第四話 常識を持った親はテンプレを所望する
少しR15表現あります。
2016/03/08 誤記修正
2016/03/10 一部修正
2016/03/28 誤記修正
夜中に魔法の本を読んだら寝不足になった。
だって、面白かったんだもの。
本によると、基本的に魔法は魔導書に書かれたものを詠唱して使うらしい。
魔語を習得するのは難しいらしいから、それならすでに作られたものを使う方が効率が良い。
魔法が外国語みたいだから、外国語を勉強するより定型句だけ暗記した方が早いってことね。
で、暗記が主流だから、オリジナルで魔法を作る人なんてほとんどいない。
生活や冒険においては、既存の魔法だけでなんとかなるらしい。
というか、既存の魔法を駆使するのが魔法使いっていうイメージなのかも。
だから、魔法自作可能ってのはそこまで隠さなくてもいいけれど、やっぱり公にしない方が何かと有利なんじゃないかと思う。
それから、基本的な魔法は暗記しておいた。
生活用の水、火、風、土の魔法のほかに、攻撃や防御、治療に使えそうなものは一通り。
私たちは日本語で覚えてしまえばいいから、その辺は楽だよね。
ちょっとくらい違う言葉でも、自作できるから発動するし。
応用編の最後の方に、魔法を待機させる方法があったけれど、ちらっとしか書かれていなかったから、これができると一目置いてもらえそう、かな。
私は一応魔導士ってことになってるし。
え、目立ってもいいのかって?
どう頑張っても目立つと思うよ。
だって、私は勇人とセットで活動することになりそうだからね。
子連れ冒険者とか目立たないはずかない。
今は抱っこひもだけど、自分で動きたい年頃なったらどうしようかしら。
「邪栄ちゃん、準備できた?」
「うん、一応……。あー、ほんとに抱っこひも欲しい。ベビーカーでも良いけど、ちょっと不安だから抱っこひもがいい。あと腕が筋肉痛になる」
こっちには、昔の人が使ってたみたいなちょっと太めの紐で括りつけるか、籠に入れて持ち歩くしか方法がないらしいのよね。
「そうだね……あ、そういえば、邪栄ちゃんの実現魔法でなんとかなるかも。使い方とかちょっとだけ分かったよ」
「え?どういうこと?」
「実現させたいことを魔語で言えば実現するらしいよ。ただし、1日1回だけで、実現できないこともあるらしいけど」
「1日1回って……便利なんだか不便なんだか。でも、それだと抱っこひもが手に入るってこと?」
「多分。『実現せよ、ここに抱っこひもがある』みたいに言えばいいんだと思うよ」
「ふぅん……じゃあやってみる。<実現せよ、私が使っていた抱っこひもは涎カバーのセットと一緒にここにある>」
両手を見ながら言ってみた。
出てきた。
ちゃんと肩紐にかける涎カバーが3セット一緒に。
汚れもそのままだから、きっと家にあったものがここに来たんじゃないかな?
すごい。
なんて便利なんだ。
「哲くん!哲くん!見てこれすごい!!」
「だうー、だっだ。だーだー」
勇人にも分かるのかな?
「あ!しまった……どうせなら、新品って指定すればよかった!」
「すっご……邪栄ちゃんすごいね」
私の後悔は、華麗にスルーされた。
「これさ、頑張ったらみんなで帰れないかな」
「あ」
「ん?」
「ちょっと待って。……あ、うん、多分無理だね」
哲人は、虚空を見ている。
多分、ステータスみたいに画面が見えているんだと思う。
「どういうこと?」
「この世界で生きるために欲するものごとを実現可能、って但し書きがあった」
「えー。一番実現させたいことなのに」
「何でも叶う魔法はさすがにないんだろうね」
「そんなもんかぁ……」
「たーたーたー、たたーたー」
抱っこひもを装着して抱っこする。
勇人はご機嫌だ。
やっぱり安定感が全然違う。
腰と肩で支えていて、両手も空くしすごく楽。
よし、これで勇人を抱っこしたままでも比較的がっつり動けそう。
魔法で揺れとか抑制できるだろうから、走ったりもできるんじゃないかしら。
準備が終わって待っていると、爺さんと騎士さんが部屋に来た。
騎士さんは、胸当てのほかに腕、足の要所に金属の部分的な鎧を付けていて、ほかは何かの皮らしい防具を身に着けている。
マンガみたいな、キラキラしい感じじゃなくて、本気で身を守る装備だ。
私たちは、貰った服に、貰ったマントを着ている。
防御力は言わずもがな。
「おはようございます。おや、奥様、その恰好は?」
私は、抱っこひもで勇人を前抱っこしたまま、マントを身に着けている。
やっぱり黒い抱っこひもって目立つよね。
こっちの洋服は、基本的に優しい色ばかりだから。
「宰相さん、おはようございます。これは、子どもを抱っこするためのものです。両手が空くので、とても便利なんですよ」
「なるほど、勇者様方の世界のものですか。ですが、少し目立ちますな」
「ですよね……では、こうやってマントで覆ってしまえばどうでしょう?」
「あぁ、なるほど。そのようにしてくだされば、大丈夫でしょう」
ちょっとマントをひっぱって前を閉じ、抱っこひもを隠して勇人の顔だけ出るようにしてみた。
OKらしい。
「そうそう、この者が勇者様方の護衛をいたします」
「……王都第三騎士団所属、副団長のベルータといいます。本日は皆様と冒険者組合へ行き、登録してから城へ戻る予定となっています。道中、ご質問があればお受けします」
副団長なんだ。
ちょっと白いものが混じった髪から見て、私たちより一回り上くらいかな?
筋肉はしっかりついてるし、頼りになりそう。
ただ、お堅いだけじゃなくて不本意そうな雰囲気がある。
私たちの護衛とかタルいですよね、すみません。
「よろしくお願いします。私は哲人といいます。こちらは妻の邪栄、それから息子の勇人です。知らないことばかりですので、ご教授願えれば助かります」
哲人が余所行き仕様であいさつする。
ベルータさんは、軽く頭を下げて答えた。
「では、ベルータ殿、後は頼みます。儂は執務室におりますゆえ、帰られたら報告に来てくだされ」
「セヌバタ宰相様、皆様と一緒に報告に行けばよろしいですか?」
「ふむ、それは……そうですな、その方が面倒も減りそうだ」
「かしこまりました」
宰相さんは、セヌバタさんというらしい。
それにしても、一応用心して名前しか名乗ってないけど、この世界の人たちも名前しか聞かない。
家名とか存在しないのかな?
もしかしたら名乗るのは貴族だけとか?
それとも、家名まで教えると真名がどうこうでダメとか?
城を出て、王都の大通りを歩く。
仕事を始める時間は過ぎているらしく、店内も道も人が多い。
「ベルータさんも北のご出身だったんですね。サンナさんから北の領地については少し聞きました」
「はい。サンナは同じ村の者で、一応身元引受人のようなものです」
「そうだったんですか」
北の出身の人を選んだのは、宰相さんの配慮?
それとも、北の人は信頼できる人が多いのかな?
騎士団について聞くと、第一は王族の護衛、第二は城の警護、第三は王都の警護を担当するらしい。
第一には貴族出身者が多く、少数精鋭の花形なんだとか。
第三は一番人数が多く、庶民出身者も多い。
ベルータさんは、叩き上げで副団長までのし上がったみたいだから、相当できる人なんだろう。
私がベルータさんと並んで歩き、少し後ろに哲人がいる。
抱っこひもの中の勇人は、周りをきょろきょろと見ている。
知らないものが多くて、面白いね。
あ、哲人がちょっと拗ね気味だ。
そろそろ話に加えないと。
「夫も私も冒険者組合のことは何も聞いていないのですが、どういった手続きをするのですか?」
「加入手続きそのものは、書類を記入して提出するだけですから簡単です。ただ、ランクを決めるのが少々時間も手間もかかるかと」
「ランク決めですか?」
哲人が加わってきた。
うんうん、世間話は私担当で和ませて、必要事項は哲人が聞くのが自然よね。
「はい、下からランク1、ランク2と上がっていき、最高ランクは10です。ランク1と2は街の近辺で雑用に近い仕事を引き受ける子どもが多いです。遠くの森へ行ったり護衛を引き受けたりするのは、ランク3以上の冒険者です。ランク5を超えるとダンジョンに入っても即死しない程度です。ランク9は災害級の魔獣を相手にできる者で、現在は存在しません。ランク10は、国を落とせるほどの者ですが、今までそこに該当した者はおりません」
ふむふむ、私たちとしては、ランク6くらいになれれば御の字か。
「そのランク決めは、どのような方法で?」
「ランクごとに、決まった試験があります。加入時には、下から連続して受験できます」
「なるほど。合理的ですね。受験資格などはないのですか?」
「特にはありません。ただ、一度落ちると10日は受けられません」
「そうなんですね。ほかに、『人物評価』の確認などは行わないんですか?」
「『人物評価』は、自分で自分を確認することにしか使えません。神殿には、評価を確認できる魔道具があるらしいですが、普通そんなものは使用できないでしょう。組合に申告する内容は、あくまで自己申告となります。試験に合格しさえすれば、問題ないようです」
「書いたことよりも、事実を重視するんですね」
「その通りです。また、保障などは特にありません」
「すべて自己責任と」
「はい。厳しいでしょうか?」
「いいえ、そんなもんでしょう。国の管轄から外れるわけですから。それを理解できない人は、冒険者としてやっていけないのでしょうし」
ベルータさんは、哲人の答えにちょっと微笑んだ。
そこまで甘ちゃんではないよ。
日本で社会人やってきた経験もあるし、さすがに大人だもの。
冒険者組合の建物は、周りと同じで木造だ。
ただ、ほかの建物が2階建てまでなのに対し、こちらは3階まである。
ちょっと高い。
入口はドアがない状態で、中が見える。
閉じる気がないってことは、もしかして24時間営業なのかな。
ベルータさんと哲人に続いて入ると、中は受付らしいカウンターによって2つに分けられていた。
手前の空間には、椅子と机がいくつかあり、ほとんど誰も座っていない。
壁には、たくさんの依頼書らしい紙が貼りつけられていた。
カウンターで仕切られた奥側は、棚や机があって、職員さんらしき人たちが仕事をしている。
ラッシュを過ぎたからか、まったりした雰囲気だ。
何だお前のような軟弱者は場違いだーげらげらーおうやるかーどっかんすまねぇ兄さん許してくれー、みたいなテンプレは起こりそうにない。
カウンターにいるのは、屈強なおじさんと肝の座っていそうなおばさま。
綺麗な受付嬢はラノベだけですかそうですか。
「ようこそ、冒険者組合へ。お話はうかがっております。こちらの用紙にご記入ください」
おじさんの一人が話しかけてきた。
スキンヘッドで、左目に眼帯を付けているいかつい人だ。
元冒険者で、現在は引退して受付と教育係をしているって感じかなぁ。
まだまだ鍛えていそうだから。
用紙に名前、職業、使用できる武器、使える魔法などを書き連ねる。
なんか、魔法の欄が小さくて書ききれない。
はみ出すけどいいかな。
そういえば、特記事項が一応ある。
子連れって書いておこう。
勇人は、歩いて気持ち良かったのかぐっすりお昼寝中だ。
「では、試験場は裏側にありますので」
「はい」
「分かりました」
ついて行けば、体育館のような建物につながっていた。
ここで試験するのかな。
「武器はどうされますか?」
おじさんが聞いた。
試験って誰かと戦うのか。
「私は、長剣を使います」
哲人が言った。
そういえば、宰相さんに長剣貰って、腰に下げてたね。
朝、いくつか持ってきてもらって選んだものだ。
これは、融通の一つらしい。
一応剣道やってたから、刀とは違うけど使えるんじゃないかな。
私は、野営に使える道具セットを用意してもらった。
後々必要になるものね。
鞄もセットになっていたから、今も斜めに下げている。
「貴女は?」
「私は魔導士なので、武器は必要ありません」
「分かりました。お子様はこちらの籠に」
「いえ、このままで大丈夫です」
「は?」
「え?」
ちょっと、なんで哲人まで驚いてるの。
「どこかに行くにしても、結局こうやって一緒にいることになりますので。このまま試験する方が、正しく評価できるはずです」
「なるほど……しかし、これはあくまで試験です。危険があるのが分かっていれば回避していただきたい。どうしてもというなら、同じ重さの重りを持って行ってください」
「……わかりました。試験中は、夫に頼みます」
「そうしてください」
大丈夫だと思うんだけどね。
まあいいか。
まずは、ランク1の試験から。
哲人の次に私、という順番らしい。
雑草のようなものがいくつか並んでいるから、その中から薬草をより分ける。
これ、めんどくさいからやらせているんじゃないでしょうね?
ちなみに、薬草の特徴は最初に説明があった。
「はい、合格です」
でしょうね。
次はランク2の試験。
10キロくらいの石を、室内の端から端まで落とさずに、できるだけ早く運ぶ。
これも楽ちん。
こちとら、8キロ近くの勇人をずーっと抱っこして日常生活送ってるのよ。
走ってやった。
「はい、合格です」
脚力、握力、腕力を魔法で強化したからか、全然疲れなかった。
若干哲人の顔が引き攣っていたのは気のせいだと思う。
ランク3の試験は、捕獲してあったホーンラビットを室内に放し、それを捕まえるというもの。
生死は問わないらしい。
捕獲なら、指定されている檻の中に入れる。
哲人は、ちょっと迷ったようだけど、構わないと言われたので長剣で切って血抜きしやすくしながら捕っている。
おい、今は寝てるけど勇人がいるとこでそんなことするの?
「終わったー……ひぅっ、ごめんなさいごめんなさい」
「ご、合格です。つ、次はヤエさんどうぞ」
哲人だけでなく、試験官のはずのおじさんまで怯えてる。
ごめん殺気漏れてた?
哲人に勇人を渡して、私は室内の中央へ向かう。
放されたホーンラビットは、5匹くらいかな。
捕獲でいいよね。
「<捕獲、ホーンラビット、目に入ったものをこの檻の中へ>」
くるり、と目線を一周してはい終わり。
「……?はっ!合格です」
うんうん、じゃんじゃんいこう。
ランク4はワイルドボアというでっかいイノシシと一騎打ち。
大きさは、自転車くらいかなぁ。
おじさんによると、これは小さい方らしい。
哲人は、長剣で足を切って動けなくしてから魔法で捕獲していた。
よしよし。
私?
さっきと同じで捕獲して終わり。
「……合格、です」
ランク5からは、王都の外へ出なくてはいけない。
冒険者組合は東側の門の近くにあるから、そこから外へ。
街道を逸れて森へ入る。
勇人は組合で起きたので授乳した後、しばらく起きていた。
ご機嫌で周りを珍しそうに見ていたが、森へ歩く途中でやっぱり寝てしまった。
森でも順番に試験を受けることにしたから、その間は籠で寝てもらうつもりだ。
起きたら抱っこか、籠の中で遊んでもらう。
今は抱っこひものままで、空の籠はベルータさんが持ってくれている。
すみませんね。
私は、哲人とスキンヘッドの試験官が話しながら歩く後ろをついて行っている。
一番後ろをベルータさんがついてくる布陣。
守られてるなぁ。
ちなみに、試験官さんはタヌンハさんというらしい。
やっぱり元冒険者で、ランクは7だったが、今は王都の冒険者組合で受付兼試験官兼教育係兼用心棒をやっているそうだ。
「次は野生の魔獣を見つけて捕まえてもらいます」
「どういう魔獣が多いんですか?」
「このあたりだと、ホーンラビット、ワイルドボア、ブラックベア、オレンジファングあたりですね。ゴブリンは、もう少し東に行かないと出てきません」
ブラックベアは黒い熊、オレンジファングはオレンジのオオカミか。
大きさはやっぱり想定外な感じなのかな。
「そうなんですか。では、ランク5はどれかを倒せばいいんですか?」
「ええ。生死を問わず一桁であればランク5、捕獲数が二桁を超えればランク6です。ランク7はゴブリンやオークの巣の殲滅、ランク8はワイバーンの狩猟です。これは、それぞれゴブリンキングやオークキングの牙や武器、ワイバーンの翼などを納品することで試験合格となります」
「それはなんというか……出会えるかどうか分からないのでは?」
「そうですね、ワイバーンに関しては運もあるでしょう。しかし、ゴブリンやオークの巣は、魔物の森へ入れば腐るほどあります」
「なるほど……魔物の森が高ランクの試験会場ですか」
「はい。ランク9は、ほとんど栄誉ランクですね。試験としては、一応魔物の森の奥にいるらしいベヒモスの殲滅となっています。しかし、単独ではほとんど無理ですし、ベヒモスが森の奥から出てくることがほとんどないので形だけのものとなっています」
「ランク10は?」
「ランク10には試験はありません。各地のギルドマスター全員が同意することでランク10となります」
「じゃあ、実際にはランク8までが実用的なランクですか」
「その通りです」
ゴブリンとかオークは、見たことないけど退治するのに躊躇しそうだなぁ。
でも、ということは。
「連続で受けられるっていうのは、10日開ける必要がないという意味なんですね。それだと、今日中にランク7以上にはなれそうにないですね」
私が言うと、哲人が驚いたように言った。
「邪栄ちゃん。そんなランク上げてどうするの?」
「え?」
「え?」
「上げないの?」
「ダンジョンに入れるランクになれば、それ以上は必要ないよね?そもそも身分証明書代わりなんだし」
「あ、そうだっけ」
うっかり忘れてた。
そういえば、ダンジョンにはランク5以上なら即死しない程度らしいって聞いたっけ。
一応、ダンジョンの入口でランクを確認されるらしいから、ランク5以上あったら問題はないんだった。
「ごめんごめん、ランク9はめんどくさそうだなとか考えてたわ」
「ベヒモス倒すつもりだったの?!」
「あははー」
「ヤエさんは、楽しい方ですね」
ベルータさん、黙って肩震わすのやめてくれませんかね。
森の中にある小屋のようなところへ着いた。
聞けば、試験のときに使うほか、低ランクの人たちの休憩所にもなっているらしい。
まずは哲人が、といういうことで私たちは小屋で待つことになった。
「たーた、たっだ!だーだー」
「うんうん、そうだねー」
「だだー」
勇人が起きたので、小屋の前に籠を置いて、そこに座らせてみた。
そうしたら、遊びたそうだったのでそこらへんに落ちている枝を渡してみた。
楽しそうに籠の淵を枝で叩いている。
まだちょっと安定して座っていられないから、背中に手を添えていないと倒れてしまう。
それにしても、哲人はちゃんと帰ってこられるかしら。
「だ!だ!だたーた!」
「うん、ごめんごめん。あれ?それどうしたの?」
「たったった!」
ご機嫌で振り回す枝は、途中で折れている。
籠の向こうに先っぽが転がっているから、どうやら叩いた拍子に折れたらしい。
力強いなぁ。
しばらくしたら、檻を乗せたリヤカーのようなものを引いた哲人が戻ってきた。
檻の中には、ホーンラビットがたくさんと、ワイルドボアが1匹入っている。
見たところ、2匹ほどホーンラビットがお亡くなりになっているが、ほかは生きているらしい。
多分、この数だとランク6じゃないかな。
「お疲れ様です。ホーンラビット2匹狩猟、ホーンラビット12匹捕獲、ワイルドボア1匹捕獲ですね。これなら、文句なしにランク6ですよ、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「哲くん、よかったね」
「うん、ありがとう。次は邪栄ちゃんだね。頑張って」
「はーい」
檻を乗せ変えたリヤカーを受け取り、森に入る。
捕まえた魔獣は、ほかの人の試験に使ったり食用として売ったりするらしい。
売上は、ちょこっとだけこちらにも入るんだとか。
さてと。
「<索敵、ホーンラビット、ワイルドボア、ブラックベア、オレンジファング、半径500メートル以内>」
お、いっぱいいる。
白い小さい点がホーンラビット、茶色い点がワイルドボア、黒い点がブラックベア、オレンジの点がオレンジファングらしい。
白い点は、あんまりいない。
ちっ。
哲人め、この辺にいるホーンラビットあらかた狩ったな?
捕獲の魔法で、ホーンラビット3匹、ワイルドボア5匹、ブラックベア2匹、オレンジファング2匹をそれぞれ捕まえた。
オレンジファングは肉食らしいから、足を縛って檻の上部に吊り下げている。
大きさは大型犬くらいかな。
ブラックベアは、ワイルドボアより一回り大きいが、こう見えて草食らしく、ホーンラビットが怯える様子はない。
それらを全部入れたので、なんというか、ぎゅうぎゅう詰めになってるな。
帰ろうと索敵して小屋を見つけて歩きだしたのだが。
「何かしら?なんか人が多い気が……」
わらわらっと集まる人の点。
そしてぱっと散って、逃げるらしい点がいくつか。
追いかけようとする点が1つ。
動かない点が2つ。
点を数えて、背筋が冷たくなった。