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第四十一話 世界の半分をやろう

「それで、こちらの相手は、貴様がしてくれる、というわけか?」


 サースの前に取り残された二人。

 メイデンとウェスは、緊張した表情を浮かべている。


「うふふ、そう恐れることは無いわ。

 妾はただ、魔王様とあの娘が話をしている間、退屈しのぎにあんたたちとちょっと遊ぶだけなんだから」


「ロリ様がいなくなった途端、その態度か。かつての【四死獣禄】最強が、情けない姿になったもんだぜ」


「あらぁ、飼い主には従順なあんたも、ご主人様がいないときには前みたいな強がりの御調子乗りに戻るわけね。情けない」


 互いに毒吐く二人の元守護者。ウェスは可憐な人間体から、獰猛な獣へと姿を変える。

 サースも、背に生やした一対の美しい翼を広げ、ウェスの敵意の篭もった視線に応じた。


「いつかお前をぶっ潰してやりたいと思っていたんだ」


「そうなの? 妾はあんたのことなんて眼中に無かったから、気付かなかったわ」


 火花を散らし合う二人の獣。一触即発の雰囲気の中、


「私を置いて盛り上がってもらっては困るな」


 メイデンが、サースに向けて剣を構えた。戦闘準備は万端だった。


「魔王様からは、あんたたちを殺すなと言われているけど……いいわ、2人纏めてかかってらっしゃい。

 妾が、殺さない程度に遊んであげるわ!」


 サースが猛禽を思わせる鋭い視線を向けながら言う。


「上等だ。ぶっ潰す!」


 勝利に植えた獣が咆哮する。


「ほざけ、以前のように地に頭を伏せさせてやる!」


 メイデンも吠える。

 こうして、戦いの火蓋は切って落とされた。


 ☆


「会いたかった? ……一体どういうこと?」


 僕は目の前の影、魔王に問いかける。


「言葉の通りだ。余は、其方に会って、話がしたかったのだ。

 それにしても……なるほど、凄まじい魔力量だ。これでは【四死獣禄】と言えども、分が悪い」


「こいつ、ワイほど正確ではあらへんけど、スカウター的なスキルを持っとるデ

 ……だからどうというわけやないけどな」


 アルファールが呆れたような声を出して僕に耳打ちする。


「……前置きは良いよ。その話っていうのは、なんなの?」


「そう逸るな、と言いたいところではあるが。

 どうやら外ではサースが残りの二人と戦い始めたようだ。

 殺すな、とは言い含めているから大丈夫だとは思うが、無事で済むとも思えん。

 故に、余も単刀直入に言おう」


「せやから前置きが長いんや。言いたいことはさっさと言いやぁ!」


 アルファールの茶々にも動じずに、魔王は言う。


「強き魔法少女よ。余の手下となれ」


 ……で、でででた~勇者に世界の半分渡すタイプの魔王~!


「断る死ねダボ!」


 アルファールが反射的に言うが、


「余は本気だ。考えてはくれないか?」


 平然と答える魔王だ。


「僕を手下にして、どうするつもりなの?

 この世界を支配する君は、僕を手下にして、何をさせようというの?」


「其方らは、勘違いをしているのであろうな。この世界は、余が支配しているのではない。

 余が、守っているのだ」


「……はい?」


「余と共に、世界を護ってくれないか?」


 そう言って、魔王はこちらに向かって、手を差し出してくる。

 でも、どうしたって。その手を握り返すことなんてできない。


「一つ聞かせて。君は、この世界でたくさんの人間が餓えて、魔人によって苦しめられている現状を。

 知っている?」


「知ってはいる。だが、余は人間の面倒までは見切れぬ。

 ……どうしてもというのならば、其方が守ればよい」


「……うん、そうだね」


「うむ、分かってくれたか」


「うん、分かったよ……やっぱり君が、斃さなくちゃいけない相手だってことをね!」


 世界を護る? 何を言っているんだこいつは!?

 僕がこれまで見てきた人間たちは、魔人たちに苦しめられてばかりでいた。

 ……蜥蜴人は例外だったけど。


 こんな平然と人を切り捨てる様な奴の手下になんて、絶対になってはいけない。


「よう言った! この調子ブッコいたアホンダラ、この世に一片の灰も残らんようにしてやりぃ!」


 僕はモーニングスターを創造し、そして魔王へと向ける。


「そううまくことは運ばぬか。だが、構わぬ。力づくで従わせるだけのこと!」





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