主と人形
それはとある午後のことだった。
私はいつも通りあの方に午後のお茶をお出ししていた。
「どうぞ、エンキ様」
「ふん」
私が給仕をすると彼、エンキは不機嫌そうに鼻を鳴らす。
そして彼はティーカップに口をつけ、いつもと同じ言葉を呟く。
「相変わらずお前の茶は不味いなぁ。いつになったら上手くなるんだ?」
「申し訳ありません」
嘲笑混じりの声に、私はただこの一言を言って頭を下げる。
この方は私に対してよくこんなことを言う。
端から見れば嫌がらせ以外のなにものでもないこれらを、エンキは全てあることを確かめるためだけにやっている。
「まぁ、人形に成長もなにもないか」
エンキはそう言って、愉快そうに笑った。
エンキにとって私は何も感じず考えないただの人形でしかない。いや、そうでなければならない。
そう、8年前のあの日からずっと。
「私はエンキ様の人形でございます」
「ふん、当たり前だ」
私の言葉に満足したのか、エンキは自らが不味いと言った紅茶に再度口を付けた。
その時だった━━
ドオォォォン
城の下の方からひどい揺れと爆発音が響いたのは。
読んでくださり、ありがとうございました<(_ _*)>