第五話 手負いの獣より子連れの母親の方が怖い
R15表現あり(暴力・流血など)
また、男性は痛くなったらすみませんが読み飛ばしてください。
リヤカーを魔法で軽くして浮かせ、後ろをついてこさせる。
私は、小屋に向かって全力で走った。
誰が残っている?
誰が追いかけている?
誰が連れて行かれた?
誰が?
小屋にたどり着くと、残っている人についてはすぐに答えが出た。
そして、連れて行かれた人と追いかけている人も。
「タヌンハさん!哲くん!」
「ヤ、ヤエさん、ご無事、で……」
応えたのは小屋に寄りかかって蹲っているタヌンハさんだ。
哲人は、地面にうつ伏せのまま転がっていた。
慌てて近寄ったところ、意識はないが息をしている。
索敵でも、留まっている2点は両方生きているという状態表示だったけれど、実際に見てやっと信じられた。
あちこち打ち身はあるが、手足の骨は折れていないらしい。
血も流れていないから、頭を打ったのかもしれない。
そっと仰向けに寝かせて、今度はタヌンハさんだ。
タヌンハさんは、左腕を切られたらしく、血を流しているのを右手で抑えている。
うわ、ちょっとした血だまりができてる。
ほかにも見えているところにたくさん殴られたような跡があるから、体中打撲だらけじゃないだろうか。
切り傷は結構深い。
「ヤエ、さん、すみま、せん……ベルー、タ殿が、追いかけて……」
「うん、分かった。ちょっと待って。……<傷を塞げ、タヌンハの左腕>」
ふわり、と光がタヌンハさんの腕を包み、傷が塞がる。
これは魔術書に乗っていた簡単な治療魔法だ。
動脈はぎりぎり無事だったようだが、放っておいたら危なかっただろう。
傷は塞いだけれども、血は戻らない。
まだ息が浅いから、きっと辛いはずだ。
「タヌンハさん。今の話だと、勇人が攫われて、ベルータさんが追いかけているんですね?」
頭は非常に冷静だが、奥底が沸騰しているようだ。
激怒を通り越すと、案外冷静になるものなのね。
「は、い。籠ごと、連れ去ら、れて……申し、訳ない。突然、襲われ、た、とはいえ、情けない」
「いいですから。ここで待ってください。哲人が起きたら、私が、全部ヤるから、ここで待てと伝えてください」
「は、はひ……」
タヌンハさんが怯えた顔で答えたけど、どうかしたのかしら?
まぁいい。
よし、いい度胸だ誘拐犯ども。
覚めない地獄を見せてやろう。
索敵すると、ベルータさんはまだ誘拐犯を追いかけているようだ。
勇人は、多分重なって見える点の1つだろう。
私が地を蹴ってそこを目指していると、さっきまで木々の間から見えていた青空が、一気に黒い雲に覆われてきた。
嫌な雲だな。
そして、直後。
ごろ……
あ、これヤバい雨雲だ。
ぴかっ
ばりばり!
どがーん!!
近くに、雷が落ちた。
そして大きな雨粒が落ちてきた。
木々が雨を少しは避けてくれるけれど、やはり進みづらくなる。
なんとか足を動かしていると、遠くに声が聞こえてきた。
「……!……ろ!」
「んぎゃあああぁぁ」
あれは、勇人だ。
勇人が泣いている。
本気で嫌だと、助けてと泣いている。
大丈夫、すぐにお母さんが行くからね。
後に、ベルータさんは、マジで命がなくなったと思った、と語ったらしい。
誘拐犯の進路を先回りし、勢いよく立ちふさがった。
奴等は、驚いて足を止めた。
「おいこらそこの誘拐犯ども。地獄を見る覚悟はできているだろうな?できていなくとも地獄を見せてやるから喜べ。もちろん背後で命令した奴らも全員連れて行ってやるから安心しろ」
ごろ……どががーん!!
背後に雷が落ちた。
雨に濡れて髪が顔に張り付いているし、修羅のようになっている自覚はある。
「ひぃっ?!」
「な?!なんだ?この女……」
「ぎゃあああああ!!ああーーん、あーああああん!!!」
勇人の泣き声とともに、雨足がひどくなる。
雷はもちろん、風も強くなってきた。
「ちっ、ただでさえ面倒な天気になったのに、うるせえぞこのガキっ」
リーダーらしき男が勇人の籠を抱えている。
籠からちらりと頭が見えた。
見えたら魔法も使える。
この男には、絶対、地獄を見せる。
「<こっちにおいで、勇人>」
ふっ、と光が勇人を包み、私の腕の中に来た。
籠は、私の足元に落ちた。
全員がぽかんとこちらを見た。
勇人は、私を腕の中から見上げて泣き止んだ。
「……た!たー!」
そして、空は晴れた。
もしかして、もしかしなくともこの嵐は勇人が泣いたせいなの?
「いい子ね。もう大丈夫だからね」
怪我はどこにもなさそう。
あぁ、涙と鼻水とよだれと雨で、可愛いお顔がべしょべしょになってるわよ?
ポケットに入れてあったハンカチで、勇人の顔を拭ってやった。
「ぶーぶぁ!だー」
勇人はご機嫌になった。
「よろしい。お前ら全員死にたくなるほど辛い目に合え。<誘拐犯どもの魔法全無効><捕獲、誘拐犯、隠れているものも全員、そこの木に逆さづりになって揺られていろ、吐いた物は鼻から出してしまえ、ただし気は失うな>」
「ぐわっ?!」
「な、なんだ?」
「動けないぞ?!」
「うぐっ、気持ち悪い……」
目の前にはミノムシのようなものが8個。
そこらへんに隠れていたらしい奴らも合わせて8人いたらしい。
全員が目の前の木の枝に、蔦のようなものでミノムシ状にぐるぐる巻きになって逆さづりになっていた。
回転しながらぶらんぶらん揺れているから、酔うわ頭に血が上るわでひどいことになるだろう。
ベルータさんを見れば、右腕と右足の皮鎧の部分に切り傷が見えるが、そこまで深くなさそうだ。
これなら、後で治療しても大丈夫だろう。
「さてと。ちょっと勇人を夫に預けてきますので、ここで見張っていてもらえますか?」
「あ、ああ……」
ベルータさんが頷いてくれたので、ぎゅっと抱っこしたまま勇人を運んだ。
小屋に着くと、どうにか哲人が起きたらしかった。
「哲くん、骨折とかはない?」
「や、邪栄ちゃん、勇人が……あ!勇人!!」
慌てて起き上がり、こっちに来ようとしたので、その勢いを利用して思いっきり蹴り飛ばした。
「ふごっ!!!」
「?!」
哲人がふっとび、タヌンハさんが驚いているが、気にしない。
「ちょっと?なんで勇人が攫われてるのよ。予想できたでしょうが。なんであっさり気を失ってるのよ。手足を失ってでも守りなさいよ、父親でしょうが!!」
「たーた!」
もちろん、勇人は腕の中で楽しそうにしている。
これくらいで落としたりしない。
「うぅ、邪栄ちゃん……勇人も、ごめん。でも、気付いたら、後頭部をガツンとやられて」
中段蹴りが見事に顔面にヒットしたので、哲人は鼻血を垂らしていた。
これくらいで助かったと思え。
「知らん。索敵しとけよ。何のための警護魔法なの?まぁいいわ。とにかく、今は勇人を預けるだけにしておくわ。とりあえず怪我もないし、無事だからね。また攫われたりしたら、今度こそ命がないと思いなさいよ?」
だけってなんだ、とタヌンハさんが呟いた。
「ご、ごめん。分かった、ここでタヌンハさんの治療しながら待つよ……」
どうやら、タヌンハさんは足も大怪我していたらしい。
「そうしてちょうだい」
「たったったー」
鼻血を拭って座り込んだ哲人に、勇人を手渡した。
さて、誘拐犯どもを吐かせに行こうか。
「うぐっ、お、おではこでいじょお、じらねぇ……」
「へぇ。本当に知らないのね。じゃあ寝ていいわよ」
「ぼぐぅぁっ?!」
これで4人目。
顔面がボコボコになったのは2人目だ。
どうやったのか?
だってほら、奴らは逆さづり。
ちょうどいい高さに顔があるのよ。
鉄板を仕込んではいないけど、硬くて丈夫な靴でよかった。
残りの4人は、揺られて酔ってグロッキーになりつつ怯えている。
主に鼻から何か出ているが、私にかからなければ気にする必要なはい。
魔法を使えるらしい奴は1人いたが、最初に魔法を無効化したのでボコボコにし放題だった。
下っ端らしい人から聞いていけば、どうやら窃盗グループのリーダーだけが依頼人を知っていて、ほかはとにかくこの森で勇人を攫うことしか聞いていないらしい。
「さてと。次は血抜きにしようか」
「や、やめろー!!」
「揺らすな、止めてくれぇ」
「うぇえええ、ごえぇぇええぇ」
「じゃああんたね」
お城で貰った動物を捌くための小刀を手に持って、次のターゲットに近づく。
ちなみに、すでに質問し終わった4人は、気絶したのでぐるぐる巻きのまま木の根元に転がしてある。
ベルータさん?
ベルータさんは、私のキレっぷりを見て、黙って見張ってくれている。
拷……質問が終わったうちの1人は目が覚めたらしいが、震えながら大人しくしているようだ。
目を付けた奴の揺れを止め、ぴ、っと首元を切ると血が一筋垂れ落ちる。
「……?な、なんだ、こんだけかよ」
「えぇ、そうよ。あと30分くらいは生きられるはずよ、あんた」
「え、はぁ……?」
「30分ほどで、致死量の血が流れ出るってこと」
「んなっ!」
「さー、その間に全部吐かないと、死んじゃうよ?大丈夫、血止めはしないからゆっくり死んでいって」
「わ、分かった!言う!言うから血を止めろ!頼む、下ろしてくれ!!」
「あらあら、だめよ?言ってからじゃないと。ほら、正直にどうぞ。<嘘をつくな>」
「うぅっ……」
そいつも、やっぱり下っ端で、誰からの依頼だとかそういうことは知らなかった。
あの手この手で順番にひたすら吐かせ、副リーダーも依頼者には会っていないと分かったので。
「さ、あんたで最後ね」
「くっ、おれはそんなくらいじゃ吐かねぇぜ」
「さぁどうかしら?じゃあさくっと吐いてもらいましょうか」
「はっ!できるもんなら」
「<切り裂け、下半身の洋服><捕縛しなおせ、下半身はむき出しにしたまま、逆さづりにしろ>」
びりびりびりっと風が服を引き裂いた。
「うぉっ?!な、な、なんにをしやがるっ?!こ、おま、女だろう?!?!」
リーダーの声が上ずった。
そりゃそうだろう。
逆さづりのまま、下半身の洋服が全部なくなったのだ。
もちろんモロダシ。
汚ぇな。
しかし、母親になった女の怒りの前には羞恥心など死ぬのだよ。
「うふふ、さくっとって言ったでしょう?さ、言わないと」
そう言って、私は笑顔で小刀を急所の片方へ押し付けた。
「?!や、やめろ!ウソだろ、やめてくれ!!」
「ほら、<嘘はつくな>。依頼者って誰だったの?終わったらどこへ来いって言ってた?」
「し、……知らねぇよ!」
『嘘をつくな』は、嘘をつくと、こちらに分かる魔法だ。
「はい嘘ね」
すぱっ
「っぎゃあああああああ!!」
片方を切って、すぐに血止めを施した。
私はにっこり微笑んで言った。
「おい片玉野郎。もう一回聞くからね?次も言わないならそうね、残った方をつぶしてから切り取ってあげる。それでも言わなかったら今度は皮を引きちぎって、最後にブツを根元からちょん切るわ。で、依頼者はだあれ?攫ったらどこへ行く予定だったの?」
今度は、野営セットにあった小さいヤットコのようなものを手に持って、残った方を挟みながら言った。
少しずつ力を込めていく。
「ひぃぃぃっ!分かった、わ、分かったからっ……」
結局、片方切っただけで全部吐いてくれた。
気が付いた下っ端が涙と鼻水と何かを流してガタガタ震えていたし、ベルータさんは下半身を抑えて真っ青になっていたけど、大丈夫?
リーダーによると、勇者の血を分けてもらうべきだという貴族のうちの強硬派であり、人族至上主義でもあるナスイダ男爵というのが依頼者らしい。
王都の端っこにある、男爵の別宅に勇人を連れ去る予定だったと。
が、多分後ろに強硬派のドンであるジクイタル侯爵がいるだろうとベルータさんが言った。
なるほどね。
じゃあ、ナスイダ男爵のとこへ行って、色々吐いてもらって、全部潰せばいいか。
気絶したリーダーをベルータさんの方へ魔法で放り投げて、王都へ戻ろうとしたら止められた。
「ヤ、ヤエ様。一旦全員を連れて城へ戻りましょう。テツヒト様もお怪我をしておられますし、貴族を罰するのであれば国王にも伝える必要があります」
「えー?いいんじゃない?無能がいなくなっても誰も困らないわよ」
「いえ、突然複数人貴族が処刑されれば、地方が混乱します」
「そうかなぁ?」
「はい!そ、それに、今回のことはこの国の汚点を洗い出すきっかけにもなるでしょう。なにとぞ、一度気をおさめてください。お願いいたしますっ」
真っ青なまま、ベルータさんが訴えた。
仕方ない、国の都合っていうのもあるんでしょうし、哲人は怪我をしたけど勇人は無事だし。
「……分かったわ。じゃあ、リアカーの後ろにそいつら縛り付けて行きましょうか」
「は、はい!ありがとうございます!」
ベルータさんが、ビシッと頭を下げた。
態度が一変したように思えるんだけど、なんでかしら。
リアカーの中の魔獣を見て、窃盗グループの何人かは声を失った。
ブラックベアは、草食だけれど人を敵視していて攻撃力が強く、見つけたら逃げろ、が合言葉だそうだ。
今は、檻が狭くて動けず、唸っているだけで大人しくしている。
それから、中にいたオレンジファングのうちの一頭、大きい方は、群れのリーダーだったらしい。
どうりで、なんか大きいし牙も多いと思った。
そのリアカーの後ろに全員くくりつけ、歩かせた。
「嫌だったらそのまま引きずるから、気にせず引きずられてくれたらいいわよ?どっかに引っかかっても蹴り飛ばしてあげるから大丈夫」
笑顔でそう言ったら、みんな静かに歩いてくれた。
雨は、ごく一部にしか降らなかったらしく、少し歩いたら地面は乾いていた。
歩いているうちに、服も乾いてきた。
哲人は、タヌンハさんの右足の骨折を治したら魔力がほとんどなくなったらしく、ヘロヘロになっていたので、リアカーの檻の上に乗っけている。
檻は、2個重ねて乗せてあるので、かなり高い位置だが哲人は静かなので気にしていないようだ。
もしくは気を失っているのかもしれない。
小屋の周りには3、4台リアカーと檻があったが、試験に使うためにギルドが用意しているものらしく、終わったらまた小屋のところへ返すのだそうだ。
だから、手間を減らすために檻を重ねてリアカーを1台にした。
リアカーを引っ張っているのはタヌンハさんだ。
病み上がり?なのにすみませんね。
ベルータさんは、窃盗団の後ろを見張りながらついてきている。
怪我は、さっき治しておいた。
私はもちろん、勇人を抱っこひもで抱っこし、籠を手に持っている。
知らない人に連れて行かれて大泣きしたから疲れたんだろう、勇人は今はぐっすり眠っている。
うん、うちの子天使だわ。
森を抜けて王都へ入り、ギルドへ向かう。
途中、こちらに気づいた騎士さんたちが寄ってきたので、ベルータさんが説明して人を呼びにやった。
どうやら、今日は東にある騎士団の牢屋に窃盗グループ全員を放り込むことになるらしい。
逃げられないように、それと殺されないように、後で行って魔法をかけてあげよう。
そうそう、夢見もよくしてあげないとね。
もう、魔法を自作できることは秘密にしないことにした。
私を怒らせたら大変よ?って知らしめるために。
あとは口封……じゃなくて、黙っていてもらうのがめんどくさいから。
散々使っちゃったもんね。
タヌンハさんからは、私もランク6だとお墨付きをもらった。
ただし、ランク7や8もきっと早いだろう、とも言われたけれど。
リヤカーを引き渡してギルドで情報を書き換え、身分証明にもなる小さなカードを受け取った。
ギルドで共有しているデータベースに登録してあるから、失くしても再発行できるし、時間はかかるがギルドで身分証明することも可能だそうだ。
ただし、失くしたら再発行にお金がかかるらしい。
個人の特定は魔法で行うんだとか。
魔法万能すぎる。
魔獣の売上金は、また後日受け取ることになった。
その後は牢屋に寄って魔法を使ってから城へ帰った。
もちろん宰相さんの執務室へ直行だ。
勇人は、今は籠の中でおもちゃ代わりの木のコップを振り回して遊んでいる。
宰相さんは、話を聞いて顔色を変えた。
「ああいう貴族の腐ったのを捨ててもらわないといけないわね。あと、ギルドに登録できたから今後のことも相談しないと」
「邪栄ちゃん、腐ったのは肥料にするんだよ」
「あら、その方が役に立つの?」
「そうだよ。それに、俺も肥料づくりの手伝いはさせてもらうつもりだから」
「じゃあそっちはお願いしようかな。勇人とお留守番しておくわ」
「分かった」
「勇者様、奥様……本当に申し訳ない。その、貴族のあぶり出しや罰に関しては……」
宰相さんが顔色を悪くして会話に入ってきた。
大丈夫だよ、全部取ったりしないよ?
「はい、あぶり出しのあたりをお手伝いいたします。罰を与えるのは、国の役目でしょうし、諦めますよ。今のところは」
哲人が良い笑顔で言った。
「さようですか……」
「今後こちらに危害を加えようとした場合は、今回のことを踏まえてどうなるか分かった上で手を出してくるのでしょうから、全力で潰してもかまいませんか?」
穏やかな表情だが、哲人の目は笑っていない。
さっき哲人が暴れなかったのは、私が先にブチ切れていたからだろう。
ほかの人が取り乱しているのを見たら、自分が落ち着いてしまうってことよくあるよね?
「今後……そうですな……。一区切りつけられるまで、どうかお待ちくだされ」
「全力で、潰しても、いいですか?」
哲人がもう一回聞いた。
私は、哲人の横で無言でにっこり笑みを作って宰相さんを見た。
「う……今回の件について、片付いた後であれば許可しましょう」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます。よかった、潰すのは簡単ですが闇に葬るのはめんどくさそうでしたので」
「奥様……」
「邪栄ちゃん、本音が漏れてるよ」
「おっとシツレイ」
「たたーた、たゃーた!」
うんうん、お母さんは貴方を傷つけようとするものがあったら全部潰せるよ。
宰相さんと相談した結果。
貴族の粛清にはしばらく時間がかかるので、その間は城に滞在し、ある程度自由にしていられることになった。
粛清が済んだら、南のダンジョンに行って勇者の武器を手に入れる。
その後、魔王の国を目指す。
旅には、護衛はつけない。
宰相さんはちょっと渋ったが、私たちは強いし、フットワークは軽い方がいい、と押し切った。
本当は監視したいんだろうけどね。
こっちもずっとついてこられると色々隠しきれないだろうし。
ちょっと考えていることがあるから、多分私たちの後をつけることもできないと思う。
なので、通信用の水晶を持って、定期的に報告することで話をつけた。
ほかには城の図書室を自由に使わせてもらい、旅の準備用にいくらか用立ててもらうことになった。
街に出るときには、ベルータさんが護衛についてくれるそうだ。
10万ザウって金額がどれくらいの価値なのか分からないけど、多分高額なんじゃないかしら。
そういうとこ、宰相さんはケチっぽくないもんね。
粛清の計画に加わるために、哲人は宰相さんの執務室に残ったが、私は与えられた部屋に戻ってきた。
勇人にご飯をあげたいし、疲れただろうから早くやすませてあげたい。
部屋にはベルータさんが送ってくれた。
サンナさんと一緒に部屋で過ごし、夕食をとって早々に寝室に行った。
あぁ、疲れた。
私も魔法を使いまくったから、やっぱり疲れているらしい。
哲人を待つつもりが、勇人と一緒にすとんと眠ってしまった。