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第四十六話 共闘

「魔王様っ!?」


 突然の事態に脳の処理が追い付いていなかったサースが、傷ついた魔王へと駆け寄る。


「どうされたのですか? ご無事ですか!?」


 傍らで魔王の傷を魔法で回復させるサース。


「回復は良い。余が不死なのは其方も知っておるだろう?」


 と答える魔王。


「……え!? あなたが、魔王!?」


 サースの言葉、そして目の前の少女、魔王の態度を見て、メイデンが驚きの声を上げる。


「その通りだ、勇者の少女よ。余こそがこの世界の支配者たる魔王だ。

 ……このような出会いとなってしまって、余としては不本意だが」


 口元を皮肉に歪めて魔王がいう。


「ええ!? こんなに可愛いのに、魔王!?

 ……くそっ! なんてつるつるすべすべのほっぺたなんだ、ロリペディア並じゃないか!!」

 

 メイデンはそれを聞いて、頭が混乱したようだった。

 いや、そもそもが頭おかしいのだからこれで正常だったか。


「……ウェスよ、元気そうで安心したぞ」


 魔王は、三人から離れた場所でもじもじとしているウェスを見つけ、彼に声を掛けた。


「魔王様。俺様は……」


「良い。其方が余の元を去ったのは、余に王たる資質が足らなかった故。気にすることは無い」


「そんなことはありません!

 そこのボンクラクズが魔王様の偉大さすら図り切れないミジンコ以下の脳みそしかないのが原因です。

 ……決して、自らを責めないでください!」


 サースの熱弁に、ウェスはムッとした表情を浮かべる。

 それを見た魔王が、三人に向かって告げる。


「過去のことはよい。だが、一つだけ。

 余に力を貸してはくれぬだろうか。……あやつを、止めるために」


 そして、視線を瓦解した城の頂上へと向ける。

 つられて、メイデンたちもそこへと目を向けた。


 そこにいたのは、ロリペディアだった。

 だが…そこにいた者が、ロリペディアだと、一瞬メイデンとウェスには分からなかった。


 虚ろな表情。

 光の消えた眼。

 背負う二対の漆黒の翼。


 そして……静かな殺気。


「ロリペディア、なのか……?」


「ああ。だがあやつは、既に其方らの知っている者ではない。

 あれはもはや、人の姿を借りた狂気というべきものだ」


 ロリペディアはこちらを窺っていた。

 魔王とメイデンたちが合流し、初撃を防がれたために事の成り行きを見守っていたのだろうか。

 しかし、既に様子見は終了したのか、ロリペディアは再び魔法陣を虚空に展開し、魔力砲を発射する準備を終えていた。


 しかし、魔王は先手を打った。

 ロリペディアに向かって空間魔法を行使。

 一瞬のうちに、ロリペディアは異空間へと飛ばされた。


「……っ!? あなたはいま、ロリペディアに何をした!?」


「魔王様の第十位階空間魔法【虚無空間ボイド】。

 あの小娘、今頃永遠に脱出することのできない異空間で一人ぼっちよ」


「!? どういうつもりだ!?」


 メイデンが、サースの言葉を聞き口調を荒げる。

 しかし、魔王は落ち着いた調子で答えた。


「案ずるな。あやつにとってこの程度の魔法を破るのに苦はないだろう。

 むしろ、自らの身を案じるべきだ」


 魔王の言葉に、サースとウェスが驚き、メイデンは首を傾げる。


「魔王様の第十位階魔法をものともしない!? ロリ様は、そこまで強いという事なのか……?」


「その通り、あやつは強い。強すぎる。だが、見ただろう。

 既に正気を失い、自らの力を暴走させるのみの存在となっている」


「それは……どういう?」


 メイデンが驚き、疑問を口をする。


「あまり時間がない。故に、簡単な説明だけをする。

 あやつは力を暴走させている。このままではこの世を滅ぼしかねない」


「ロリペディアが、世界を……? そんな、ありえない」


「先程見たであろう、こちらへと向けて放たれた魔力砲を。敵も味方も関係ない。

 目に映るすべての破壊。それこそがあやつの目的となっている」


 メイデンが息を呑む。先程の手加減なしの一撃。

 自分に聖剣が無ければ、あの場で死んでいたに違いなかった。


「今のあやつがどれほど危険か、分かったか?」


 魔王の言葉に、メイデンが頷いた。


「この世はこの余が守る。だが、今のままではそれは叶わぬ。

 ……だから頼む。余に力を貸してくれ」


 魔王がメイデンに手を差し伸べる。

 その手を、見据え、逡巡するメイデン。


「このよこのよて、つまらん洒落を言うてる場合やないやろが。

 ホンマに消し炭に変わってまうで、おのれら」


 その間にひょいと現れたのは、アルファールだった。


「うわっ! アルファール!? 無事だったのか?」


 驚きの声を上げるメイデン。魔王は一旦差し出した手を引いて、アルファールへと向き合う。


「まぁな。……ほんで、魔王さんよぉ、ほんまにあのアホを止めるすべがあるんかいな?」


「……ある。そこにいる勇者が、協力してくれさえすれば、な」


 そして、再びメイデンへと向けられる視線。

 メイデンはその真摯な眼差しを受け止め、そして……。


「分かった。……どうすれば、ロリペディアを助けられる?」


 魔王の提案を呑むことにした。


「……ほんなら、ワイも一口乗るで。あのまま暴走させて壊すには、あのアホの出来は良過ぎるからのぅ」


 アルファールが二人に言う。


「サース。ウェス。其方らも協力をしてくれるだろうか?」


「もちろんですわ! 魔王様からの命令を、妾が断る道理はありません!」


「……一時休戦だ。俺様も、ロリ様を助けたいからな」


 二人の解答に、魔王の口元が緩む。


「礼を言おう。……もう間もなく、あやつが異空間を壊し、この場へと帰還してくるだろう。

 それまでに、準備を完了させておくぞ」


 そう言って、魔王の身体に魔力が満ちていく。

 あまりの魔力量と迫力に、メイデンたちはその場から一歩後退る。

 そんな魔王に、アルファールが尋ねかける。


「ほんで、おのれは、どうやってあのアホを正気に戻すつもりや? 策は、あるんかいな?」


 試すようなその言葉に、


「うむ。正気に戻るまで戦う、それだけだ」


 自信満々に答える魔王。つまりは無策だった。


「アホかいな!? おのれの脳みそは筋肉で出来とんのか!? そんなんで戻るわけないやろが!?」


「……やってみなければわからないだろう?」


「分かるわい! そんなポンコツにワイが造るかいな! 

 ……まぁ、あのアホを正気に戻すのは、ワイに任せとき。

 おのれらは、あのアホの動きをどうにかして止めておれ」


「……任せて良いのか?」


 メイデンがアルファールへと尋ねる。

 普段、ロリペディアといがみ合っている場面ばかり見ているため、命がけの戦いを承知で参戦するのが、少しだけ意外だったのだ。


「誰に物言うとんねん。あのアホのご主人様として、ケツくらいは拭ったらんとな」


 アルファールの言葉の後、突如空間に亀裂が生じた。


「来るぞ。……サースとウェスは、しばらく戦いに巻き込まれないように防御に専念しておれ。

 其方らの力を借りるとき、必ず来るだろうからな!」



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