表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/61

第十二話 長老の憂鬱

 広まる畑の横にあるテントの中で、僕はこの村の長と話しをすることになった。

 長というからよぼよぼの老人をイメージしていたのだが、そんなことはなかった。

 まだ30程度の男性(生前の僕と、きっと同年代だ)で、太くはないが引き締まった筋肉に身を纏っていた。


「……君が、娘たちをここまで連れてきてくれたんだね。まずは、お礼を言おう」


 そう言って、村長は頭を下げる。


「そんな。頭を上げてください。……その、話があるとは言いましたが、まずはこちらから、いくつか質問をさせていただきたいのですが」


 僕の言葉に、村長はいぶかしげな表情を見せる


「質問? ……答えられることなら、答えましょう」


 だが、それでも質問に答えてはくれるようだ。


「この村と、蜥蜴人。一体どういう関係なんですか?」

「……この村は、あの方たちの助けがあって、存在出来ているんですよ」


 僕は、村長の言葉の意味が、イマイチ分からなかった。


「……それって、小さな女の子を蜥蜴人に差し出すことを条件に、助けられていた、ってことですか?」


 僕の言葉を聞いた村長は、どこか不愉快そうに眉を吊り上げ、そして答えた。


「……間違ってはいない。だが、それでも彼らは娘たちを大切にしてくれていた。乱暴をすることは無く、乱雑に扱ったりはしなかった。それどころか、一人一人を大切にしてくれて、月に一度は私たちの元に合わせに来てくれていた。……その時には、手土産と言って貴重な肉や、香辛料を持ってきてくれたりした」


 興奮した村長の弁は止まらない。


「それだけじゃない! 彼らは、私たちの村に魔物が寄ってこないように周辺を警備してくれたり、今の時代では貴重である枯れていない土地と、井戸をあてがってくれた。……餓えることなく、そして魔獣や魔物、他の魔人の脅威に怯えることなく生きることができるなんて……普通はあり得ないんだ!」


 村長は頭を抱える。


「一体、彼らがいなくなった今……誰が俺たちを守ってくれるというんだ」


 崩れ落ちる村長。

 僕は、彼を見て、複雑な気持ちになる。


 一時の感情に身を任せ、蜥蜴人を倒してしまったのは、間違いではなかったのだろうか?

 彼らは、生きるために互いに身を寄せ合っていたのだ。

 それを、僕が壊してしまった。


 ……だけど、それが理想であると言えるのだろうか?

 そもそも、こんな世界でなければ、村でみんなで一緒に暮らせていたのでは……なんて、仕方のないことが頭によぎった。


「幼女を産んで、ある程度育てれば守ってあげて、餌もくれる。おのれの生まれ育った国でいうところの、家畜と、なんら変わりないやんけ。……まぁ、力のない人間には、この世界はあまりにも厳しいんでな、同情はするが。だからと言って助けたいとは思わんな」


 考える僕の耳に、アルファールの声が耳に届いた。


「え!? 君は、この世界に僕を連れてきたのは、人間を魔王から救うためでしょ!?」

「ちゃうわ。ワイは、息がっとる魔王にプギャー言わすためにここに来ただけであって、人間を助けにここにきたわけやないんやで」


 僕は、アルファールの言葉に声を詰まらせる。


 でも、そうだ。

 魔王を倒せば、この世界も変わるかもしれない。……そう思った。


 僕は村長を見る。どうやら、絶望に沈んで僕たちの会話は耳に入っていなかったようだが、こちらと目が合うと、捲し立てるように問いかけてきた。


「君は! 知っているのか!? 蜥蜴人達を殺した、犯人をぉ!」


 とてつもない迫力で、ちびりそうになりました。

 ……知っているけど、答えられない。

 僕です、なんて言った日には、何と言われることやら。


「すみません、それは、わかりません」


 僕が言うと、村長は一瞬がっかりとした様子を見せたが、すぐに表情を変えた。


「あいつだ……!! あいつに違いない!!」

「あいつ? って、誰ですか?」


 興奮する村長に、僕は問いかける。


「ああ、君がここにくる前に、一人の女がこの村に来たんだ」

「女? 一体、どんな女だったんですか?」


 僕の質問に、村長の表情が憎しみの色濃く奈多。


「頭のおかしな女だった。なにやら立派な剣を腰に帯びた女だった。奴はこの村によって、1つだけ問いかけたんだ」

「問い掛け、って、何をしたんですか?」

「ここら一帯を取り仕切っている、東の守護者【冷血】のイースの居場所がどこかを、訪ねてきたのだ」


 その名前は聞き覚えがある。蜥蜴人たちの上位の存在、魔王軍の幹部である魔人、だったはずだ。


「『奴を殺すのは自分と、手にした聖剣だ』と言って聞かなかった。人間に勝てるわけがないからやめておけ、と言っても、『女神の信託に選ばれた自分に、斬れぬ道理はない』といって聞かなかったからそのままいかせたのだが。……なるほど、奴は既に蜥蜴人達を殺していたのか……くそったれぇぇい!」


 なぜだか、僕の罪が見知らぬ女性になすりつけられたようです。


「きっとその人です!」


 だから僕は全力で乗っかることにしました。


「マジで屑やんけ…死ね。氏ねじゃなくて死ね」


 アルファールは呆れたように呟いた。


「あの、村長。僕達にも教えてください、その東のイーストの場所を!」

「【冷血】のイース、な」


 アルファールが要らぬ突っ込みを入れる。

 僕が虫も殺せない気弱な童貞じゃなかったら、きっと殺しているんだろうな、と思うほどうっとおしい奴だなぁ。


「……なぜ、そんなことを聞く。君のような小さな女の子には、何もできないよ」


 暗い表情でいう村長。


「僕にはできないかもしれない。だけど、このアルファールは、大きな力を秘めた聖獣なんです。だから、その女を連れ戻すくらいは……出来るかもしれない」


 すんごいテキトーな嘘をついてみた。


「……聖獣、か。言われて見れば、そこはかとなく神聖な感じをうけなくもない」


 こいつ、バカか!? みたいな目でアルファールが村長を見ていたけど……うーん、確実に馬鹿ですねぇ。


「分かった。君に【冷血】のイースの根城を教えよう。そして、女を連れ帰ってきてくれ、恨み言は腐るほどあるのだから! ……だが、無茶はするな。その聖獣の手に負えない相手を見つけたら……それこそ、【冷血】のイースを目の前にしたら、すぐにこの村に戻ってくるんだ。そして、この村を外敵から守ってくれ。ほんと、お願いします!」


 メチャクチャ哀れな男が目の前にいた。

 他力本願もここまでくると驚きが隠せない、が。


 こんな世界なら、そうなってしまうのも仕方ないのかもしれない。

 だから、僕は一言告げる。


「大丈夫です。任せてください」


 ……何が大丈夫か、自分でも分からないのだが、いきおいで言ってみた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バナー画像
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ