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第二話 親になるとほかの子もなんとなく可愛く見えてくる

お待たせしすぎて申し訳ございません。

南の森を目指し、キャンピングカーを走らせて十数日。

竹峰家的にはそれなりに平和だった。

誰も追いかけてこないし、魔獣も一撃で捕獲アンド転移。

そうそう、魔獣の転移に関しては、宰相さんを通して冒険者組合に聞いてみた。

いちいち捕まえた魔獣をどうしたらいいかと。

正直、なんの意味もなく命を狩る気にはなれない。

力の差があるからか、私たちにとって脅威でないのも、なんとなく弱いものいじめをしている気分になる原因だと思う。

そこで、組合にかけあった。

そっちの、魔獣保管用の檻に直接転移させてもいいかどうか。

答えは、数が多すぎなければOK。

まぁそうだわな。

そんなに毎日魔獣を使った試験があるわけでなし。

あんまり強いのは、転移せず討伐してほしいとも頼まれた。

また、討伐した場合は、近くの街などにある冒険者組合に持ち込んで欲しいと言われた。

正直めんどくさい。

でも、それが地域の活性化とか、冒険者組合の面子を立てることとか、近辺の防犯に繋がるからと頼まれて、哲人てつひとは断れなかった。

私なら、やだめんどくさい直接そっちに転移させる!で済ませるんだけど。

まぁいいわ。

それで勇者様ご一行の株がまた上がるなら、それくらいは手伝いましょう。


一応、ブラックベアレベルより上は、捕獲不可。

捕獲してもその後処理しきれないことがあるし、確実に害を及ぼすものばかりらしいから、どっちにしろ討伐せざるをえない。

だから、ゴブリンとかそういうのには会わないで済むようにしてきた。

南に下って森っぽくなったあたりから、ちょこちょこ見かけたのよ、数匹。

そんで、まぁ見逃してきた。

少数なら、こちらから仕掛けない限り大々的に害になることはないらしいから。


「でもこれはちょっと……」

哲人が困ったように言った。

私が索敵で見つけた……否、見つけてしまったものは。

「かなり大きめの巣かぁ。どうしようか」

「うーん」

「たっちゅ!」

私たちは、いつも通りキャンピングカーで昼食を取りながら相談していた。

ゴブリンの巣は、確実に女性の被害者を出すらしい。

それは、哲人が調べたことだ。

どこかのラノベみたいに酷いことにならないのなら、トップを崩すだけで散り散りになって済むんじゃないかと考えたのだけれど。

結論は、黒。

まじでヤバイらしい。

大人の漫画のような感じではない。

もっとエグい。

ただの物のように、栄養供給元としての苗床にされる。

メスも存在するそうで、ある程度オスメスの数が揃うと、苗床をさらってくる。

そして、メスが卵?を苗床に産み付ける。

とはいえ、犠牲になるのは人だけとは限らない。

それなりの大きさの動物なら、魔獣でも苗床にすることがあるそうだ。

苗床にしたら、子どもが産まれるまでは大切に生かされる。

身体中の皮膚の下に産みつけられた子どもが産まれるときには、体力を使い果たしてひからび、最後は子どもたちに食い尽くされる。

マジでエグい。

色々と酷い。

生還した人はいないから、実際にテヌ・ホキムの国内などで知られている話はもっとざっくりしている。

『女性がさらわれることがあり、生きて帰らない』

確かにそうだけどさ……。


ということで、家族会議となった。

まず、結論としては巣を殲滅するほかなさそうだ。

少し大きめの街が近くにあり、ゴブリンの数を索敵したら、そろそろ苗床をさらうくらい揃っているらしい(哲人調べ)。

問題は、多分私なら問題なく殲滅できるけど

「嫌だ!邪栄やえちゃんに万が一のことがあったらどうするの?!」

哲人が猛反対だということ。

大がかりな魔法を使えるだろうし、大丈夫だと思うけど、そんな風に心配されると強く言えない。

でも、とにかく押しきるだけが方法じゃないことを、大人の私は知っている。

「じゃあ、哲くんが1人で巣を殲滅するの?」

「そう、なるね」

想像したらしく、少し表情を曇らせる哲人。

さて、たたみかけちゃうぞ。

「どうやって?」

「魔法と、剣を使って。俺の魔力の量からして、半分はいけるはずだし」

「それで?」

「残りの半分は剣でなんとか。最近レベル上がったし」

「全部で150くらいはいるのよ?剣って、70頭以上の動物を切れるの?」

「それは無理。ほとんど鈍器扱いじゃないかな」

「できるの?私が側にいたら危険だっていうんだから、私も勇人ゆうとも、呼んでも来ないくらい遠くにいるわね。その体力で、最後に出てくるだろうゴブリンキングとか倒せるの?」

訓練はしたけどね。

やっぱり、元々がデスクワーカーの体力なんてたかが知れてる。

「う、いけ、る……」

「え?」

「い、け……うわぁぁあーん!邪栄ちゃんが虐めるー!!」

「たっちゅたー」

「はいはい、あらやだ、これはオモチャじゃないのよ」

「やぁあー!!」

負けた哲人は部屋の隅でいじけ、勇人は机に乗せられた簡単な地図を取ろうと必死だった。

最近、支えてあげると立つことができるのだ。

床でも膝の上でも関係なく。

立つことが楽しいのか、それを私たちが喜ぶのが嬉しいのか、立たせてくれとせがむ。

可愛い。

そうして、ダイニングの椅子に座った私の膝の上に立つと、机の上に置かれたものを取れることを学習した。

ベビーチェアは、動きを制限するから、さすがに遠くには手が届かない。

それが、届くから余計楽しいらしい。

この子、いたずらっ子になるんじゃないかしら。



結局、哲人が諦めたので3人で向かうことになった。

巣になっている洞窟にいるのは、総数150ほどのゴブリン。

言語もどきもあるらしいから、魔人と魔獣の間くらいなのかな。

私も、さすがに視認せずに魔法を行使するのは不安があるし、もしかしたら既に拐われた人がいるかもしれないから、簡単に巣ごと潰すわけにもいかない。

だから、巣の中の生命体を、まずは強制的に眠らせることにした。

まあ、スリープっていうか、意識を奪うんだけど。

本人にとってはどっちでも同じだと思う。

狙う時間は夜明けすぐ。

ちょうど、夜回りと昼動く組、どちらも巣にいる時間だ。

巣の入り口は、地下洞窟への入り口のように見える。

「くぅ……」

抱っこひもの中では、勇人が寝息をたてている。

あぁ可愛い。

「邪栄ちゃん、気をつけて」

「大丈夫。じゃあ、やるわね」

「うん」

哲人は、私の手を握っている。

「<半径500メートル以内にいるゴブリンは、巣に転移。巣の中の生き物は、すべて例外なく気絶せよ>」

「えげつないなぁ」

漏らさないようにと言葉を考えたのは哲人だ。

自画自賛か?

「じゃ、行きましょうか」

「俺も索敵で見たけど、ホントに大丈夫?」

「大丈夫。死んでない」

「いや、そうじゃなくて」

「もちろん大丈夫よ。ゴブリンキングも気絶してるし、3時間は目覚めないわ」

「……分かった。それじゃあ、手を離したらだめだからね?」

「はいはい」

警護魔法は、基本的に相手の悪意に反応するらしい。

生きるために他者を使わざるを得ないゴブリンの産卵?には、悪意はないため反応しない可能性があるんだとか。

そこで、手を繋いで、万が一の場合にはすぐ転移することになっている。

過保護だなぁ。



中には、灰色とも緑色ともつかない、体長1メートルほどのいわゆる小鬼のようなものたちが倒れていた。

壁には、所々にランプのようなものがある。

なんだっけ、名前を忘れたけど魔法を使えるゴブリンもいる。

かなり大勢の巣だ。


順番に全部屋?洞窟?……部屋でいいか。

その部屋を確認したが、今のところ人間はいない。

あとは、最奥の部屋だけだ。

「開けるよ」

「うん」

哲人がドアの代わりらしいボロ布を取り去った。

広めの部屋で、予想通り体長2メートルほどありそうなゴブリンキングと、リーダーとかそういう大きめのゴブリンたちが気絶していた。


それにしても違和感が酷い。

なんというか、ゴブリンは小さいゆるキャラのような見た目をしているのだ。

きもかわ系の感じ。

あまり忌避感というか、魔獣のような嫌な感じは受けない。

そのゴブリンたちが手に持つものは、木製の鍬っぽいものとか、鎌っぽいもの。

一部、強そうな大きめのゴブリンが金属製の剣らしきものを腰に下げていたが、あれはほぼ鈍器だろう。

そして、ゴブリンキングも武器を持っていない。

そして何より。

「索敵で出る、魔獣とはなんか違う表示なんだけど……」

「うーん、俺には同じに見えるけどなぁ」

索敵の表示が、どうにも違う。

まず、色が違うのだ。

普通は索適したら、地図っぽいものの中に生き物の点が表示される。

そこに情報が載るので、その点にあたるものが何か、どういう状態かを調べられる。

「だって、魔獣とは色が違うし、危険度みたいな表示がないの。しかも、『人物評価』があるし、服従度数とかも見えるわよ。それも押し並べて100%なんだけど。ゴブリンキングは120%だって」

「え?……え??」

「ねぇ、何かしらこれ」

「ちょっっと待って……」

哲人が混乱しだした。

私も訳が分からない。

どうやら、索敵の結果が哲人と私で違うらしい。

どうしようか、困ったな。

「哲くん、ねぇちょっと」

「ごめん、ほんっとに見ても分からない」

「うん、それはいいからさ、そろそろ」

3時間経つから一旦外に。

「ぐぐ、くぉ……」

「!?」

「あ……」

ほら、起きたよ。

でも何て言うか、私に危機感はない。

危険でないと、感じている。

「や、邪栄ちゃ--」

哲人が魔法を使おうとしたけど、止めた。

「ぐ……っ?!?!」

あ、ゴブリンキングが私に気づいた。

ほかの部下たちは、まだ起きていない。

「ぐぉ、ぐぁっ……」

なんだなんだ。

なんかゴブリンキングの目に涙が溢れてる。

哲人も、よく分からずゴブリンキングを見つめている。

握りしめた手が少し震えているけど、大丈夫だから。


「『んま、まぁ、んまおうざまぁぁぁあ!!!!』」

ゴブリンキングは、大声で叫び泣きながら私の目の前にジャンピングスライディング土下座した。

あれは絶対膝から下がずるっといってると思う。

「……えっ」

「んっ、た……んやー」

「あーもう、うるさい!勇人が起きちゃったじゃないの!!」

「『ああぁ、ずいまぜんまおうざまぁ』」

「だからうるさいっての」

「た!てゃっちー」

目が覚めた勇人は、抱っこひもの中からゴブリンキングをながめ、それの方へ手を伸ばした。

すごいな、子どもって恐いもの知らずよね。

哲人なんか、土下座に驚いてるけど、いつでも転移できるようにまだしっかり構えてるのに。

「邪栄ちゃん、こいつと意志疎通できるの?」

哲人がそっと聞いた。

ゴブリンキングは、えぐえぐと泣き声を抑えようと必死だ。

ほかのゴブリンたちも、今の声で目が覚めだしたようだ。

これ、まさか全員ひれ伏したりしない、よね?

「うん、うるさいけど言葉は分かるでしょ?」

「え、分からないよ?さっきもなんか、ぐおおあーって言ってたくらいで……謝ってるみたいに見えたけど」

「あ、それは分かったんだ」

「なんとなく」

「てゃっ!たーちゅたー」

勇人の目線を追うと、出入口からぞくぞくとゴブリンたちが入ってきていた。

そして、順番に詰めてひれ伏していく。

すごい光景なんですが。

この場所はそこそこ広いけど、さすがに全員は入れないわよ?

「ひれ伏すのは構わないんだけど、なんで私が魔王だって分かったの?」

「『まおうざま、それは目覚めたら貴女がおられたからでず』」

ゴブリンキングが、まだ若干泣きながら答えた。

もちろん、ほかのゴブリン同様ひれ伏した土下座のまま。

「私を見たら分かったってこと?」

「『はい、すぐにわがりましだ。言い伝え通り、最近になって思考が澄んできていまじたし、私たちの王であることは魔力からも感じられまず』」

変なところで濁音が入るのは、鼻水が垂れ流しだからだ。

どんだけ泣いてるのよ。

見れば、ほかのゴブリンたちも泣きながら土下座していた。

なんか私が悪代官みたいな気分になってきたわ。

「言い伝えで、魔王が現れたら思考が澄むっていうのがあったのね」

「『はい、ぞれに近い共通のイメージのようなぼのが。言語は半分ありばぜんでしたので』」


長くなるのでまとめると、彼らは私がこの世界に来たことで、ある意味で目覚めたらしい。

そうして、知識もついて、農耕によって食物を確保したり、集団を作って自衛したりと進歩してきたようだ。

鍬とか持ってたのは、そういうことだったのね。

そして、知能の高いゴブリンを中心に住居を作り、人からは遠く離れて生活していた、と。

一番ネックになりそうな生殖活動について聞くと、少なくともこの集団は、哲人が調べた方法は取っていないらしい。

普通の動物と同じく、メスの胎内で育てて産む。

その方が、ゴブリンとしてレベルが高くなると分かったんだとか。

彼らとしては、とにかく私がこの世界に来たことで自分たちが進化した、そのことが重要だそうだ。

多分、ほかの知能のある魔人たちも、同じように目覚めているだろうとゴブリンキングは涙ながらに語った。

マジか。

その度に、さっきみたいな総土下座とか見なきゃいけないのか。

めんどくさいな。

ちなみに、ゴブリンのほかにはオークや吸血鬼、サキュバスなんかの人型系魔人は大体知能があるらしい。

獣っぽい大型のものはほぼ知能はなく、魔人も食われる驚異の存在。

ドラゴンは、いないことはないけど生活圏が物理的に違う(空の上に住んでるらしい)から、よく分からないそうだ。


そうして、会話が途切れたところでゴブリンキングが頭蓋骨で地面を叩き割る勢いでまた土下座した。

「『どうか、どうか私たちも魔王様と一緒に連れて行ってくださいませぇぇぇぇえええ!!』」

「却下」

「たーぅ」

「『そ、そんなぁぁあ!つ、づ、づれでいっでぐだざいまぜぇぇえええ!!!』」

ごっ、ごっ、とゴブリンキングが土下座のまま頭で土を掘っているが、私としては連れていけない。

それより、あんまりやってたら勇人が真似しそうだからやめて欲しい。

今も面白そうにゴブリンたちを見てるんだし。

「やだよ、邪魔になりそうだもの。私たちは、これから南の森に入ってダンジョンに行くんだし。それになにより、私の子は勇者なのよ?それだけでもめんどくさいことになりそうなの。だから、行きたいなら勝手に魔王の島だか国だかに行ってなさい。知能がついた魔人が増えたなら、なんとかなるんじゃないの?」

「『そうもいがないのです、魔王様。我々は、魔人どいうより亜人と呼ばれ、いわば奴隷的な扱いを受けるごどがほとんどでじて……知能があるどはいえ、より高度な知能のある魔人に支配ざれる側なのでず』」

ずびょ、と鼻水をすすりながら土下座のまま上目づかいでこちらを見上げるゴブリンキング。

うん、可愛さはゼロだ。

「ふぅん。それは、私が口添えしても変わらないのかしら?」

「『いえ、まさが!ぞんなごどはありえまぜん!!魔王様は絶対なのでず!!』」

「あ、そう……それなら、安心して魔王の島に行けばいいじゃない。どっか土地なんて余ってるでしょ。私が許す」

「『な、なんと?!』」

ゴブリンキングが驚いて固まった。

一緒に、後ろで土下座してたゴブリンたちも固まってる。

すごい絵面だなぁ。

「邪栄ちゃん?何の話してるの?」

あんまり土下座が酷いのを見て、大きく引きながら哲人が聞いた。

まぁ、私の言葉だけじゃ意味がわからないか。

「ほかの魔人にいじめられるから連れてってって言われたけど、許可出すから勝手に魔王の国?島?に行けって言ってるの」

「ふぅん、魔人の世界にも色々あるんだね。それなら、俺が魔王の国の中でも安全そうな場所を検索して、そこに転移させる?」

「なにそれそんなことできるの?!」

「うん、ちょっとめんどくさいから疲れるのと、検索に使う魔力の消費が激しそうなんだけどいけると思う」

なんというチート機能。

魔力なんか私が分けようじゃないか。

っていうか、その能力使ったら、キャンピングカー要らないんじゃないの?

「条件式みたいなものをくみ上げるのが結構大変なんだよ。それに俺の魔力のキャパシティの問題があって、遠くて知らない土地を検索するのは月に1回できるかどうかってとこなんだよね」

「魔力のキャパシティ?そんなのがあるの?」

「うん、普通はあるね。使える魔力量の上限があるんだよ。見たところ、邪栄ちゃんの上限はほぼ無限と言っていいくらいみたいだけど……」

「そっか、じゃあお願い」

「即決!」

「んまーんま!」



というわけで、ゴブリンたちを魔王の国の中でも特に敵のいない場所に転移させることにした。

私の許可は、魔法で<許可を与える>と付与すればいいそうだ。

「『魔王様の魔力は特別なのです!』」

相変わらず、私の前に来ると土下座するゴブリンキングは、自分のことのように自慢げに言った。

私には、魔力の違いなんてよく分からないのだが。


3日ほどかけて、哲人がどうにか魔法を組み上げていく。

その間に、勇人はゴブリンたちを友達的なものだと認識したらしい。

近寄ってきても泣かないし、その動向をじぃっと見ている。

そういえば、勇人の勇者発言はスルーかと思いきや意外な言葉をもらった。

「『勇者様は、魔王様とついの存在です。我々は、どちらもが一時的にここへ来るだけだということを知っています』」

「え、どこでそんなことを聞いたの?」

「『いえ、聞いたのではなく、魔王様や勇者様はそういう存在なのです』」

ゴブリンキングが、土下座したまま答える。

さすがに、泣きながら話すことは少なくなった。

「うーん……そういう定義になってるってこと?」

「『さようでございます魔王様』」

「本能的な知識ってことか」

「『その通りでございます魔王様』」

イエスマンかよ!

いや少し上で普通に否定してたわ。


そうして、ゴブリンたちを転移する準備が整った。

意外な情報が聞けて、思ったより私たちのためになった。

ゴブリンたちには、私が直接居住を許可したので、多分変な支配は受けないと思う。

転移するついでに、ゴブリンキングに役目を与えた。

「ゴブリン村長ってことで。ほかのゴブリンの集団がきたら、随時集落に取り込んでまとめてちょうだい。あんたには、その権限も魔法で与えておいたから」

「『か、かしこまりましった!!』」

かみつつ、土下座してゴブリンキング改めゴブ村長が答えた。

これで、ゴブリンの巣を見つけたら、気兼ねなく向こうに送れる。

哲人の魔法で検索した位置は、座標で覚えるからいつでも転移させられる。

転移そのものは、私が行うから気にせずできる。

ちなみに、メスゴブリンの妊娠期間が1年あることで、出生率が落ちた。

だから、際限なく増えてどうしよう、ってことにはならなさそう。

魔王国ゴブリン領みたいになって、うまいこと自治やってくれるといいなぁ。

ゴブ村長には、私に連絡が取れる方法として、水鏡の魔法を覚えさせた。

こちらは水晶を使うが、それでもうまく繋がる。

魔法って便利だなぁ。

そして、ゴブリンたちを一か所に集めて転移させた。

「『魔王様、一日も早いご帰還をお祈り申し上げます!』」

ゴブ村長が土下座すると、後ろに控えた100体以上のゴブリンたちも頭を地面に打ち付けた。

どっご!!!ってすごい音がしたよ。

全員頭突き土下座とか、ほんと誰に教わったんだろう。

「じゃあ、向こうでもうまく生活してね。怪我とかないように気を付けて。月に1回は定期的に連絡をちょうだい。困ったときには、いつでも呼んでくれたらいいから」

「『あ、あっ!ありがとうございまずぅぅぅうう!!!』」

感動のあまり泣き出したゴブ村長。

後ろのゴブリンたちも泣き出した。

おかしいな、いじめてるつもりはないんだけど。

「じ、じゃあ、転移させるわね。<この場所へ、ゴブリンたちを転移>」

場所は、地図にマッピングしてある。

転移とマッピングを組み合わせると、すごく便利な魔法になる。

まぁ、地図は哲人がふらふらになりながらしか検索できないから、あんまり実用的ではないけれど。

「『は、はいいぃぃぃ!ありがとうございます!!お先に参りますぅぅぅうう!!』

そうして、賑やかな子分たちは魔王の国へ転移させた。

ふぅ、やっと静かになった。

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