第四十七話 最後の魔法少女
空間から虹色の光があふれだしてきた。そして、その亀裂から漆黒の羽根が落ちてくる。
「魔王よ。……私はどうすればよい?」
メイデンの呟きに、魔王は応える。
「うむ。口で言うよりも、実際に行った方が早いだろうな」
そう言って、魔力が最高潮に高まった魔王は、魔法少女化を解除した。
そして、黒い影の姿に戻った魔王は、その自らの影で、メイデンを覆った。
「な、なにをする!?」
メイデンの不安げな声が発せられて時――。
硬質な何かが割れた音が響いた。
目の前を見れば、壊れた空間から、漆黒の翼を背負ったロリペディアが現れたところだった。
「何をやってんのや、さっさと迎撃準備をせなあかんやろが……」
苛立ち交じりのアルファールの呟き。
それに応えるように、ロリペディアがモーニングスターを未だ蠢いている黒い影――メイデンと魔王へと向けた。
異空間に飛ばされる前の焼き増しのように、幾多もの魔法陣が展開される。
違うのは、ロリペディアが異空間に飛ばされないままに、それらを発射したことだろう。
向かってくる魔力の塊。それは純粋な破壊の権化であり、このままでは魔王とメイデンが吹き飛ばされるのは明白だった。
「魔王様!」
「メイデン!」
二人の安否を心配するサースとウェスの叫び。
魔力砲の直撃――
「なるほど。こういうことか」
は起こらなかった。
魔力砲が直撃する瞬間。メイデンを覆っていた影が、爆発的に膨張した。
そして魔力砲を飲み込み、代わりに影が晴れていった。
「なんやねん、おのれ。その力は」
アルファールは驚愕を隠さずに言う。
『これが余の魔法少女化の力だ』
「全く、まさか私がこんな姿になろうとは。思いもしなかったぞ。
……だが、これほど力が満ちたことはない。これならロリペディアとも対等に戦える!」
メイデンが力強く宣言する。
しかし、その姿は普段とは異なっていた。
しなやかかつ華奢な、脚線美の足。
フリフリの紅と黒を基調とした衣装。
胸元が大きく開いており、その一点の防御力には甚だ疑問が残る。
くすみのない金髪は、燃える炎のような炎髪に、
澄んだ青空のようだった瞳は、宝石を嵌めこんだような緋色へと、
変化していた。
『余の魔力を変質させ、其方へと付与。そして、其方自身を魔法少女とするこの技。
確信はなかったが、成功したか』
「確信はなかったのか……」
あきれ顔のメイデンの周囲に、薄い影が揺らめき、覆われている。
どこにも姿がない魔王の声が周囲に聞こえるたび、その影は揺らめいていた。
「そんな適当でいけたんかい……大したもんやで、ホンマ。
ただまぁ、魔法少女としてはギリギリやな、うん」
冷めた目でアルファールは新しい魔法少女、メイデンを見ていた。
『ふん。とにもかくにもこれで準備は整った。さぁ、征くぞ。この世を護るため』
「そして、友を救うため!」
魔法少女メイデンは、手にした聖剣を構え、翼を広げるロリペディアをその視界に収めた。




