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第三十五話 マフィアノイス


 地に伏せたメイデンは、まず全身に走る傷の痛みに顔をしかめ、次に自らの傷の具合を確認する。

 蛇の一撃を受けた腹部だが、噛まれたわけではなく、毒の心配をする必要は無さそうだった。


 吹き飛ばされた時に全身の至るところに打撲と擦り傷を受けた。

 それ自体、命に別状はないが、身体を動かすだけで痛みを感じてしまうのも考え物だ。


 そう判断してから、彼女は立ち上がる。

 そして、第八位階の肉体強化魔法【超人化フルスペック】を発動。

 魔法陣が足元に現れ、それが頭の先まで上る。

 たちまち、負っていた傷は回復し、そして力がみなぎるのを感じた。


「ふむ、その【聖剣】は、持ち主の魔法は無効化しないのか。……実に厄介だな」


 一連の流れを見ていたノイスが言った。


「理屈は分からんが、そのようだ。

 ……それにしても、私の魔法の発動が終わるまで待っていてくれるなんて、存外優しいのだな」


「ふむ、気にするでない。格下が痛みに呻いているうちに追い打ちをかけるほど、

 吾輩は切羽詰まっているわけではないのだからな」


「……ふん。すぐに後悔させてやる」


 宣言したメイデンは、すぐに魔法を発動させる。

 空中に複数展開される魔法陣。そこから断続的に放たれる風の刃がノイスへと放たれた。

 第五位階魔法【切り裂くレイフォール】だ。


「そんなものが、吾輩に通用するとでも思うたか?」


 ノイスも魔法発動の準備を整える。背後に自らの巨躯を超える大きさの魔法陣が現れた。

 しかしそれは、防御のためのものでは無い。


 風の刃に対しては、一切の防御の姿勢を見せない。

 そのままノイスは、全ての風の刃を全身で受け止めた。

 だが、その強固な皮膚には、傷一つついていない。


「第五位階魔法程度は、防御の必要もない、という事か」


 メイデンはちっと舌打ちし、次なる魔法を発動させようと、足元に魔法陣を展開させる。

 しかし、敵はその発動までの間に、先程発動準備をさせていた魔法を打ち込んできた。

 荒野から砂鉄が巻きあがる。それらが集まり、形を成す。

 巨大な腕が、まるで意思を持っているかのように動いている。


 第八位階の金魔法【巨人の腕アームストロング】。

 それが、勢いよくメイデンに向かって振り下ろされる。


「こんなもの!」 


 メイデンは聖剣で迎撃しようとした。

 しかし、直線的だった【巨人の腕】が、瞬時に変則的な動きに変わった。

 動きをとらえきれずに、攻撃を受けて吹き飛ばされるメイデン。

 だが、その直撃の瞬間に【シャッキリ・ポン】の刀身で巨大な腕に一太刀入れて一矢報いる。


「残念だが、まだ終わりではないぞ」


 吹き飛ばされた先には、ノイスが魔斧をもって待ち構えたいた。


「私も、こんなものでは無い」


 展開していた魔法陣から、魔法を発動させる。

 柔らかな脚線美を誇るメイデンの脚。それが激しい風を纏った。


 メイデンは空中で体勢を整えてから、空中で静止・・した。

 第七位階魔法【空のエア・ブーツ】の力により、空を蹴ることが可能となったのだ。

 そのまま空を蹴ることで可能となる立体的な動きを組み合わせ、ノイスへとメイデンは迫った。


「器用な真似をしよる」


 ノイスが忌々しそうに呟いた。

 そして、背後を取ったメイデンは、そのままノイスに斬りかかった。

 第五位階魔法をも通さぬ固い皮膚よりなお硬い、背中の甲羅を【シャッキリ・ポン】が切り裂いた。


「ぐわぁ!」


 ノイスが苦痛の声を上げた。

 いける! メイデンは追撃のため、次々と剣を振っていく。

 二太刀目も甲羅を切り裂いたが、三太刀を浴びせることはできなかった。

 ノイスが魔斧を握り、剣を受けたからだ。


「なるほど、強いな」


 苦悶の表情を浮かべながら、ノイスが向かい合うメイデンに言う。


「ふん。貴様など比べ物にならぬ強者を常日頃から見ているからな」


 ノイスから振り下ろされた魔斧の一撃を躱し、メイデンは言った。

 地面に激突し、重い衝撃が響く。

 しかし、メイデンはその衝撃を受け止め、攻撃に転じる。


 ノイスは体制が崩れたままではあったものの、魔斧を盾にし、剣の一撃を受け止めた。


「まだだっ!」


 受け止められた剣だったが、メイデンはそのまま気合を込め、そして振り下ろす。


「ぐわぁぁぁ!」


 そして両断される【魔斧・ィア】。

 ノイスも無事ではなく、右腕が見事に切り落とされていた。


「【四死獣禄】と畏れられる貴様が、よもやこの程度というわけはあるまい?

  さぁ、本気を見せてみろ!」


 メイデンは剣をノイスののど元へと突きつけ、そして宣言した。


「ふん、吾輩の本気が見たい?

  なるほど、この程度の実力でいい気になってもらっては、こちらとしても困りものだ」


 だが、とノイスは続ける。


「それは無理な話だな」


 そう言って、ノイスの魔力が急激に小さくなるのを、メイデンは認識した。


「……貴様、やはり万全ではなかったというわけか」


「気付いていたか……流石とでも言っておこう」


 ノイスは自らののど元に剣を突きつける少女を見ながら、そう言った。



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