第15章 少女と黄金の神 《Ⅳ》
少女は長い眠りから目覚めた。そして、すぐそばで黄金の神の声がした。
「体はもう良いようだな」
言われるがままに体を見ると、服はボロボロのままだが、ケガや疲れが全く無い。
「ありがとう」
「良い」
黄金の神は玉座に腰を下ろすと、少女にそばへ来るよう促した。
「そなたと話がしたい」
黄金の神は少女に問いかける。
そなたの名は。
何処から来たのか。
何故ここへ来ることを望んだのか。
少女は黄金の神の傍らに座らせてもらうと、一つ一つ丁寧に答えた。
「そうであったか。世界の外ではそのような事が」
次に黄金の神は、少女に自身のことを語った。
黄金の神は、永くこの黄金の世界から出たことがなかったこと。
そもそもは天に輝く黄金の星の神であったこと。
この黄金の世界の外にいた神々は、遥か昔に『曖昧になる病』にかかり、永く出会っていないこと。
自身のみが唯一病から逃れ得ていること。
永く話相手がいなかった黄金の神は、少女に多くを話した。そして少女に問いかける。
「この世界の外はどのようになっているのだ?そなたの知る限り全てを聞かせてくれ」
少女は家族の事から話し始めた。それから家や町並み、学び舎や友達。流行りの遊びに好きな食べ物。苦手な勉強の話。少女の話は、どれ一つとっても黄金の神には見たこともなければ、聞いたこともない話ばかりで、一つ話す度に「それは何だ」と聞かれた。少女は、たくさんたくさん、色とりどりお話をした。そして―――。
「お外へはでないの?」
「なに?」
「あなたはこの家から外へ出ないの?お外へ出ればいろんなものを見に行けるわ」
「外へ出ると言うことがわからない。ここが世界なのだ。そして黄金の神なのだ。そなた達、人とは違うのだ」
少女には、黄金の神が何を言っているのかわからなかった。少女がわからないと知った黄金の神は言う。
「そなた達、人とは違って何者ではない。神なのだ。この世界にいる黄金の神なのだ。この世界の神なのだ。ここから出てしまえば、それは別の世界の何かである。その名がわからない」
「あなたはお外に出たら神様じゃないの?」
「わからない。ただ、ここにいるから神と名乗れるのだ」
神殿の外へ出るだけのことが何故難しいのか。少女は、お話を理解しようとしばらく考えた。そして少女はあることに思い当たった。それは、少女は黄金の神の名前を知らないというものであった。
〝黄金の神様には名前がないんだわ。私みたいに家族やお友達に呼んでもらえる名前がないんだ。だからお外にでられないのよ。名前がなかったらお外に出ても自己紹介できないし、お友達ができても呼んでもらえないわ。それはとっても辛いことよ。きっとそうよ!名前がないから神様はお出かけできないんだわ!―――なら名前を付けてあげればいいんだ!〟
ハッとまるで白い花が咲いた様に、少女が笑った。
「そなた。どうかしたのか?」
「私、いいこと思い付いたの。神様がお外に出れるようにしてあげる!」
「そなたの話はどれも、どれも面白いが。御客人が一体何を、この神にしようというのだ?」
「神様に、私が名前を付けてあげる!」




