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第四十八話 勇者と魔王と魔法少女

 魔法少女となったメイデンを、ロリペディアは睥睨する。

 そして、指揮者がタクトを振るうように、モーニングスターを振るうと、次々と魔力砲をメイデンへと向けて発射した。


「うむ、強大な力。先程までなら一つを防ぐのがやっとだろうが。今ならできる。……全て、斬る!」


 聖剣【シャッキリ・ポン】を握る。

 光の如き速さのその一つ一つの魔力砲だが、メイデンは息を呑む程の剣技と体捌きで、一つ残らず切り裂いた。


 聖剣【シャッキリ・ポン】は、魔を払う剣。

 魔力の塊である魔力砲は、その刀身に触れた瞬間に雲散霧消していった。


『調子は悪くないようだな、結構』


 メイデンを覆う影が揺らめく。そして、脳裏に魔王の声が届いた。


「すこぶる快調だ。確かにこれなら、ロリペディアにも引けは取るまい」


 そうして、メイデンはロリペディアへと視線を向ける。

 空中で佇むその華奢な体の背には、異形の翼があった。


「ところで、あの翼はなんなのだ?」


『あの羽根の一つ一つが魔力を相殺する。

 うかつに魔法を放っても、成果は得られないだろう。……気を抜くな、次が来る』


「了解だ」


 一先ずは攻撃を防げたが、ロリペディアには余力が十分だ。

 視線の先の少女に、魔力が満ちるのが感じられた。


 魔法少女となったメイデンに対し、攻撃は失敗に終わった。

 確かに感じるその力の波動に、ロリペディアも何かを察知したのだろう。

 大きく翼を広げ、そして空中を埋め尽くすほどに展開する魔法陣。

 瓦解した城を足元に、翼を広げるその姿は絵画のように美しく、そして残酷だ。


『これだけの魔力砲は……流石にさばききれないだろう』


「確かに、自信はない。だが、諦めるわけにもいかない」


 そう言ってメイデンは剣を握るのだが、


『そうではない。今の其方に必要なのは、マジカルスティックだ』


「マジカルスティック?」


 慣れない言葉に、メイデンは首を傾げて答える。


『何、其方は何も難しく考える必要はない。ただ、自らの強さの象徴を思い浮かべればよい。

 形にするのは、余の方でやっておく』


「よくわからないが、良いだろう。……私の強さとは、ただ一つだけだ!」


 魔王の言葉を聞いて、素直に言う通りにするメイデン。

 そして彼女が思い浮かべた〈強さ〉。それは確かに、単純にして明快な物だった。


『なるほど、其方のイメージする強さ。それ以外にはないな!』


 魔王が笑う。


 そんな二人に向かって、魔力砲が間断なく打ち放たれた。

 本来ならばそれは必殺以外の結末はない。

 しかし、その結果はおとずれなかった。


「これが私のマジカルスティックか。……スティックではないよな?」


『マジカルスティックとは、すなわち自らの心の形だ。 

 ロリペディアも、スティックとは違う形状をしていたであろう?』


 メイデンの声に魔王が応える。

 そこに立っていたのは、傷一つないメイデンだった。

 そして、周囲には今しがた出現させたマジカルスティック――千の刃があった。


『宙に浮く千の刃。……そのすべてに聖剣と同じく、魔を切り払う力を有しているのだ。

 いくらあやつの魔力砲が強大かつ強力とはいえ、これで防げぬ道理はない』


「私の想像に、聖剣が答えてくれたのだろう。……さぁ、これで互いに魔法を撃ち合っても意味がないな」


 メイデンの【千の刃】と、ロリペディアの【漆黒の翼】は、原理は違えども、互いの魔法を無力化する結果は同じだ。


 故に、遠距離での魔法の撃ち合いではなく、近距離での高速戦闘が行われるのは、当然だ。

 メイデンは、視線の先のロリペディアを見る。

 相変わらず無表情ではあるが、しかしその眼にはメイデンが映されていた。


 そして、瞬きする間もなく、宙にいたロリペディアが目前まで迫った。

 速い、なんてものでは無かった。

 振り下ろされるモーニングスター、これまでの敵がそうであったように、メイデンも肉ミンチへと変えられる未来が、一瞬よぎった。


 だが、その振り下ろされたモーニングスターを受け止めた。

 ――今は、メイデンもロリペディアと同じ魔法少女である。

 魔王の力を上乗せされ、これまでとは次元の違う強さを得たメイデンは、ロリペディアとまともに戦えるまでの強さを手に入れていた。


「……相変わらず、あなたは美しいな。ロリペディア」


 剣とモーニングスターを交えながら、メイデンはロリペディアに伝える。

 彼女は言葉を介さずに気持ちを伝えていた。

 既に互いに人の限界を遥かに超えているのだ。

 剣を通して気持ちを伝えることなど、造作もないことだった。


「……」


 だが、メイデンの言葉はやはりロリペディアには通じない。応える言葉は無かった。


「あなたは今、その力に囚われているのか。それならば、良い……私があなたを、そこから助けて見せる!」


『その意気だ。其方の力、決してこやつに引けを取ってはいない!』


 気迫を込め、メイデンは剣を握りしめる。それを魔王は鼓舞する。



 未だ無言を貫く異世界から来た最強のロリペディアに、この世界の勇者と魔王が力を合わせて戦いを挑んだ。


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