襲撃
R-15くらいいってそうです。
ご注意ください。
ドオォォォン
爆発音と共に地面が激しく揺れる。
先ほど注いだばかりの紅茶はカップごとテーブルから落ちて、私のスカートにかかる。少し時間が経っていたので、冷めていて、火傷することはなかった。
「何をしている。早く片付けろ!」
エンキが放心していたのも一瞬で、同じく突然のことに少し驚いていて硬直していた私に怒鳴る。
「申し訳ありません」
急いで台車から布巾を引き抜き、最終的にカップと紅茶が落ちた柔らかい絨毯に押し当てて水滴が染み込まないようにした。
(先ほどのは一体・・・)
絨毯をふきながらも、先ほどの揺れと音の正体について考えた。
もちろんエンキに考え事をしていることが知れないよう無表情を浮かべて。
「ついに来たか・・・」
エンキは何かを知っているらしく、そんなことを呟いている。
「・・・」
「なんだ、お前も気になるのか?」
「・・・!?」
思わず心を読まれたのかと思い、身体が僅かに跳ねた。
そんな私の様子を見て、エンキはクスクスと笑った。
「何、人形が気にすることじゃない。ただ身の程知らずの反乱軍の奴等が乗り込んで来たのさ」
エンキはさらりとそんなことを言った。
危機感を全く感じさせないその態度は、その内容とは大層不釣り合いだった。
それだけ追い返す自信があるのだろう。
反乱軍。
そんなものが存在することは、いくら世間知らずの私でも知っている。
この世界を支配するのは、神族、魔族、人間の3種族。
神族には絶対的な力を持つ唯一無二の存在が王として君臨しているから代替わりはしないらしいが、人間やエンキ達魔族はそうではない。
短命の人間の王は決まった血筋に生まれた者が先代の跡を継いで王になるらしい。
そして最後に魔族。魔族の中でも数多くある種族で、最も強い者達が王になる。
現在の魔族の王はエンキの父だ。
つまりエンキはその跡取りということになる。
そして、反乱軍というのは、大きく分けて2種類に分けられる。
1つ目は、一般の魔族で虎視眈々と魔王の座を狙っている連中のこと。
2つ目は、人間の血が混じった混血の者達だ。
この世界で魔族と神族の混血は、禁忌とされていてまず存在しないことになっている。
その影響か、人間と他2種族の混血もひどい差別を受けている。
彼らは魔王の座のためでなく、この世界の歪んだ決まりを正すために反乱を起こしている、らしい。
(今日の襲撃はどちらなのかしら)
そう思った時だった。
「━━そんなことより、リアス」
「っ・・・」
エンキは突然私の名前を呼んで、布巾を持っていない方の腕を力任せに引っ張った。
予期せぬエンキの行動に私は全く反応出来ず、彼のなすがままになり、気が付いた時には背中をテーブルに押し付けられ、エンキに見下ろされていた。
彼に見下ろされていることで、彼の茶色い長髪が私の頬を撫でた。
何故こんなことになっていたのか分からず、私は無意識に息を詰めて上の方でニンマリと笑う彼を凝視する。
彼はにんまり笑って、私のスカートの濡れた辺りを掴んで言った。
「さっき紅茶こぼしたんだろ。早く着替えないとな、脱がせてやるよ」
ようやくエンキの意図することを知り、全身に悪寒と鳥肌が広がって行くのがわかった。
「エンキ様!!」
私の首筋に顔を寄せてくるエンキを必死に腕で突っぱねる。
しかし、流石次期魔王、しかも男に力で勝てる訳もない。
あっさり腕は外され、頭の上で束ねられた。
抵抗する術を失って、私が絶望したのもつかの間。すぐに慌てたように何者かが部屋に入ってきた。
「エンキ様、大変です!!どうぞお力をお貸しください!!」
焦った様子でそういったのは、衛兵の一人だった。
首筋に痛みを感じた直後、エンキの舌打ちが聞こえた。
「わかった・・・」
エンキは不機嫌そうに私から離れ、私には見向きもせずにそのまま衛兵と一緒に部屋を出て行った。
読んでくださり、ありがとうございました<(_ _*)>