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第二十七話 【最弱】


「ぐぎゃあっ!」


 隣から叫び声が聞こえた。アルファールの声だ。


「ぐはははは! まずは一人だ! 貴様の仲間、殺してやったぞ!」


 背後から牙を血に染めたウェスが、楽しげに笑いながら言っていた。


「うわぁ、えっぐいなぁ」


 腹を真横一文字に掻っ捌かれたアルファールを見ながら、僕は呟く。

 獣モードの時にはそこまで思わなかったけど、小さい子の姿で内臓を出してるのは、見ていられないんだよなぁ。


「おのれはまた自分のことを棚上げにして。

 ちょっと前までは、おのれが一番ワイをえぐいビジュアルにしとったことを忘れるなよ!?」


 内臓をあるべき場所に収めつつ、アルファールは言う。

 そして、手をどかせばその傷は跡形もなく治っていた。

 呪いを受けて人の姿から獣状態になれないでいるとはいえ、不死性は健在だった。


「ええ!? お前、もしかして不死なのか!? なんて厄介な奴等だ……ならばっ!」


 ちょっとだけ動揺したウェスは、そう言ってまた姿を消した。

 ……この僕でもその移動をしっかりと目で追えない、というのは、確かに【四死獣禄】最速と言うだけあるなぁ、と思いました。


 だけど、全く見えないというわけじゃない。

 こちらに高速で向かってくるウェスに向かって、武器を構えて待ち構えていると、彼は僕の横を通り抜けていった。


「え!?」


「お前は最後だ、オチビ! まずは、てめぇからだ!」


 そう言って、ウェスはメイデンへと自らの鋭い爪を繰り出した。

 メイデンに、ウェスの動きは目で追えるわけがない。

 それに、彼女にはアルファールのような不死性もない。

 ……もろに攻撃を喰らってしまえば、一貫の終わりだ。


「危ない!」


 僕は言うが、それで間に合う道理もない。


 ウェスとメイデンが交差した。僕は、その意味が、理解できなかった。


「な、なぜだ……」


「なんのことだ?」


 驚愕するウェスに、メイデンが涼しげな表情で言う。


「なぜ、俺様の速度を見切れないてめぇが、俺様・・に一太刀浴びせることができるんだよ!?」


 ウェスは自らの斬りつけられた腕を抑えながら、叫ぶ。

 そう、僕が全く予想できなかった結果だ。

 メイデンは無傷のまま【シャッキリ・ポン】を手にしながらその場に佇み、ウェスは悔しげに叫んでいるのだ。


「何、簡単なことだ。貴様の動きは直線的すぎる。

 例えどれほどの速度だろうと、こちらに向かってくる場所とタイミングが分かっていれば、

 反撃することなど造作もない」


「んな……口で言うのは、確かに容易いが、お前はそんなことを平然とやってのけたというのかぁ!?」


 僕も驚きを隠せない。だけど、そうか。これが、メイデン。

 これが聖剣に選ばれた、勇者なのか。


「貴様は言ったな、【四死獣禄】最速だと。

 だが、貴様の技量はこれまで相対したイースよりも、サースよりも。遥かに劣る。

 ……最速ではなく、〈最弱〉の間違いではないのか?」


 挑発的に言葉を紡ぐメイデン。

 彼女の言葉はとても力強く。


 そして血に濡れた彼女の姿は、とても美しかった。


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