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第二話 夢のなかであったような……ていうかこれ夢だよね?

「……あれ?」


 気が付いたら、僕は一切の光の届かない真っ暗な部屋の中にいた。

 ここはどこだろう? と周囲を見渡すも、何処までも続く闇のため判断できない。

 それどころか、今自分がどのような状態にあるのかも分からない。

 座っているか、立っているかもわからないこの状況に、不安が胸中で蠢く。


 いつの間にかおかれてしまった現状に、すっかり酔いも醒めていた。

 一体どうしてこうなってしまったのか?

 僕がこの原因を思いおこすと、真っ先に思い浮かんだ「モノ」それは……。


「いや~、助かったで、ホンマ! おおきに!」

 暗闇の中、突如現れた光。

 その光は徐々に形を成していき、そして四足歩行の小動物、イタチのような、可愛らしい見た目をしたサムシングへと変質していった。


 この闇の中で唯一視認できる存在、それが目の前に存在する訳の分からないイタチモドキは、その小さな口を開いて、似非関西弁を用いて僕に感謝の言葉を口にした。


「……何がどうなって感謝の言葉なのかは分からないけど。もしかして、君が僕をここに連れてきたの?」

 この場で抱く疑問は、数多くあった。

 しかし、僕が口にした質問は、まずそれだった。


「せやで! 自分に頼みごとがあって、ここまできてもろたんや!」

 あざといくらい可愛らしく首を傾げ乍ら、イタチモドキは言った。

 でも、似非関西弁のウザったさのせいでその可愛らしさは大きく損なわれていた。


 今の解答を受けても、なぜここに連れてこられたのか、そしてなにより、ここがどこかは判明していない。

 なので、そこら辺の説明もお願いしてみることにしよう。


「その頼み事ってのが、僕をここに連れてきた理由……なのかな? とりあえず、ここがどこかっていうのと、頼み事っていうのを、順番を追って説明してほしいな」


 僕が言うと、イタチモドキは大袈裟にため息を吐いてから、


「ああん? うっとしいな、なんでもええやろ、そんなもん……と言いたいところだけど、しゃあない、こっちは頼みごとをする立場なんやから、答えたるわ」


 言ってんじゃんか!

 と、心中でツッコんでから、この横柄な腹立たしいイタチモドキの言葉に耳を傾けることにする。


「ええか、ここはな、肉体から解放された魂、或いは精神が集まる場所、の一室や。ま、おのれ等には、〈あの世〉っていう風に説明した方が分かりやすいかもしれへんな」


 説明はまだ最後まで終わっていない、それを分かっていながらも、僕はイタチモドキが言った言葉に聞き捨てならない部分が有り、思わず話の腰を折る。


「ちょっと待ってよ! あの世って、僕死んじゃったってことなの!?」

「死んだで。ていうかワイが直々にぶっ殺したったで。ほんで? 30歳無職童貞の夢なし希望なし職なしついでに彼女もなしのおのれに、死んで不都合が何かあるんか!?」


 しれっとした表情で応えるイタチモドキ。

 ……こんなものに殺されてしまったのか、僕は?

 いや、そんなわけないだろう、僕は酔っぱらって、そして気付かないままに眠りに落ちて、今は夢を見てしまっているんだな。

 なるほど、そう考えればさっきまでと現状のおかしなことも、夢だという事ならば不思議なことなど何もない。

 明晰夢、というやつか。

 僕はこれまでこんな夢を見たこと、ほとんどなかったけど。


「ここが僕の夢のなかなら、君は僕の深層心理とか、なんかなのかな? ……はは、そんな君に、死んで不都合はないと言われたら、ちょっとどころじゃなく虚しくなっちゃうなぁ。でも、死んで不都合なんて、あるに決まってるよ!」

 僕は気をしっかり保つために、大声で応える。


「夢やないで、ここは。……ゆーてもまぁ、信じられんだろうなぁ。ま、今はそう勘違いしてくれとった方が、話が早いか」

「夢と気付いたうえでこんな問答、気が引けるけど……それこそ、文字通り『やり残したこと』があるんだよ!」

「何言うとんねん、自分……ていうか、下ネタかいな。しょーもな」


 イタチモドキが辛辣に吐き捨てた。

 ……僕の深層心理ガラ悪いなぁ。


「……夢ならそろそろ醒めたいな。夢なのに、なーんもいいことおこらないし」

「せやな、そろそろ目覚めの時やな。っと、その前に。ワイの頼み事を言うとかんとな」

「一応、夢とはいえツッコんどくよ。殺しておいて頼み事? それって脅迫の類じゃないのかな?」

「グダグダうっさい。死よりも恐ろしい目みたいんか、おのれは!?」


 ……ガラが悪いどころではなかった。とんだやくざもんだった。


 ホントそろそろ目が覚めないかな、と切に僕は願うのでした。



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