閑話2 四死獣禄(かわいい)
「どうしたんすか、ロリ様? 疲れたんすか? 俺っちがお飲み物でも用意しましょうか?」
ウェスが可愛い笑顔で僕に尋ねかける。……ちなみに、ロリ様とは僕のことだった。
もう一つついでに、彼の一人称が〈俺様〉から俺っちに変わっているのは、アルファールが偉そうでムカつくから変えろ、といったからだった。
最初は渋っていたのに、今となってはもうノリノリである。
「あ、そうじゃなく……」
僕が断りを入れようとしたところ、
「了解っす、第八階位の水魔法をいますぐ発動させるんで、ちょっとだけ待っててください!」
そして展開される魔法陣。……全然話聞かないよこの人は!?
と嘆いていると、メイデンがその魔法陣を【シャッキリ・ポン】で両断した。
「ああ! 何しやがるてめぇ!」
ウェスがメイデンに対して声を荒げる。僕以外に対しては、未だに強気でいる。
「第八位階の魔法を発動させたら、私たちまで巻き込むことになるだろう?
ただ、確かにそろそろ休憩はしたい。せめて第一位階の魔法に留めておいてはくれないか?」
メイデンの方はというと、落ち着いていた。
魔人に対して悪感情を抱いているかもしれない、とは思っていたが、ウェスに対してあからさまに敵意を向けたりはしていない。
「……むぅ、それもそうだな。ロリ様、ここらで一回休憩をしませんか?」
ウェスの言葉に僕は残りの二人を見る。
メイデンは力なく頷き、アルファールは虚ろな目をここではないどこかへ向けている。
……アルファール、不死のくせに体力はないんだよなぁ……。
「そうだね、そろそろ休憩しようか」
「了解っす! それじゃ……」
そう言って、ウェスが魔法を発動させる。もちろん、今度はメイデンも邪魔をしない。
大地が動く。
そして、僕たちの目の前に日差しを避けるためのパラソルのような簡単な建造物と、四人分の椅子が、土くれから作られた。
ウェスの土魔法によって現れた、ちょっとした休憩所。
そして次に、周囲が氷の壁に覆われた。今度は水魔法だ。
周囲の氷が、気温を急激に下げていく。魔法によって生み出された冷房に、僕は感激する。
最後に。
ウェスはメイデンが用意した人数分の木製のカップの中に低位の水魔法で想像した水を注いでいった。
「どうぞ、飲んでくださいっス。おかわりはいつでも用意できるっスから!」
ニコニコ可愛らしい笑顔でウェスは言った。僕は、
「ありがとう」
とお礼を言って、水に口を付ける。良く冷えた水で、体中に染みわたっていくようだった。
うん。美味しい。
そして、僕は思う。
ウェスってばめちゃくちゃ有能じゃん! と。
ウェスは火、水、木、金、土、風、雷の基本属性の魔法を全て第8位階まで使える。
そのため、こういう旅の状況では本当に便利だった。
僕は魔法が使えないし、メイデンは強化魔法と風魔法しか使えない。
アルファールはよく分からないけど、今のところ使ったのを見たことがないから、役立たずに変わりはない。
本当、ゴミみたいなやつだ。
正直戦闘よりもこういったサポートをしてくれる方が僕はありがたいと思う。
あとは移動の足さえどうにかなればいいのだけれど。
……ウェスの魔人時なら、背中にのせてもらえるかもしれないけど、流石にそれは可哀想だなと思って、やめている。
それでも、十二分に助けられている。
ウェスを仲間にして、本当に良かった。
「ウェス。お水美味しいよ。助かる」
僕が優雅に冷えた水を飲みながらそういうと、
「もったいなきお言葉!」
そう言って勢いよく頭を下げるウェス。
耳が期限良さそうにぴょこぴょこ動いていてラブリーだった。
そんな可愛らしい仕草に、不意に頬が緩む。
……これで、本当に女の子だったら。
もう取り返しがつかなかっただろうなぁ、と僕はしみじみ思うのだった。




