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第二十二話 僕たちの戦いこれからだ!

「……魔王を倒すのは、無理だぞ」


 僕をぎゅっと抱きしめながら、メイデンが呆けた表情で言う。


「何言うとんねんおのれは。自分が魔王を倒す言うてたやんけ、痴呆でも入っとんのか?」


 ごもっともなつっこみをアルファールは入れた。

 確かに、なんで魔王を倒すのは無理なんて言ったんだろう?


「ああ、すまない。説明不足だったな。

 順序を踏まなければ、魔王の元に辿り着けない、というのが正確だ」


「それって、どういうことなの?」


 メイデンは、何故か一度僕の耳に吐息を吹いてから答えた。

 ……ごめんその行動ちょっと意味が分からない。


「魔王はこの大陸の中央の城にいる。それはこの大陸にいる者ならば、皆知っていることだな。

 だが、魔王の城が強力な結界に覆われているのは知られていない。

 ……近づこうとする者は、ほとんどいないのだから当然か」


 メイデンの言葉に、


「いや、ほんならなんでおのれがその結界のことを知っとるねん。おかしいやろが」


 とアルファールが憤った。確かに、それは謎だ。


「私もさっき知ったところだ。

 魔王城への最短ルートをごうも……質問したら、答えてくれたんだ。

 確か、コーボキンとかいうやつだったかな」


「あいつ、魔王さま万歳! とか言ってたくせに拷問に口を割るようなへたれやったんかい……」


 しょうもな、とアルファールは可愛らしい顔を顰めて唾を吐き捨てた。最悪の態度だ。

 そしてその吐き捨てた唾を輝かせた目で見ているメイデンも、勿論最悪だった。


「じゃ、じゃあさ! どうやったら魔王の城まで行けるのか、分かる?」


 僕の問い掛けに、地面に吐き捨てられた唾から視線を逸らして、


「ああ、勿論だ。

 この大陸の東西南北の要所を治めている魔王の配下であり、

 各地域の守護者である【四死獣禄ししじゅうろく】のすべてを倒すことで、

 その結界を打ち破ることができるという」


「ししじゅうろく? ……それって四人なの? それとも十六人なの?」


「元々は四人だ。しかし、東の守護者であるイースを討取った今は、三人だ」


「なるほどのう……ま、こっちのロリがおれば、その結界言うん一撃でぶっ壊せるから関係あらへんがな」


 アルファールの腑抜けた言葉に、メイデンが静かに首を振った。


「魔王城に張られた結界は、全ての魔力による攻撃を無効にし、魔王自身が許可した者以外を拒絶するのだという。いくらロリペディアが優れた魔法使いと言っても、その結界を破るのは難しいだろう」


「なるほど。つまり魔王は堂の入った引きこもりっちゅう訳や」


「魔王の威厳、なさすぎ……!?」


 僕は驚愕する。


「ところで、その情報もやっぱり拷問で手に入れたんだよね?」


「そう、私のごうも……ではなく、質問で入手した情報だ」


「言い直す必要ないよ、僕もアルファールも、メイデンのシリアルキラーっぷりは知っているんだからさ」


 散らばった魔人・亜人・獣人の肉片を思い出しつつ、僕は言う。

 ……ていうか、そうだとしてもコーボキンさん情けなさすぎませんかねぇ……。


「おのれがそれ言うか……一番頭狂ってるくせに」


「何かいった?」


「モガモガモガモガァッ!」


「あはは、何言ってるか分からないや」


 僕がアルファールの口をふさいでいると、楽しそうにモゴモゴ言っていた。愉快な奴だなぁ。


「……さて、というわけで提案だ。私たちが次に向かう場所を考えよう」


 メイデンが俺を離し、地面に何やら図を書き始めた。


「私たちが今いるのはここ、【冷血】のイースが統治していた東の領土だ」


 大きく円を描き、その内側の右に円を1つ描く。


「ここが現在地。

 そして、中央の魔王城に直接言っても、無意味。結界があるから、通ることなんてできない」


 そう言って、真ん中に大きな四角形を描いた。


「考えられるのは、二つ。南か北に行って、そこで守護者を倒す」


 東の円から左右に矢印を伸ばし、その先にそれぞれ一つずつ円を書き加えた。

「南の守護者は【不死】のノイス。その名の通り、不死の呪いを身に宿している。

 この場所は険しい山に囲まれており、攻めるのもなかなか難しいかもしれない」


 真ん中下の円を囲むように、ぎざぎざの線を引いていくメイデン。


「そして、北を守護するのは【不動】のサース。

 周囲が海の砦を攻め落とすのは、やはり困難だろう」


 今度は、真ん中上の円の内側を、中心を除いて斜線を引いていった。


「そして、最後に。西の守護者【疾風】のウェス。

 深い森の中で活動しているようだが、北と南に比べれば攻略の難易度は落ちる、らしい」


 真ん中左の円を描いて、メイデンは手を止める。

 そして、地面から僕たちに視線を移して、問いかける。


「さて、もう一度質問だ。一体、どこから攻め落とそうか」


 その眼は真剣そのものだった。メイデンは本気で魔王たちを潰そうと考えている。

 それが、彼女の表情から見て取れた。


 が、


「ひとつ質問」


 話し終えたメイデンに僕は抱いた疑問を投げかける。


「どうぞ」


「これ、全部コーボキンから手に入れた情報だよね?」


「そうだが、それがどうしたというのだ?」


「さすがに、しゃべりすぎだよ。……罠、というのを考えたほうがいいんじゃないかな?」


 どう考えても、手取り足取り実情を教えすぎているように感じた。これが全て本当の情報だなんて。

 どんなヘタレでも、一矢報いようと嘘の情報を掴ませても不思議ではないだろう。


「あの状態で嘘を吐く余裕があったら、大したものだと思うがな」


 とさらっと恐ろしいことを言った。……僕は、それを聞かなかったとこにして。


「……それじゃ、とりあえずは南に行ってみようか」


 僕はアルファールとメイデンに告げる。


「その心は?」


「どっちでも良いんだけどね。本当、適当に選んだだけだよ」


 僕が言うと、


「それでええがな。

 右でも左でも、その四死獣禄とやらの皆様に待ち受けるのは、

 ぼろ雑巾になるか肉ミンチになるかの二択しかないわけやからな」


 とアルファールが僕の意見を押してくれた。理由が物騒だった。


「私も、異存はない。

 一刻も早く、この世界を覆う闇を、この聖剣【シャッキリ・ポン】で払う。私の役目は、それだけだ」


 メイデンが聖剣を手に、覚悟を決めた表情で呟いた。


「よし、行き先は決まった。それじゃ、行こう!」


 僕は立ち上がり。二人に向かって言う。


「粋がんな、ダボが。ワイに命令なんざ、一万年と二千年は早いねん」


 僕に続いて立ち上がったアルファールが、こちらの足元にペッ、と唾を吐き捨てた。

 ……もうやだ、何この関西弁本当にガラが悪すぎるんですけど。


「ああ、私はともに戦うぞ、ロリペディア!」

 そう言って立ち上がったメイデンは、僕のお尻と太ももを撫でまわして恍惚とした表情を浮かべている。……もうやだ、なにこの痴女!? 

 本当になんであと3年幼くなかったの!?


「……い、行こう! 僕たちの戦いはまだこれからなんだから!」


 そう言って、僕は歩きはじめる。

 そう、僕たちの戦いは、まだまだこれからだ!


 ……本当にまだまだこれからなのが辛かった。

 早く魔王を倒して、この訳の分からない旅から解放されたい。


 ……僕はそう願うのでした。

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