまた振り出しに戻ったようだな」


『いや、どうだかな……』


 魔王の言葉の後、メイデンは全身に鳥肌が立った。


「あれは……なんだ!?」


 ロリペディアの真上に、巨大な、そしてひどく禍々しい魔法陣が浮かびあがっていく。

 そして、その背にした翼が徐々にその魔法陣へと吸い込まれていく。

 

 あれは、やばい。どうしようもない。

 メイデンと魔王は、同時にその考えに行きついていた。

 あの力が解き放たれたら、この世界は……


 間違いなく壊れてしまうだろう。




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