『混血姫』の娘
「こ、ども?」
力なく呟き、私の首を締める力も弱くなる。
「じゃあ、その子供は?」
青年はそうだ、とばかりに言いだした。
「・・・」
「子供がいるんなら、そいつも人間の血が入ってる。混血差別主義の純血共がうじゃうじゃいるここじゃ親の二の舞になる。そいつだけでも助けないと・・・」
私の襟を掴んでいた手を今度は肩に移動させ、強く揺さぶる。
必死に正義を訴える青年の紅の目を真っ直ぐ見つめながら、私は抑え込んだ心からわずかにある感情が漏れ出すのを感じた。
「・・・」
「なぁ、そいつの居場所を教えてくれ!あんたは他の純血共とは違うんだろ?」
「・・・いやです」
私は青年を睨み付け、はっきりそういった。
青年は私が何を言ったのか分からないといった顔で、しばらく固まっていたけど、すぐ私を睨み付ける。
「なぜ!!」
「他人の貴方に人の不幸を決めつける権利があるのですか?」
「なっ!?」
怒りが募るにつれ、頭に血と魔力が集中していく。
私は青年が私の肩をつかむ手を掴み、続ける。
「確かに母は幽閉され、不自由な思いをしていたのでしょう。ですが私は別にこの生活を不自由だとは思いません。毎日決まった時間に起きて働き、きちんと三食の食事を与えられ、睡眠の時間も与えられます。これの何が不自由なのでしょうか。たとえ多少の非道な扱いを受けたとしても、不自由という程ではありません」
そういった時、ちょうど左目に熱が集まりきった。
青年が真っ直ぐに私の目を見、再び目を見開く。
恐らく感情に反応した魔力が左目の色を変えたのだろう。
透き通るような空色から、禍々しい紫に。
「・・・じゃあ、あんたが」
「・・・わかって頂けましたか?まぁ、たとえ不自由があったとしても、私がここを離れることは許されないのですがね」
自嘲気味に少し笑って見せると、青年は不思議そうに黙ってこちらを見ていた。
「よくわかっているじゃないか」
突然、聞き覚えがある声が部屋に響いた。
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