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第六話 親は子どもの成長が何よりも嬉しい

少しR15表現があります

2016/03/28 誤記・語尾ほか修正(話は変化なし)

2016/04/06 誤記修正

邪栄やえちゃん、勇人ゆうと、ただいまー」

「おかえり、てつくん」

「だっだ、ぱーぷぁーぱーぱー」

哲人がくたびれて帰ってきた。

ここ2週間ほど、哲人は毎日宰相さんのところなどへ出向いて、貴族のあぶり出しに精を出しているらしい。


勇人と戯れている哲人のために、紅茶を淹れた。

ここの道具で紅茶を淹れるのも慣れたもんだ。

魔法で水を出せる、お湯を沸かせる、保温できる、洗浄できるときたら便利すぎて、地球に戻ったらストレスが溜まるかもしれない。

関係ないけど緑茶飲みたいなぁ。

「ねぇ邪栄ちゃん、こないだから気になってたんだけど」

「なぁに?」

「だーぱ、ぷあー」

「勇人のオムツっていつ変えてるの?あんまり見てないんだけど」

「あぁ、そのこと」

「きゃっきゃっきゃ」

勇人の最近のお気に入りは、高い高いだ。

哲人に高く持ち上げてもらうのが楽しいらしい。

「『洗浄』の魔法を使ってるのよ。これ使ったらお風呂も入らなくていいしすごい便利よ」

「え?魔法使ってるの?そんなしょっちゅう使ってて疲れない?」

「全然疲れないけど?だって私、魔法のレベル規格外だよ。魔力も多分規格外なんだと思う」

「なるほど……じゃあ俺はそこまでじゃないから何回も使うと疲れるのかぁ」

「多分ね。そういえば、最近『人物評価』確認した?」

「いや、そんな暇なくて」

「確認した方がいいわ」

「そう?じゃあ<自分の人物評価>」


-----------------

氏名:竹峰 哲人

性別:男

年齢:31歳

状態異常:気疲れ

装備:布の服

魔法:レベル40

独自魔法:警護魔法

剣技(長剣):レベル10

体術(受け身):レベル22

知識:レベル2010

称号:巻き込まれた賢者殿、影のブレーン

特記事項:家族命、魔法自作可能

-----------------


「あれ、なんかレベル上がってる気がするし、称号も増えてる」

影のブレーンってなんだそれ。

宰相さんの仕事もちょっと手伝ってるって言ってたから、それかな?

てか、気疲れしてるのか。

しっかり休んでまた明日から頑張ってね!

「やっぱり。私と勇人も、色々レベル上がってるわ」

2人のステータスはこんな状態。


-----------------

氏名:竹峰 勇人

性別:男

年齢:0歳

状態異常:なし

装備:布の寝間着

魔法:レベル20(203)

独自魔法:天候魔法

剣技(大剣):レベル15(215)

体術(ゆうぱんち):レベル3

知識:レベル2

称号:勇者ちゃん

特記事項:抱っこ推奨、両親(主に母)とセット、魔法と剣技は潜在中のため大幅な成長なし、魔法自作可能

-----------------


先にお風呂に入ったので、寝間着を着せておいた。

確かに『洗浄』は便利だけど、シャワーだけでもやっぱり浴びたいから、お風呂には入っている。

特記事項は、魔法と剣技が『成長なし』から『大幅な成長なし』に変わって、実際レベルも上がっている。

どうやら、泣いて魔法を使ったり、木の枝のようなものを振り回すことでレベルアップしているらしい。


-----------------

氏名:竹峰 邪栄

性別:女

年齢:31歳

状態異常:なし

装備:布の服

魔法:レベル85(2285)

独自魔法:実現魔法

剣技(短剣):レベル5

体術(蹴り):レベル23

知識:レベル49

称号:魔導士さん(さいきょうの魔王様)、竹峰家のラスボス

特記事項:子ども優先、魔法自作可能(、評価虚偽発動中)

-----------------


私は、レベルが上がっただけだ。

称号なんて知らん。

知らないったら知らない。

なんか偽装できなかったとか知らないんだから。

強制表示ひどい。

魔法レベルはちょっと異常な上がり方をしているように感じるが、ほかに変化はないから大したことではない。

「え、大したことでしょ、これ……魔法のレベル、100以上は上がってるよね?や、俺も90くらい知識上がってたけどさ。あと称号追加されてるよね」

「気にするほどじゃないわよ。称号なんて知らないわ」

「気にしてよ。まぁ、多分初期の称号が関係してるんだろうけどね。それにほら、嘘偽りはないわけだし」

「なんですって?」

「だゃーた!」

「蹴りはやめてっ!えっと……そう、強くなるのは悪いことじゃないよ!多分。ね、勇人」

避けられた。

「たーたー!」

勇人が抱っこしてくれている哲人の頬をぎゅーっと引っ張った。

「痛っ!勇人、力強いから掴んだら痛いよー」

「たたー、たゃたー!」

「必ずしも強いことがいいとは限らないじゃないの」

「うぐぐ」

赤ちゃんって、思ったより握力強いのよね。

爪も薄くて鋭い。

勇人が仕返ししてくれたから、まぁいいや。

強くなることで勇人を守れるというのなら、いくらでも強くなってやろうじゃないの。

「それなら蹴らないで!」

「それとこれとは別よ」

「痛っ!」

受け身レベル上がってるんだし、勇人を落とさない程度の蹴りなんだから平気よね。



哲人が宰相さんのところに通っているので、私は勇人の世話をしながら、図書室へ通ったり王都で旅に必要になりそうなものを買ったり、実現魔法を試したりしていた。

いろいろ実現させてみたら、使い勝手は微妙なこともあるが、すごく便利になってきた。

これまでの間に勇者や魔王について分かったことといえば、数百年おきに現れるらしいということ、倒されなかった魔王はいないらしいこと、帰らなかった勇者もいるらしいこと。

現れる周期ははっきりしないが、魔王が現れれば必ず勇者が現れる。

多分、哲人が解析した召喚陣が関係しているのだろう。

だとしたら、魔王が呼ばれるしくみが分かれば、そもそも魔王も勇者も召喚されずに済むかもしれない。

魔王の召喚については、魔王の国の中心部に何かあるらしいことが分かった。

詳しいことは分からないので、魔王の国へ調べに行ってみるしかなさそうだ。

必ず魔王は倒された、つまり帰還させてもらえたということから、何らかの力で、勇者と魔王が出会うようにさせられているかもしれない。

この強制力が、私たちの場合にどう働くのか分からない。

とりあえず、私だけが帰らされるという道だけは閉ざしておきたい。

また、帰らずにこの世界に残った勇者は、冒険者になったり国に関わったり、それぞれの生き方で人生を謳歌したようだ。

力が強い分、国の傀儡になるようなことはなかったらしい。

良かったね。

でも、地球に未練はなかったのかな。

それとも、帰れない理由でもできたのかな。

あんまり記録が残っていないから、詳しいことは分からないけれど。


私たちの目標は、みんなで地球に帰ること。

勇人が小さすぎるから、勇人の勇者スキルで帰るとしてもずっと後になるし、その手を使うつもりはない。

哲人はチートで私は魔王なんだから、きっと親だけでなんとかできるはずだ。

子どもを守るのは親の役目だ。



実現魔法を試したおかげで、旅は快適になりそうだった。

「それにしても、キャンピングカーかぁ。見た目は大き目の軽四くらいだっけ?」

勇人を寝かしつけてから、リビングの方でゆっくり紅茶を飲んでいると、哲人が言った。

実現魔法で出したキャンピングカーは、まだ見せてはいない。

あんまりたくさんの人に見せたくはないもの。

いざというときのために、こっそり準備したのだ。

「うん。まず一回出してみて、中が狭かったからそれも次の日にいじって広くしたわ。ベッドも広めで、お風呂とトイレも付けてみたのよ。運転席と助手席の間にベビーシートを置けるようにもしたから、多分勇人も機嫌よく乗ってくれるんじゃないかしら。調整するのに5日くらいかかったわ。その辺は、実現魔法の不便なところよね」

「異空間キャンピングカー……キャンピングカーは夢だったけどさ。魔法ってずるい」

「今は、先に作ったアイテムボックスに入ってるよ」

「え、アイテムボックス?」

「あれ、言ってなかったっけ」

一番最初に実現させたんだけど。

「聞いてないよ?それ、見えるものじゃないんでしょ?」

「うん、特に形はないわね。亜空間的な扱いだと思う。いっぱい入るから、旅も手ぶらでできて便利だと思うし、持ち物を強盗に盗られることもないから安心よね、アイテムボックス」

「物流チートってやつか」

「そこまで使えるか分からないけど。というか、そういう方向で使うつもりはないわ」

「そうなの?ちょっとだけなら、運んで小遣い稼ぎしてもいいと思うよ」

「どうかなぁ。魔法で実現はしたけど、アイテムボックスそのものが魔法とは違う存在だと思うから、怪しいことこの上ないわよ。あんまり言いふらしたくないわね」

「まぁそうか。それで、アイテムボックスってなんでも入るの?」

「生きた植物も入るよ。人間も多分入る」

「うわお……」

「紅茶を入れてみたら冷めたから、時間は進むっぽいけど……動物は怖くて試してないわ」

「それは、試さない方がいいかもね」

「うん、どうなるか分からないものねぇ」


こくりと紅茶を飲む。

うん、淹れまくってるから、紅茶を淹れる腕が上がった。

そういえば、そろそろ粛清の方は架橋なんじゃないかな?

「哲くんの方は、そろそろ片付きそう?」

「あぁ、こっちはもう少しだよ。関わった貴族たちはもう確定で分かったし。個人的には、やっぱり報復したいんだけどな」

私も、できればやり返しておきたい。

でも宰相さんに、粛清準備の手伝いだけするって言っちゃったしなぁ。

「ねぇ邪栄ちゃん。話は変わるけど、あの強盗たちに魔法かけたよね?」

「あ、うん。口封じで殺されたら大変だもの」

「うんうん。それじゃなくて、もう1つ」

「えっと?あぁ、逃げられないようにしたわね」

「そっちじゃないよ」

「えー……」

「覚えてないの?」

「なんだっけ?」

本当に記憶にない。

首をかしげていると、哲人の手が私の肩に置かれた。

「なんかね、みんなして股間を抑えて震えながら泣いて起きるらしいんだけど」

「……あ!あれか!」

「それそれ」

「えっとね、リーダーにやったこととプラスの分、片方切って片方潰して切って、皮を引きちぎってブツをちょん切るっていう一連の流れをひたすら夢に見させるようにしたの。起きるまで延々と」

「うえっ!?なにそれ酷い地獄だよ!!?っていうか、リーダーさんマジで何されたの可哀想!!!」

哲人は真っ青になった。

「片玉にした」

「ぎゃー?!皆まで言わないで!!」

「だって頭にきたんだもの」

「そうかもしれないけどさ……うぅ、可哀想」

哲人がさらに涙目で震えている。

やっぱり、男性にはきっついおしおきだったのか。

ということは、貴族にも充分に効くおしおきかな?

「じゃあ、その夢をパワーアップしたのを、例の貴族のみなさんに見せてあげましょうか?」

「なにその鬼畜発言!?許可して歓迎する!」

「歓迎するんだ」

「うちの子を拉致するような奴らに慈悲はかけん!」

「だよねー」

「どうやって見させるかなぁ。3日後に社交シーズンが始まるから、関わった貴族たちは全員王都にいるんだけど、住んでる場所とかはバラバラなんだよね」

「全員集まる日ってないの?」

「えーと、確か全員が王様に挨拶する日があったかな。ついでにパーティーになるらしいけど」

そういえば招待状もらってたな。

私たちなんか呼んでどうするんだろう。

パンダになるつもりは全くないんだけど。

「じゃあ、そこでやりましょうか」

「やっちゃうかー。魔法は簡単にかけられるの?」

「えぇ。人を間違わなければね」

「間違ったら悲劇だよね。回避できないかなぁ」

「そうねぇ……発動に条件を付ければいいかもしれないわ。本当に関わっていたのなら見るっていう風に。自分に嘘はつけないから、その辺は大丈夫」

「あと、一人女性も混じってるんだけど」

「女性もいるのか……自分がその手で切ったりするっていうのでもいいけど、慣れてると気持ち悪いだけよね」

「慣れてる人なんていないと思うけど?!」

「いや、モノを見慣れているとってこと。違うのが良いな……その人って、スタイル良いかしら?」

「多分良いんじゃない?若い愛人を何人か抱えてるって聞いたし」

「ツバメつき?すごいわね、貴族って」

「いやいや、そういう人はごく一部だって」

「そっかー。スタイル良いかー。じゃあ、アレにしよう。今の状態から酷くなるっていうの」

「酷くなる?」

「括れなしのおデブちゃんになるコース、腐ってゾンビになるコース、しわしわお婆ちゃんになるコース、全コースヒソヒソ陰口を言うリアルな観客つき、ツバメは怖がって逃げていく感じで」

男性も象徴を潰される感じなんだから、女性も同じ方向がいいよね?

ただ、物理的に痛くないから複数コース考えてみた。

ちなみに、男性は夢でもちゃんと痛い。

「うえ……なにそれ鬼畜」

「夢だよ?起きればほっとするよ?」

「でも、延々でしょ?」

「もちろん。起きるまで延々と」

「うわぁ酷い。それでいこう」

「了解。でも、パーティーとかどうするのよ」

「あれ?聞いてないの?俺たちも呼ばれてるよ」

「招待状きてたけど、めんどくさいからもう断ったよ?」

「え?」

「えへ」

返事をし直すために、宰相さんに再度交渉した。

哲人が。




勇人も私たちの魔法に関わりがあるから、ということで出席させてもらうことになった。

というか、一人で長時間留守番させるつもりなんてない。

今は、着替えて哲人と一緒にリビングで待っている。

私は寝室でサンナさんともう一人の侍女さんに手伝ってもらって着替え中だ。

「ふぐぇぇぇえぇえ」

「もう少しですよ、奥様。さ、息を吐いて」

「ふぅぅぅぐぅううぅぉお」

内臓が出てきそう。

結婚式のときのコルセットがおもちゃのようだわ。

こっちのコルセットは、中世ヨーロッパのイメージで、思いっきりウエストを締め上げるタイプだ。

マジしんどい。

「はい、あとはドレスを着ましょう」

「はひ」

ドレスは借りた。

正しくは、宰相さんがいくつか用意してくれて選んだ。

色は何でもいいらしいから、それっぽく黒にした。

デザインはシンプル目なマーメイドライン。

パンプスも黒で揃えてみたら、よりそれっぽくなった。

というかピンクにオレンジって、どこのプリンセスよ。

いくらなんでも、31の女がピンクのフリフリドレスって痛すぎる。

「黒も映えてお似合いですが、奥様の肌色でしたら、ピンクがお似合いでしたでしょうに……」

「いえ、そんなことは。こっちでも、既婚である程度の年齢の女性は着られるドレスが変わってくるんでしょう?」

「そうですね、未婚か25歳未満であれば、明るい色のドレスが多いです。既婚か25歳以上の女性は、足を出さないデザインで、あまり明るくないドレスが好まれますね」

「じゃあ、どっちにしろ肌の露出が少ない暗めの色が良いはずですよ」

「もちろん、奥様は既婚者ですが」

「31歳だもの、これで正解です」

「えっ?!まさか、そんな……」

「嘘でしょう、奥様が30歳を超えているなんて!」

手伝いに来てくれているメイドさんとサンナさん、両方ともびっくりしている。

あれ、歳のことは言ってなかったかなぁ。

どうやら20歳そこそこだと思われていたようだ。

モンゴロイドが若く見られるのは異世界でも共通なのね。

嬉しいような複雑なような嬉しいような。

どちらにしろ、ピンクは着ませんよ。


化粧と髪のセットも終わったので、リビングの方へ。

メイク道具は似たような雰囲気だった。

マスカラだけはなかったけど、代わりにアイラインをがっつり。

あとで落とすのが大変そう。

魔法使っちゃうけど。

勇人は、ちょっと豪華なベビーカーのようなものに乗っている。

座っても大丈夫な大きさの、どこかの王室で使ってるようなあれ。

着ているのはスーツっぽい服。

着せるの大変だったんだけど、涎かけ代わりのハンカチがすでにべしょべしょになってる……。

紳士にはまだまだね。

哲人はいつも通り褒めてくれた。

うん、こいつ褒めるんだよ、いつも。

「邪栄ちゃん、いつもよりずっと可愛い。ね、勇人。勇人ももちろん可愛いよ~!」

「だっだーだ」

「うんうん、ありがとう」

サンナさんたちの目線が生ぬるいけど気にしない。

ちなみに、哲人は勇人と似たような黒いスーツ。

ネクタイまで赤色で合わせているのはお洒落というべきかなんというか……。

私も黒いドレスに赤い飾りだから、親子3人でセットかよ。

勇人が可愛いからいいけどね。

さてさて、準備も整ったし、貴族様の戦場に出向きますか。

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