閑話3 魔法少女の異世界メシ
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僕がウェスを眺めながらニヤニヤしていると、メイデンが雑嚢の中から一欠けの干し芋を取り出し、それを口にした。
こちらの世界の保存食だそうだ。
収穫した芋を干しただけの簡単なものだが、この世界で生きる人間のほとんどは、それで飢えをしのいでいるのだという。
見た目は現代日本のサツマイモにそっくりだが、中はまるきり違う。
だって、皮だけじゃなく中まで茶色ですもん。
メイデンはいつもこの干し芋を食べているが、僕は未だ一度も食べたことがない。
ていうか、こちらの世界に来てから、飲み物を飲んだことはあっても、食べ物を食べたことは無かった。どうやら、アルファールがそういう風に、僕の身体を造ったらしい。
……憧れの異世界グルメは、夢のまた夢だなぁ。
「そういえば、ロリペディア。
私はあなたが食べ物を食べているのを見たことがないが、本当に問題は無いのか?」
僕がメイデンの干し芋を見ていることに気付いたのか。彼女はそう言って僕に問いかけた。
「そういえばロリ様が何かをお召し上がっているの。俺っちも見たことないっす」
興味深そうにウェスが言った。
なんと答えたものか、僕が言葉に詰まっていると。
「おのれらとはできがちゃうんや」
とアルファールが水を飲みながら言った。
凄いざっくりとした回答だったけど、それで伝わるわけないよなぁ。
「ああ、なるほど納得だ」
すがすがしい笑顔で答えるメイデン。
……何も納得できないよね、今の説明じゃ!?
「確かに。ロリ様くらいになると、太陽と空気と水さえあれば平気なんだろうなぁっ!」
ウェスが言う。
僕ってそんなに光合成できそうかな!?
「だが、ロリペディア。物は試しだ。良かったら少し食べてみないか?」
「ええ、でも悪いよぉ」
僕があいまいに笑って遠慮すると、
「何、私も丸ごとわたすつもりはない。ただ、一口試してみないかといっているだけだ」
そう言って、メイデンが自らの食べかけの干し芋を差し出してきた。
お腹がすいたりするわけじゃないけど、興味はあった。
一体、異世界の食べ物はどんな味がするのだろうか、と。
……水も飲めるんだし、食べ物を食べられないわけではないだろう。
もしそうなら、流石にアルファールが止めているはずだし。
よし、それならお言葉に甘えさせていただくとしよう!
「それじゃ、ちょっとだけもらうね」
僕の言葉に、
「ああ、よろしく頼む」
と、メイデンが恍惚とした表情で答えた。
……その表情おかしくない? とは思うものの、あまり気にせずに差し出された干し芋を一口頂く。
固そうな見た目だったが、苦労することなく嚙み切ることができた。
口内に含んだそれを咀嚼し、僕は驚愕する。
驚いたのは、その甘さだ。
上質なはちみつのような、品のある甘さ。
一切のくどさがない甘みは、きっとこの芋が持つ本来のものなのだろう。
唾液とまじりあったそれは、噛めば噛む程甘みが際立つ。僕は名残惜しみながら、それを飲み込んだ。
……美味しい。
なんかイメージと違ったけど、これが僕の夢見た異世界グルメなんだよ。
「これ、すごくおいしいね」
僕がメイデンに言うと、
「そうか、気に入ったか。それなら、これから食事の時は、一口、二口食べると良い」
恍惚とした表情でメイデンは答えた。
……いや、だからその表情おかしくない? とは思うものの、素直に嬉しい申し出だった。
この干し芋を食べられるなら、肉ミンチの山を築くだけの日々を過ごしたかいがあったというものだ。
食の楽しみを思い出させてくれたメイデンにお礼を言おう。そう思い、彼女へと目を向ける。
「メイデン、ありが……え?」
僕は言葉に詰まる。
メイデンが、干し芋の僕が齧った部分を嬉々とした様子で……ていうかアヘ顔でしゃぶりまくっていたからだ。
うわぁ……、何なのこいつ? 僕はひどく冷めた目でメイデンを見た。
「異世界グルメはもうこりごりだよ」
とほほ……、と呟く僕を、ウェスとアルファールはキョトンとした顔で見つめてくるのでした。




