二十一話 ロリペディア
「私のことは良い。今度は、君たちのことを聞かせてくれ」
なんて何でもない風に言うけれど、まだまだツッコみどころはおおい。
女神にえらばれた、とか。一体どういうことなのだろう、異世界の中二病患者なのだろうか?
「僕は
「こいつはロリペディア。ワイはアルファール。魔王を部ぶっ殺すために、ここにいる」
よろしくね」
「って、なに被せてんの!?」
ていうかロリペディア!? そんな常日頃から募金を募ってそうな名前じゃないんですけど僕は!?
「よろしく、ロリペディア、アルファール」
僕が否定する前に、メイデンは僕をロリぺディアと呼び、何事もなく握手を求めてきた。
何事にも動じない強いハートを持っているらしい。
「それで、君たちは魔王と戦っている、という事なのか?」
「まあ、戦うというよりも、駆除言うた方が近いな。ワイらとあの糞畜生では、戦いにすらならんわ」
「戦うのは僕だけだよね……」
ジトッ、とした視線を、僕はアルファールに向けた。
「凄い自信だ。
……しかし、先程の戦いを見させてもらった身からすれば、それが虚言や妄言の類でないことは分かる。
……ゆえに、頼みがある」
真面目な表情で言うメイデン。
僕は何事か予想もできず、ポカンと呆けながら、
「頼み、って何かな?」
と、問いかける
「君たちは、これからも、魔王と戦うために旅をつづけるのだろう?
ならば、私も一緒に連れて行ってくれ」
その言葉は、思いもよらない一言だった。
「ああ、おのれは魔王を倒すことを天使に定められたとか言うてたもんな」
……そういえばさっきそう言ってたね。
普通に予想できる一言だったことに、聡明な僕はすぐさま気付いた。
「いやいや、魔王と戦うって、これから今日よりももっと厳しい戦いが待っているってことだよ?
そんな危ないことしてないでさ、故郷に帰ったらどうだい?」
「帰る故郷など、私にはない」
凛とした表情で、メイデンは言う。
帰る故郷がない。
そして、魔王を倒すという、その意気込み。
……つまりは、彼女の故郷は、魔王に滅ぼされた、そう考えてよいのだろう。
僕は、自らの浅慮に後悔した。
「……なんか、ごめんね」
「何を謝る必要がある?」
「……えっ?」
僕の謝罪に、メイデンは首を傾げる。
「私の村には、古い言い伝えがあるのだ。曰く
『神器しゃっきりポンを引き抜いたものは、この世にあらわれた絶望を切り払う、強大な剣となるだろう』 というものだ。故に、私は村人たちから見送られ、魔王討伐のために村を去ったのだ」
シャッキリ・ポンのせいで、かっこいい伝説が台無しだなぁ……なんて、僕は思う。
だけどよかった、村が滅ぼされたりとかはしなかったんだね。
……あと、もう一つ。
「ていうか、女神にどうのこうのとか言われて魔王討伐したんじゃないの?」
「しゃっきりポンを引き抜く前夜。私の夢の中に女神様が現れ、告げたのだ。
「剣を携え、魔王を討ちなさい」と。私は、そうして女神様に選ばれたのだ」
「へー、そうだったんだ」
僕はそう言ったんだけど。
あれだ、もうなんも言えねぇ。
「なんや。つまりは中二病の自分は体よく口減らしされたっていうわけやな」
アルファールは言った。僕もそう思ったけど、言わぬが花じゃないのかな。
「中二病? はよく分からないが、うむ。
今のところは、そう思われても仕方ない、か。
だが、私は現にイースの手下どもをしゃっきりポンでバッタバッタと切り倒したのだから。
妄言と切って捨てられるわけにはいかぬだろう」
そういえばそうだった。
メイデンはイース自身には引けをとっていたが、イース軍の人達を挽肉に変えていたのだった。
……そう考えれば、普通に危険人物だった。そんな人物と行動を共にするなんてのは、正直ごめんだなぁ……
「ほんなら、自分も来るか。足手まといはごめんやが、雑魚狩りくらいにはつかえそうやしな」
僕の想いとは裏腹に、アルファールは気軽に言った
「ちょ、い、いいの? そんな適当に決めちゃって」
「良いも悪いもあるか。魔王の糞ボケを言わすために、取るに足らない人間のメスを利用する。
それだけや」
「……君の方がよっぽど魔王みたいなことを言ってるよ」
僕の呟きは、アルファールの耳には入っていないようだった。
メイデンは僕の肩を叩く。
僕が彼女へ振り向くと、
「ええっ!?」
僕の体をきつく抱きしめ、
「これからよろしく頼むぞ、ロリペディア!」
と、僕をちゅっちゅしてきた。
……ちょっと僕には刺激強いんだけど、何かが足りてない、っていうか、足り過ぎているせいか、興奮とかはしないし。
うん、別にロリコンとかじゃないんだけど。
紳士な僕には、メイデンの年齢は足り過ぎてるんだよなぁ。
「それじゃ、これからどうしよっか。……もう、魔王を倒しに行っちゃう?」
「せやな、そうしよう」
僕はメイデンにちゅっちゅされながら、アルファールと頷き合うのだった。




