第6章 智慧
「まるで夢のようだ」
自身の社が在るにもかかわらず、神々は庭の社に憧れた。神々を更に引き付けたのは、庭で味わう感覚の話だった。
「花の香とは。それほど良いものなのか」
「その鳥の綺麗な鳴き声とは一体どの様なものなのだ」
「水という掴めない不思議の手触りとは」
「庭から眺める我々の星は、また違って見えるのだろうか」
ひとたび語りだせばきりがなかった。庭にある多くのものが、自身の星では体験できない、味わえないものであり、眺めているだけでは想像もつかない魅力だった。
「嗚呼。それが一体どんなものなのか」
焦がれるほどその思いは強くなった。次第に神々はこう思うようになる。
「一度でも行ってみたい」
「若しも夢が叶うなら」
「己の社を離れ、庭の星へ」
一度でも行ってみたい。しかし星という社に縛られた神の身では、そのような夢を語り合うことしかできなかった。
「嗚呼。庭の神よ。私はそなたの願いが羨ましい」
そんな夢物語が庭の神の周りで延々と続いた。庭の神は羨望されることを嬉しく思った。だが、嬉しくは思うが、満足はしなかった。庭の神は。
「私は。己の庭の全てを神々に知ってもらいたい。だがその全ては、星から眺められているだけでは叶わない。この庭の神たる我が望み。我が望みは神々の望み。この望みを叶えるすべはないものか」
などと神が神様に、神々の望みを叶えんとし始め。しばらくの後に。
「神々よ。夢は叶えることが出来る。我々神に。神の力に限りは無いのだ」
その器量故に、庭の神はそのすべを見出した。
「知恵を授けよう」
神々が望んだ、夢が叶う時が来た。




