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極超合金・Hyper Alloy   作者: 南雲一季
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第23章 鋼の太陽と燻銀の月

 閃光が収まると、少女と極星の神は姿を消していた。


 「行ったか―――。友・・・か。良い響きだ。そなたの命運が行きつく先で、いつかまた会おう」


 その日より黄金の神の日々は、いつか来るその時を楽しみにする日々に変わった。黄金の神は、満たされた気持ちで一人庭の庭の奥深くを去るのであった。


 〝――― 一番の友よ。また会おう ―――〟


 その経緯(いきさつ)を、遥か空の彼方から鋼の太陽と燻銀の月が見ていた。


 「娘が勝ったか」

 「愚かな極星だ。神とあろう者が、人相手に賭けなどと。どこまでも貪欲な奴だ。鋼の太陽よ、また一頭神が消えた。残るはこの銀河に我らのみ」


 本来は神々で満たされていたはずの銀河に、神が二頭。まるで広い劇場に二人きり。


 「そなたは優しいな。最早我らの声も聞こえない者を、まだ神と呼んでやるとは」

 「―――。何も考えず、奴らが好きでやった事だ。だがお前の鋼が招いた事でもある。鋼の太陽よ、お前はこれを如何とする?」

 「如何?如何もしはせん。今まで通りだ」

 「ただ眺めて見物するのみか。輝かしいな」

 「良いではないか。これからどうなるか続きが気になる」

 「続きも何も星の主が消えた。これで終わりだ」

 「そんなことはない。まだ結果が出たわけではない」


 何を言っているのだと、燻銀の月は浅い溜息をついた。

 

 「極星が娘と賭けをして負けた。そして二人は消えた。これが結果だ。これ以上何を眺める価値があるというのだ」

 「いやいや燻銀の月よ。私は極星の価値が決まったとは思わんよ?」

 「何?」

 「主無き極星に価値があるか、ないか。それはまだわからん。神の価値とは、己の願いを成すことだ。私は鋼の太陽に成って以来、その使命を失った。だが神として最期を迎えたわけではない。まだ終わってはいない以上、私の価値は決していないのだ」

 「それがどうしたと言うのだ?」

 「燻銀の月よ。そなたは己の願いを果たしたその時、最期を迎えるであろう。そして私は、夢から醒めるその時、最期を迎えるであろう。その時にこそ価値があったか如何かが決まると私は思うのだ。なら極星の最期は?あの星は他の放棄された星々とは違う」

 「何が違う。他と同じ無神の星ではないか」

 「そなたはそう思うのか。私は違う。あの星には神々の意志が在る」

 「神々の意志?」

 「神の価値。その本質は願望する意志。その意志の強さが神の力。それが世界を物語る。あの日、極星に数多の神々の意志が渡り、混濁した。それから永きを経て今、神でなくともあの少女の様に何かを願望し続ける多くの意志がある。生れ続けている。ならば、その意志の流れ着く先が必ず在ると私は思うのだ」


 好奇の眼差しで極星を物語る鋼の太陽が、燻銀の月には少し恐ろしかった。


 「鋼の太陽よ・・・。お前は今、何を期待している?」

 「未だかつて見たこともないナニモノかの誕生だ」

 「ナニモノ?誕生?」

 「そうだ。その望みが叶わぬ夢でも願い続け、遂には達成する。そんな存在が完成するのだとすれば、それは神をも超えたナニモノかだ。数多の意志の中から最も強い一つが。それが生命の様に姿を変え、繭から飛び立つ様に羽化する。そんな夢物語の産物があるのだとすれば、私は是非見てみたいのだ」

 「狂ったか太陽」


 狂ったとされた太陽の表情は明るかった。 


 「さあ極星の再誕者達よ。好きなだけ願うがいい。この夢が醒めるまで、不燃の鋼でそなた達を祝福しようではないか。引き換えに、その願いの先に何があるのか。それを私に見せてくれ」


 狂った夢物語の始まりに、燻銀の月は深淵に祈りを捧げた。


 〝―――それが悪夢と成らぬことを―――〟


 鋼の太陽から降り注ぐ最古の鋼。それは己の使命と引き換えに夢を叶える太陽の鋼。ヒト呼んで―――。


 『極超合金(ハイパーアロイ)


挿絵(By みてみん)


 

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