第10章 神秘
太陽の恵みが降り注ぐ地で、人は歴史に『神代』と謳われる時代を築き上げる。
「祖は八百万の神々。星々が瞬く深淵は我らが故郷。神属である我々こそが、星々の民なのだ」
これ以上曖昧な存在にならぬため、その様な意思を子や孫に伝え、自身が何たるべきなのかを示した。そして人々は、神属たる証を得るための探究を始めた。
神から程遠いとなれども、人の魂から完全に神性が失われたわけではない。人は神たらんとするため、自身が持つとされる神性を、自在に操るための秘術を編み出そうとした。それを『神秘』と呼んだ。神秘により人は自身の魂に備わる神性を思うがままに操り、自身が望む魂の姿を形にしようと試みる。かつて神々がそうしたかのように、庭に蔓延りしが唯一の世界を得ようとしたのだ。極星に対する冒涜的学術探究の始まりである。
「珠玉とは星の姿。それが神々の願いの形。唯一の世界になる魂の在り方である」
それが既に古い教えのもと、人々は神秘を究める。人は社を持たぬ人の身でありながら、神の模倣である神秘を完成させるため、伝承にある太陽の恵みを用いた。それは光の粒となって降り注ぐ不燃の鋼、願いを失った魂に自身の世界を望む。かつて祖がそうしたように、遂に創り出した『神秘の珠玉』で、人は唯一の世界を得ることに成功した。だが手にしたそれは、星としてはあまりにも小さく、世界と呼ぶにはあまりに曖昧な鋼の宝玉であった。
『手にした。手にできた。その身の程の星を』
それでも人は神秘の珠玉を神属の証として、神代と呼ばれる時代に君臨するのであった。




