第十四話 グルメ物でもないのに散見される肉ミンチに感謝
一層にいた魔人は、全て細切れの肉ミンチへと変貌していた。
僕は、肉ミンチとなったアルファールを抱え、その事実に驚愕していた。
「何を驚いてんねん、おのれは!?
ワイが驚きたいわ、このシリアルキラーめ!
いい加減、腹立たしい時にワイに八つ当たりをするのやめぇや!」
「そんなことより、このフロアにいた魔人を全て自称勇者が殺したというのなら、驚くべきことだよね。
一体、彼女はどんな人なんだ……?」
「なんやねんこいつ……ワイの話を聞いてへんやんけ」
一人で驚愕するアルファールをほっといて、僕はそのまま下層である地下一層へと降りる。
地下一層も、地上一層と変わらない。
道を進んでいくと、やはり数多の魔人・獣人・亜人の死体が転がっていた。
「いやいや、何も感じないとしてもやな、魔人の死体をふんずけながら歩を進めるのはどうかと思うで」
アルファールが何かを言っていたが……それどころじゃなかった。
何故なら、僕の目にはまだ動いている肉塊……じゃなくて、生き残った魔人の姿が見えていたからだ。
僕は急いでそいつの元に駆け寄った。
「ね、ねぇ? 大丈夫?」
僕の言葉に、その獣人は口を開いた。
「ぐ、くぅぅ? なぜ、ここに人間の子供がいるのだ?
……いや、そんなことはどうでも良い。
【天雷のコーボキン】と呼ばれたこのわしが、たかが人間の小娘に後れを取るなど……不覚」
「なんや、こいつがコーボキン言うんか。
右腕をここまでぼこぼこにできるんなら、ここにいるその勇者もどきのイカレポンチに【冷血】のイースも任せて問題なさそうやな」
楽しそうに呟くアルファールに、コーボキンと自らを称した獣人は言う。
「……ふん、貴様ら。あの女の仲間か。……【イース様】は我とは比較にならん強さの持ち主。
せいぜい、骨でも拾ってかえれたら、よいな……」
そう呟いた後、
「ああ、イース様。ふがいなき配下で、申し訳ありませぬ。
我は一足先に、あの世で魔王様方のますますのご健勝をお祈りしておりますぞ」
そう言い残し、彼は死んだ。
「なんや、こいつもくたばったやないか。つまらんのう。
ワイら、ただ単に探検に来ただけみたいになってるやないか。
さっさとそのイースもぶっ殺して、次のとこいこうや」
アルファールの言葉に、僕は頷く。
……こんなやり方、あまりにも危険だ。
何だかよく分からない存在に強化された僕ならともかく、人間(多分?)である一人の女性がこんな魔人側に喧嘩を売るような戦い方をしていれば……どのような末路をたどるか、想像に難くない。
どうにか最悪のケースを防ぐために、僕は早く彼女と会って、引き留めなければならない。
……そして、僕も自分の力をコントロールできるようにならなければ!
きっと、彼女は今、最下層でイースと戦っているだろう。
ならば、僕も一刻も早く、彼女の元へと行かぬば!
「いこう、アルファール! こんなやり方、僕は認められない!」
「なんやねん急にやる気だして。きっしょいなぁ、おのれは」
「……あの、やる気をそぐような発言は控えてね、アルファールさん」
僕は少しだけ重くなった足取りで、イースと女勇者がいるであろう最下層へと向かった。




