彼、幻想へ堕ちる
なるべく失踪しないよう頑張ります(((;°▽°))
修学旅行と聴いて皆はどんなイメージを持つだろう。
学生として。と言う前提がつくが、最期の行事、一度しかない、親意外との泊まり、他にも色々有るだろうが結局は『楽しい事・楽しみな事』に集約されるだろう。
さて、話は変わるのだが俺はその修学旅行に来ている。
高校生として最期の行事。目いっぱい楽しむのが普通……なのだろうが……
「おーい!季響!早く来い、ちんたらしてたら移動が始まる!」
───集団行動
俺はどうもそれに慣れない。別に、人並みに友人はいると思うし、学校で虐めがある訳でもない。ただ、俺が輪に入り込めないだけの話だ。
……唯まあ、何とか集団の中からバレずに逃げ出した訳なんだが、偶然にも同じ様に出てきていたコイツに出くわした訳だ。
「おせーぞ、急げよ!」
そして、なし崩し的に俺はコイツの行きたいと言う所へ同行する事となった。で、俺は長い長い階段を登っていた。
階段の上の方に見える鳥居が、この先が神社である事を示していた。
◇ ◆ ◇
階段を登りきり、見上げた鳥居にあった神社の名前は『守矢神社』だった。
特に聞いたことの無い神社。何故コイツはこの神社へ来たのだろうか?わざわざあの階段を登って来てまでだ。
いや、そんな事より何故俺まで巻き込まれたのか?「こんなとこに来るならてめぇ一人で来ればイイじゃねぇか!」と。
だが、そんなことを口に出して言うなんて絶対に無理、そんなヘタレである俺は、恨みの篭った瞳で、神社のあちこちをキョロキョロと見回している、俺を道連れにした奴を睨んだ。
だが、俺の恨みの篭った視線などなんのその、神社の境内を何かを探しているのか、くまなく見ていた。
別になんの変哲も無い、至って普通の神社だ。強いて言うなら本殿に大きな縄がある事位だが……
暫く境内をうろちょろとしていたが、腕時計を見た瞬間、表情が一変した。
「やべぇ!?もう時間がねぇぞ!季響、俺は先に戻るからな!」
そう言うや否や、さっさと階段を駆け下りてアイツは先に行ってしまった。本当になんだったんだろうか、不思議……変なヤツだった。
特にようも無いが、よくよく考えたらアイツは境内を見るだけ見て賽銭の一つも入れて無かった、ポケットの中をまさぐって見れば、偶然にも十円玉が入っていた。
丁度いいと、俺は賽銭箱にその十円の入れた。
二礼、二拍手、一礼。確か神社はこうだった筈だ。
参拝をした事で気分が何となく晴れた気がする。俺は回れ右をして、境内を後にしようとして───
───視線を感じた。
バッ!
咄嗟に振り向いたが、そこには誰もいない。……気のせいだろうか?
俺は首を捻りつつも、鳥居を抜けて階段を降り始める。反対側から地元の中学生だろう少女が階段を登って来ていた。
一瞬、その子と目が合った。取り敢えず会釈をしておくと、少女も慌てて会釈を返してくれた。
少女とすれ違う。と、また視線を感じた。
再び咄嗟に振り向けば驚いた顔でこちらを見る少女が……
どうやら少女がこちらを見ていただけのようだ。さっきの視線といい、なんだか不気味なので─思いっきり振り向いた所を少女に見られて若干恥ずかしいのもある─いそいそと階段を下ったのだった。
「……『諏訪子』様、あの人諏訪子様のことっ……!」
『─────』
「そうですか……じゃあ、偶然だったんですね!」
少女は神妙な顔をして独り言を始めると、すぐに笑顔に戻り神社の本殿に走って行ったのだった。
◇ ◆ ◇
アイツ……マジでおいて行きやがった。
階段を下りきってもアイツは既に居なかった。まさか本当においてかれる何て思っても見なかった。
時間は既に走っても間に合いそうに無いし、俺は歩かせてもらおうと思う。
「にしても……全然道わかんねぇな」
スマホのマップに目を通しながら呟く。時間的にも、次に行くところへ向かって歩いていた筈なのに、気がつけばどっかの路地に辿りついていた。
「おいおい……俺ってこんな方向音痴だったか?」
マップが壊れてるとは到底思えない。じゃあ、やっぱ俺が方向音痴なのかもしれない。
見知らぬ土地で自分の隠された方向音痴が目覚めるとか最悪なパターンだと思いつつ、取り敢えず大通りに出ようと踵を返そうと後ろを振り向くと……
「!………う、うわぁ!?」
俺は思わず叫びながら尻餅をついてしまった。
後ろには眼、眼、眼。黒いような紫の様な空間に沢山の眼が俺を一斉に見てくる。そんな『裂け目』がそこにあった。
「な、何だよ……これ」
驚くのもつかの間、目の前の『裂け目』はどんどん大きくなり始めた。どうやら俺を飲み込もうとしているのか、少しづつ俺の方へ近づいてきている見たいだった。
が、俺はどうやらさっきので腰が抜けて身動きが取れないでいた、『裂け目』が迫ってくる中、俺は言葉を出すことなんて出来ず、腰が抜けたのも有るが、金縛りにあったように唯、『裂け目』が迫ってくるのを黙って見ることしか出来なかった。
『裂け目』に呑まれそうになる直前、俺の意識は完全にシャットアウトしてしまった。