『混血姫』
「あんたが『混血姫』か?」
突然現れて開口一番にそんなことを言う青年は、何度も言うようだがとても美しかった。
白磁の肌に、整った顔立ち。
どうやったらそんな艶やかになるのか、といった黒髪。
そして、めんどくさそうに細められた瞳は血のような深紅だ。
唯一少し残念なのは、彼の服装か。
見るからに薄汚れてボロボロのそれは、この城で過ごす私には馴染みのないものだった。
(きちんとした服さえ着れば、私よりもずっと人形みたいになるわね)
そんなことを長々と考えていると、目の前の青年は不機嫌そうに端正な眉を歪めた。
「おい、なんかリアクションしろよ!無表情でガン見しやがって・・・」
「・・・申し訳ありません」
凝視し過ぎていたらしいので、とりあえず謝っておく。
エンキ相手だったら、こうしておけばまず間違いない。
しかし青年は戸惑ったように目を見開いた。
「いや、別に謝って欲しいんじゃなくて・・・」
「?」
どうやら何か違ったらしい。
「本日こちらには、どういったご用件でお越しになられたのでしょうか?」
「・・・そりゃ俺は『混血姫』を助けに━━」
「? 反乱ではなく、人助けをなさりに来られたのですか?」
「いや、反乱なんだがな?ここに魔族の長が気まぐれで人間との間に作った混血の娘がいて、一族の恥として幽閉されているって噂があってさ。反乱のついでに助けに来たんだ。何処にいる?」
「・・・」
(『混血姫』なんて大袈裟な呼び名で呼んでいるから、誰のことかと思えば・・・)
「残念ながら、その『混血姫』という方は、もう何年も前にお亡くなりになられました」
事実を告げると、青年は目を大きく見開いた。
そして、私の襟を掴んで詰めよって来る。
「なんで!あんたらがその人になんかしたのか?」
「いえ、あの方は子供を出産した時に・・・」
「こ、ども?」
読んでくださり、ありがとうございました<(_ _*)>