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第五話 未知との遭遇

「パラリラパラリラ、ブオンブオンブオオオ~ン!」

 わずらっわしい爆音を、多数の人影が口に出して言う。


 まるでバイクをふかしているかのような爆音だが、え、口で言うのはなんか違くない?

 と思いつつ、彼らに目を向ける。

 いやいや、一体いつの間にこんな近くに現れたの?

 こんなうるさかったらすぐに分かりそうなものだけど……あ、近づいてから気付いてもらおうとブンブンうるさく言ったのか、納得。



 現れた人影は、僕の知る普通の人影とは違う、いびつな形をしていた。

 皮膚は、肌色とは違う。

 二本足に二本腕。それは同じだが、それ以外は大きく異なる。


 まず頭だ。

 彼らはトカゲの頭が、そのままくついたようになって

 そして、尻尾。びたんびたん、と愉快な効果音と共に地を叩いている。

 硬質な、鱗、のようなもので覆われており、ちろちろと口元から二枚舌が見え隠れしている。


 そして何より、皆が腹筋ローラーのようなものを手にし、雑巾がけスタイルで移動をしているている。

 なんだ、あれ? とみていると、彼らは身体を倒し、四つん這いの姿勢になった後、両手で持った腹筋ローラーを雑巾がけの要領で転がしつつ、こちらに接近してきた。


「ブンブンブンブン、パラリラパラリラ」


 なんて叫びながら近づいてくる。

 滑稽すぎて言葉を失ってしまいました。


 そして、取り囲まれる僕とアルファール。

 あ~、この腹筋ローラーは移動手段として用いているんだなぁと、一人で得心していると。


「おいおいおい! 幼女のい~い匂いがすると思ってきてみれば! まさかこんな大当たりだとは! へっへ! お家に連れ帰って、可愛い、ひらひらの服を着せてあげたいぜぇ~」


 二股に割れた舌先で口元を嘗め回す、ひときわ体格の大きいトカゲヘッドが言った。

 僕はこの言葉から、この世界の重大な情報を二つ手に入れていた。

 まず一つは、この世界でも日本語が使われていること。

 そしてもう一つは、この世界にも変態ロリコンがいるという事。


「そういえば、今の言葉しっかり聞き取れとるか? いちおう、異世界語を日本語として認識できるように脳みそを調整しとったから大丈夫やとは思うけど」


「ええ!? そんなことが僕の脳内では起こっているの!?」


 前言撤回。

 どうやらアルファールは僕の想像をはるかに超える技術を有しているようだった。


「へいへい、そこの幼女ちゃん! 俺たちを無視してもらったら困るぜぇ~。大人しくしていれば、けがはさせねぇ。ついてきな!」


 ゲヘゲヘゲヘ、と不愉快な笑い声を上げてトカゲヘッドが震えていた。

 なんなんだろう、こいつは?

 僕はそう思って、


「ねぇ、アルファール。このぬめぬめてかてかした個性的な姿をした人たちは、一体何なの?」


 と、小声で問いかけた。


蜥蜴人リザードマンやな。この世界の魔人・亜人の一種や。せやけど、こいつらがなんなのかはもちろん知らんわ、本人に聞きいや」


 と、アルファールの答えは冷たい。


「あなたたちは一体何なんですか?」


 僕は素直にトカゲヘッドたちに問いかけた。


「っへ、嬢ちゃん。俺たちのことを知らねぇのかい? いいぜ、教えてやる。俺たちは魔王様の直属の四人の大幹部の一人、東の守護者こと、【冷血】のイース様にこの地の統治を命じられた【幼女斗致死体ロリータコンプレックス】よ!」


 ひときわ大きな蜥蜴人が言う。

 なんやねん、その名前は、と僕はアルファールに影響を受けたのか、似非関西弁で思いました。

 さっきから話しているのはこいつだけで、他の蜥蜴人は僕たちの周囲で口元をいやらしく歪め、黄ばんだ目で僕たちを見ているだけだ。


 なんか突っ込みどころが多すぎてよくわからなかったんだけど、この人たちも魔王の仲間という事なんだろう。

 僕は大きくためいきをついてから、


「やばいよ! 魔王軍の人だよ! どうしよう、僕この世界に来たばっかりで右も左も分からないけれど、このまま殺されちゃうの!?」


 と、アルファールに泣きつく。


「アホ言うなや、こんな雑魚共、おのれがやる気だせばワンパンKOやで? ロリコンでも必死や。せやからさっさと戦えや」

「無理無理無理! 僕、喧嘩はおろか、虫を殺したこともないんだよ!? なのに、こんな大きくてぬるぬるてらてらした人たちと戦うなんて、出来るわけないでしょう!?」


 僕は身振り手振りを交えてアルファールの提案を拒絶。


「グダグダうるさいねん。おいつらはな、RPGで言えばチュートリアル戦闘で出てくる雑魚共やで?」

「タイミング的にはそうかもしれないけど~! でも、そんなわけないでしょ? 魔王直属の幹部が選んだ精鋭ポジションでしょう? 強いに決まってるじゃんか!」

「そうでもないで。ワイ、おのれの世界でいうところのスカウター的な能力をつかえるんやけどな、あいつら大したことあらへん。全員がレベル600前後。一番高い奴でも、たかがレベル718やで? おのれを倒そうと思えば、レベル700がいくら束になっても無理やって!」


 耳を引っ張った後に、アルファールが言った。

 なんとも胡散臭い話だった。


「……レベルが何なのか分からないんだけど。まぁ、その口ぶりだと戦闘力を示す指標みたいなものなのかな? そうだとすると、参考までに聞きたいけど、僕のレベルは?」

「この世界に来たばかりのおのれはレベル1や。当然やろ?」


 真顔で応えるアルファール。

 レベル差700以上。

 なんでそんな縛りプレイを強要するんですかアルファールさん変態ですかあなたは?


「戦っても勝てるはずございませんね。それでは早速逃げよっか」

「あほたれ! 自分よりも雑魚に背を向けるなんて、ワイが許さへんで! もしここで逃げるゆうなら、ワイがもう一度ぶっ殺したるわ!」

「こっわ! 僕は何よりも君から逃げるのを優先しないといけないんじゃないかな!?」

「ええい! このまま話を続けても埒があかんわ! とりあえず、ワイも一緒に戦ったるわ! ほんで、戦い方も教えたる! 万が一おのれが死んでも、ワイがまた生き返らせちゃるから! これでええやろ!?」

「……まぁ、そういうことなら、いいでしょう」

「意外とあっさりやな! 肩すかし喰らったわボケェ!」


 ……何が有ろうと僕を罵倒したがるアルファールだった。

 僕とアルファールが話している間、【幼女斗致死体】の皆さんは、にやにやと笑いながらも待っていてくれた。

 これ以上待たせるのは、彼らに対して申し訳ない。その一念でアルファールの発言に乗ることにしたのだった。


 時間はきちんと守りましょう。これ、社会人の常識。

 でも残念なことに僕は無職なうえに今は魔法少女。社会人の常識なんて関係ありませんでした!

 てへっ!





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