第20章 願いごと
〝私は・・・!願いを叶えに来たの!〟
玉座から飛び降りた少女の思いがこだまする。神の庭を踏みつけ、強い視線を向ける。
「ほう。願いとはなんぞや?」
「私は、私の家に帰りたい!私を追い出したあの世界で、誰にも邪魔されない、私が思うがままにありたい!だから私は神様の様なりたいの!」
「何かと思えば、馬鹿げた娘だ。で、お前はそれをどうやって叶えるつもりだ?」
「違う!私が叶えるんじゃない!神様に、あなたに叶えてもらいたくて。ここまであなたにお願いをしに来たの!」
あまりに率直。礼儀知らず。後無き者の大それた意志は、神が吹き出してしまうには十分過ぎた。
「大馬鹿者!無力!挙句の果ての神頼みとは!久々の訪問者が何者かと思えば、滑稽にもほどがある!可笑しい!可笑しいぞ娘!」
大樹の中に大笑いが響き渡る。
「名を何ともうしたか黄金の者よ!そなたはこの様な、馬鹿に、何をそそのかされてここへ来た?まさかお前まで『お願い事』などと口にするのではあるまいな?」
世界の神といえど、無礼である。だが黄金の神は冷静だ。
「散歩だ」
「何?」
「道に迷ったこの者の願いを聞き入れた。その目的地がここであった。それが、散歩がてらの話であった。というだけの話だ」
「ほう―――」
つまらなかったのか、極星は黄金の神をにらみつけ、沈黙した。そして、目下の少女に視線を向ける。
「馬鹿娘よ。何故、我がお前の願いを叶えられると思った?」
「この人から、あなたならそれが出来るかもしれないって聞いたからよ」
「黄金の者よ。それは真事か?」
「真事だ。この世界の者の願いを叶えることが出来るとすれば、この世界の神である。違うか?」
極星は呆れるように沈黙した。
「神様。あなたはこの世界の神様なんでしょ?なら何でも出来るはずでしょ?そうじゃないの?」
「そうだ。神は願いを叶えるものだ。そして我こそが神だ」
「なら―――」
「だからこそ。お前の願いを叶えることは出来んのだ」
「何?何故だ極星よ。そなたは神であるのであろう。何故この者の願いが聞けぬ」
「全く・・・曖昧ったれめが―――」
曖昧という言葉に、黄金の神は不快を顔に出した。それを見て少女は不安になる。そんな二人に極星が激昂した。
「よいか貴様ら、よっく聞け!神が叶える願いとは、何者でもない神の願いだ!神というのは!己の願いを叶えるもの!それが神なのだ!決して、絶対、他の何かなどではない!全くもって度し難い!その様な当たり前をも知らずして、この神の庭に足を踏み入れるとは!この大馬鹿どもが!」
決して間違いない答えであった。少女は絶望した。




